お客様に選ばれる店とは?接客と売場で見直したいこと

お客様に選ばれる店は、目当ての商品を見つけやすい売場と、気持ちよく相談や会計ができる接客、そして価格や返品のルールが分かりやすいという信頼が、そろっている店です。どれか一つが目立つことより、お客様が店を知ってから、入り、選び、買い、使い始めるまでの流れの中で、つまずく所が少ないことが大切です。この記事では、選ばれる店の考え方、接客と売場で見るポイント、見直しの手順と比べる表、注意点とよくある失敗、チェックリストをまとめます。

明るく整った雑貨店の店内

「選ばれる店」とは、どんな店ですか?

お客様が店を選ぶ理由は、一つではありません。品ぞろえ、価格、場所や営業時間に加えて、店の人の対応、売場の見やすさ、表示やルールの分かりやすさも、店を選ぶ理由になります。品ぞろえや場所はすぐには変えにくい一方で、接客と売場は、店の工夫で見直しやすい部分です。

お客様の体験を、流れで見る

選ばれる店かどうかは、お客様が店でたどる流れに沿って考えると、見直す所が分かりやすくなります。

  1. 知る:看板、店頭の様子、案内、口コミ
  2. 入る:入口の見通し、明るさ、何の店かの分かりやすさ
  3. 探す:売場の分け方、案内の表示、通路
  4. 選ぶ:比べやすい並べ方、POP、価格の表示
  5. 相談する:声のかけ方、質問への答え
  6. 買う:会計の待ち時間、支払い方法、包装
  7. 買った後:使い方の案内、返品や交換、問い合わせ

どこか一か所でつまずくと、ほかがよくても「また来たい」と思ってもらいにくくなります。一つひとつの場面を、お客様の目で見直すことが出発点です。

接客の5つの基本

中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21は、飲食店の接客について、次の5つを基本のポイントに挙げています。

  • 親切:お客様の側に立って対応する(例:小さな子ども連れのお客様に、子ども用の椅子をすすめる)
  • 正確:ミスでお客様を不快にさせないよう注意する(例:注文を繰り返すときに、お客様の顔を見ながら確かめる)
  • 公平:どのお客様にも同じサービスをする(例:常連のお客様を、あからさまにひいきしない)
  • 迅速:お客様を待たせないよう注意する(例:何かしてほしそうな様子が見えたら、すぐに近寄る)
  • 清潔:お客様の口に入る物を扱っていると自覚する(例:制服をこまめにクリーニングする)

同じ記事では、料理がおいしくても、店の人のささいな言動で、お客様の満足や店への評価が左右されると説明しています。清潔は飲食店ならではの項目ですが、物を売る店でも身だしなみや売場の清潔さに置き換えると、5つとも接客を考える土台になります。

店員と話す二人の客

選ばれる店の接客は、何が違いますか?

声をかける間合いを決めている

入ってすぐに話しかけられると、ゆっくり見たいお客様は落ち着きません。逆に、探している様子があるのに誰も気づかないと、不便に感じます。あいさつをしたうえで、商品を手に取ったとき、何かを探しているときなど、声をかける合図を店で決めておくと、人によって対応がばらつきにくくなります。声かけの基本は、店頭販売の声かけと接客の基本で説明しています。

質問に、誰でも同じように答えられる

「この商品とあの商品は何が違うのか」「どう使うのか」「在庫はあるか」といった質問に、担当する人によって答えが変わると、お客様は不安になります。よく聞かれる質問と答えを書き出し、店の人で共有しておきましょう。作り方はよくある質問への答え方とFAQの作り方、新しい商品の覚え方は商品知識の覚え方にまとめています。

押しつけず、お客様の目的から提案する

選ばれる店の提案は、売りたい物ではなく、お客様の困りごとを起点にします。使う場面や予算を聞いてから、合う物を一緒に考えます。ほかの商品をすすめるときも、断りやすい言い方を心がけます。進め方はクロスセルとアップセルの進め方をご覧ください。

一人ひとりに合わせた配慮をしている

文字が見えにくい、聞き取りにくい、日本語に慣れていないなど、お客様によって困りごとは違います。ゆっくり話す、書いて見せる、実物を指さして確かめるといった工夫で、伝わりやすくなります。詳しくは高齢のお客様への接客で気をつけることと外国人のお客様への接客の基本で説明しています。

障害のある方への対応では、障害者差別解消法の改正により、2024年4月1日から、事業者にも「合理的配慮の提供」が義務になりました。内閣府は、障害のある人から、社会の中のバリアを取り除いてほしいという申し出があったとき、負担が重すぎない範囲で、必要で合理的な配慮をすることだと説明しています。内閣府の資料には、目が見えないため売場が分からないお客様を、ほしい商品の売場まで案内する、太いペンで大きな文字を書いて筆談をする、といった例が載っています。どう対応するかは、お客様と話し合いながら一緒に考えることが大切だとされています。

申し出のとおりにできない場合も、ほかの方法を一緒に探すことが大切だとされています。内閣府の資料では、混んでいる時間に、視覚に障害のあるお客様から店内での付き添いを頼まれた小売店が、付き添いの代わりに買い物の一覧を書き留めて商品を用意することを提案する例が、考え方の一つとして紹介されています。詳しくは内閣府の案内や、地域の相談窓口にご確認ください。

棚に瓶を並べた店内

選ばれる店の売場は、何が違いますか?

