接客でよくある質問の答え方とFAQの作り方

接客でよくある質問には、「結論」「理由」「条件や例外」「確認」の順に、短く正確に答えるのが基本です。分からないことは推測で答えず、確かめてから答えます。そして、聞かれた質問を記録して答えをそろえた一覧(FAQ)を作ると、誰が答えても同じ内容を伝えられます。この記事では、販売の仕事をする方と販促担当の方に向けて、答え方の型、FAQの作り方、質問の種類ごとの答え方、答えるときに気をつけたい法令、よくある失敗とチェックリストを順にまとめます。

接客の「よくある質問」とFAQとは?

FAQは、英語の Frequently Asked Questions の頭文字で、「よく聞かれる質問と、その答え」をまとめたものです。店頭や催事の会場では、同じ質問が何度も寄せられます。答えを前もって決めておけば、慌てずに答えられ、店員ごとに説明が違うこともなくなります。

接客で使うFAQには、大きく分けて2つの種類があります。

  • 店員が使う内部用のFAQ:質問への答え方、確かめる先、言ってはいけないことをまとめた手引きです。新しく入った人が、すぐに同じ答えを返せるようにします
  • お客様が読む公開用のFAQ:店頭のPOP、チラシ、レジ横の案内、Webページなどに載せる一覧です。お客様が自分で答えを見つけられるので、待ち時間が減ります

店頭でよく聞かれる質問は、おおむね次のように分けられます。

  • 価格と支払い(いくらか、どの支払い方法が使えるか、割引はあるか)
  • 商品の違い(AとBは何が違うか、どちらが合うか)
  • 使い方と手入れ(どう使うか、どう保管するか)
  • 在庫と取り寄せ(ほかの色や大きさはあるか、いつ入るか)
  • 返品と交換(あとで替えられるか、何が必要か)
  • 手続き(どのくらい時間がかかるか、何を持ってくればよいか)
  • 店や施設の案内(トイレ、駐車場、営業時間、ほかの売場)

FAQを作る目的は、質問を減らすことだけではありません。答えがそろうと、誤った説明を防げます。また、どんな質問が多いかを見ると、お客様が迷っている所や、店の案内の足りない所が分かります。

よくある質問には、どう答えればよいですか?

答えの基本の型

答えは、次の4つの順で組み立てます。

  1. 結論:まず「はい」「いいえ」「〇〇です」と答える
  2. 理由:なぜそう言えるのかを、ひと言で添える
  3. 条件や例外:当てはまらない場合や、気をつける点を伝える
  4. 確認:「ほかに気になる点はありますか」と、分かったかどうかを確かめる

たとえば「これは洗濯機で洗えますか」と聞かれたら、「はい、洗えます。表示に洗濯機の記号があるためです。ただ、洗濯ネットに入れて、弱い水流で洗うよう書かれています。ほかに気になる点はありますか」と答えます。結論を先に言うと、お客様は話の行き先が分かり、続きを落ち着いて聞けます。

静岡県が窓口の職員向けにまとめた接遇の資料(認知機能の低下が見られる方への対応)でも、伝わりやすくする工夫として「一番大事なことは最初に」「1文を短く」「簡単な語彙を使う」ことが挙げられています。どのお客様への答え方にも使える考え方です。

質問の意図を確かめる

質問の言葉だけで答えると、ずれることがあります。「これ、使えますか」という質問は、「自分の持っている機器で使えるか」「旅行先で使えるか」「子どもでも使えるか」など、いくつもの意味に取れます。迷ったら「何にお使いになる予定ですか」と聞き返してから答えます。聞き返すのは失礼ではありません。合わない答えをするより、お客様の手間が減ります。

分からないときの答え方

分からない質問には、推測で答えないことが大切です。次の順で対応します。

  1. 「確認してまいります」と伝え、どのくらい待つかの目安を言う
  2. 責任者、メーカーの資料、店の決まりで確かめる
  3. その場で分からないときは、いつまでに、どの方法で答えるかを決めて伝える
  4. 答えたあと、その質問と答えを記録して、FAQに足す

「たぶん大丈夫です」「できると思います」といった答えは、あとで違っていたときに、お客様の不満につながります。

言葉づかいの工夫

  • 専門用語や略語は、ふだんの言葉に言い換える
  • 数字は、単位まではっきり言う。金額は税込みか税抜きかも添える
  • 一度に伝えるのは1つか2つまでにする。多いときは紙に書いて渡す
  • 否定の質問(「〇〇はできないんですよね」)には、「はい」「いいえ」が逆に伝わらないよう、「〇〇はできません」と文で答える
ノートパソコンの横でノートにメモを書く手元

FAQは、どうやって作りますか?

FAQは、思いつきで書くより、実際に聞かれた質問から作るほうが役に立ちます。次の手順で進めます。

  1. 質問を集める:一定の期間、聞かれた質問を記録します。記録する項目は、日付、質問の内容、答えた内容、答えに困った点の4つほどで十分です。お客様の名前や連絡先は書きません
  2. 似た質問をまとめる:言い方が違っても、同じことを聞いている質問は1つにまとめます。多い順に並べると、先に作る質問が分かります
  3. 答えを書く:前の節の型(結論、理由、条件や例外)で書きます。1つの質問に1つの答えを書き、答えの中に別の話を混ぜません
  4. 根拠を確かめる:商品の仕様はメーカーの資料、価格や返品の条件は店の決まり、契約の条件は契約書や約款で確かめます。根拠になった資料の名前も、内部用のFAQに書いておきます
  5. 責任者が確認する:書いた人とは別の