売場は、言葉を交わさなくても、お客様に情報を伝える場所です。次の点が整っていると、お客様は自分のペースで選べます。

入りやすい

店の外から中の様子が見え、何の店かが分かると、初めてのお客様も入りやすくなります。J-Net21は、目玉の商品や手ごろな価格の商品を店頭に置くと、お客様が入るきっかけになると説明しています。

見つけやすく、選びやすい

商品を用途や種類で分け、案内の表示をつけると、探す時間が短くなります。似た商品を並べて置き、違いをPOPで示すと、比べやすくなります。並べ方の具体的な方法は、小さな店の売場づくりの基本で説明しています。

価格が分かりやすい

消費者に向けて、あらかじめ価格を表示する場合は、消費税を含めた総額を表示する「総額表示」が義務付けられています(消費税法第63条)。国税庁によると、店頭の表示やチラシなど、表示の方法を問わず対象になります。表示の注意点は催事の価格表示で気をつけることにまとめています。

支払い方法が、先に分かる

使える支払い方法が、入口やレジの近くに表示されていると、お客様は会計の前に準備ができます。使えると思っていた支払い方法が使えないと、買うのをやめてしまうこともあります。支払い方法の種類と違いは、キャッシュレス決済の種類と使い分けで説明しています。

清潔で、安全

床の汚れやほこり、切れたままの照明は、お客様の目にとまります。通路や非常口の前に段ボールや商品を置くと、見た目が悪くなるだけでなく、火災のときに避難の妨げになります。総務省消防庁は、ふだんから避難通路や避難階段、非常口の前に物を置かないよう呼びかけ、置くと消防法違反になると説明しています。

品切れが少ない

目当ての商品がない状態が続くと、お客様がほかの店を選ぶきっかけになります。売れ筋の商品を切らさない仕組みは、店舗の在庫管理の基本で説明しています。品切れのときは、入荷の予定や、取り置きや取り寄せができるかを伝えられるようにしておくと、お客様の手間が減ります。

買った後も、相談しやすい

選ばれる店は、売ったところで終わりにしません。使い方の案内、故障や不具合のときの問い合わせ先、修理の受け付け方などを、会計のときに伝えておくと、お客様は安心して買えます。買った後の相談に気持ちよく応じることが、次の来店につながります。

商品を並べ直す店員

接客と売場は、どんな手順で見直しますか?

思いついた所から直すより、次の順で進めると、効果を確かめながら続けやすくなります。

1. 今の店を、お客様の目で見る

店の外から入口へ向かい、売場を歩き、会計まで、お客様と同じ流れで店を見ます。J-Net21は、自分で客観的に見るほか、お客様へのアンケートや、家族や知人に客として来てもらう方法を挙げています。

2. お客様の声を集める

会計のときの一言、アンケート、問い合わせ、口コミなどから、よく出る声を拾います。よかった点と困った点の両方を集めます。アンケートで名前や連絡先を集める場合は、何に使うかを伝えます。進め方はアンケートの取り方と個人情報の扱いで説明しています。

3. 見直す所に順番をつける

すべてを一度に変えることはできません。困った声が多い所と、すぐに直せる所から手をつけます。

4. 店のルールとして書き出す

決めたことは、接客の手順や売場の決まりとして書き出します。J-Net21は、接客のマニュアルの内容の例として、接客の心構え、身だしなみ、言葉づかいと敬語、態度や話し方、商品知識、お客様が来てから帰るまでの流れ、苦情への対応を挙げ、店として特に強めたいことを盛り込んでもよいと説明しています。

5. みんなで練習し、共有する

書いただけでは身につきません。朝礼や空いた時間に、声かけや説明を練習します。進め方は接客ロールプレイングのやり方で紹介しています。

6. 数字と声で振り返る

来店した人の数、買った人の割合、一人あたりの買い物の金額などの数字と、お客様の声の両方で、変えた結果を確かめます。目標の決め方は店頭販売の目標とKPIの決め方をご覧ください。

見直しの目安:選ばれる店と、選ばれにくい店の違い

場面ごとに、見直すときの目安を表にまとめました。

場面 選ばれる店 選ばれにくい店
入口 中の様子が見え、何の店か分かる 物で入口がふさがり、中が見えない
売場 用途ごとに分かれ、案内の表示がある 商品が詰め込まれ、どこに何があるか分からない
価格 税込みの総額が見やすい 値札がない、古い値札が残っている
声かけ あいさつをして、合図を見て声をかける すぐに付きまとう、または誰も気づかない
質問 誰が答えても、同じ内容になる 人によって答えが違う
会計 混む時間に人を増やし、支払い方法を案内する 混んでいても一人で対応し、待たせる
買った後 返品や交換のルールを、先に伝えている 後になってルールを知らされる
商品がぎっしり並ぶ小さな店

気をつけたいことと、よくある失敗は?

返品と交換のルールは、先に決めて伝える

自分から店に出向いて買った商品は、原則としてクーリング・オフの対象になりません。岡山県の消費生活の案内は、店での買い物は、お客様が自分の意思で店に出向き、商品を確かめて選ぶもので、不意打ちの要素がなく考える時間もあるため、クーリング・オフの制度は適用されないと説明しています。デザインや色が気に入らないといった理由での返品は、店が承諾した場合に限られます。

ただし、路上などで呼び止められて店に連れて行かれ、契約した場合(キャッチセールス)や、エステや語学教室などの続けて受けるサービスの契約のように、取引の種類によってはクーリング・オフができる場合があります。また、商品に傷や不具合があった場合は、気に入らないという理由での返品とは別の扱いになります。

そのため、返品や交換を受けるかどうか、受ける場合の期間や条件を店で決め、レジの近くやレシートなどで分かるようにしておくと、行き違いを防げます。

説明は、事実のとおりに

同じ案内では、商品の品質や用途などについて事実と違う説明を受け、誤解して買った場合などには、契約を取り消せると説明しています。売りたい気持ちから効果や性能を大きく言うことは避け、分からないことは確かめてから答えましょう。

口コミをお願いするときは、広告の扱いに注意する

2023年10月1日から、広告であることを隠した宣伝、いわゆるステルスマーケティングは、景品表示法の違反になりました。消費者庁は、事業者が第三者に依頼や指示をして書いてもらう投稿も、事業者の広告にあたる場合があるとしています。広告にあたるのに、そのことが分からない形で出すと違反になります。お客様に口コミをお願いするときは、消費者庁の案内を確かめてから進めましょう。

よくある失敗

  • 声をかけすぎて、ゆっくり見たいお客様が帰ってしまう
  • 担当する人によって、説明やルールの答えが違う
  • 商品を詰め込みすぎて、選びにくい
  • POPや値札が、古いまま残っている
  • 混む時間に会計の人が足りず、お客様を待たせる
  • お客様の声を集めたまま、何も変えていない
  • ほかの店のやり方をそのまままねて、自分の店のお客様に合わない
  • 苦情を受けたときの対応が決まっておらず、その場で迷う

J-Net21は、陳列について、ほかの店のやり方をまねても成功するとは限らず、自分の店のお客様や状況に合わせて考えることが大事だと説明しています。接客も同じです。苦情を受けたときの最初の対応は、催事での苦情の初期対応で説明しています。

菓子を並べるカフェの店員

選ばれる店づくりのチェックリスト

店を見直すときに、次の点を確かめましょう。

  • 店の外から中の様子が見え、何の店かが分かる
  • 入口や通路、非常口の前に物を置いていない
  • 商品が用途や種類で分かれ、案内の表示がある
  • 価格は税込みの総額で、見やすく表示している
  • あいさつをして、声をかける合図を店で決めている
  • よく聞かれる質問と答えを、店の人で共有している
  • お客様の目的を聞いてから提案している
  • 困りごとのあるお客様への配慮を、話し合って決めている
  • 混む時間に、会計の人を増やせる
  • 返品や交換のルールを決めて、お客様に伝えている
  • 口コミをお願いするときの注意を確かめている
  • お客様の声を集め、見直す所に順番をつけている
  • 見直した結果を、数字と声で振り返っている

よくある質問

小さな店でも、選ばれる店を目指せますか?

目指せます。小さな店は、売場の全体を見渡しやすく、店の人とお客様の距離も近いので、一人ひとりに合わせた対応をしやすい面があります。品ぞろえの数で大きな店と比べるより、選びやすさと相談のしやすさを高める方が、取り組みやすくなります。

接客と売場は、どちらから見直せばよいですか?

お客様の声や、店を歩いて気づいた困りごとが多い方から始めます。売場は直した状態を保ちやすく、接客は練習を重ねて身につくものです。両方を少しずつ進めるのが、続けやすい方法です。

お客様に口コミをお願いしてもよいですか?

店が頼んで書いてもらう投稿は、内容への関わり方によって、店の広告として扱われる場合があります。広告にあたるのに広告と分からない形で出すと、景品表示法の違反になります。お願いする前に、消費者庁の案内をご確認ください。

返品は、受けなければいけませんか?

自分から店に出向いて買った商品は、原則としてクーリング・オフの対象ではなく、気に入らないといった理由での返品を受けるかどうかは、店の判断によります。ただし、事実と違う説明をして買ってもらった場合などは、契約を取り消されることがあります。商品に不具合があった場合や、キャッチセールスなどの取引では扱いが変わるので、判断に迷うときは、消費生活センターや専門家にご相談ください。

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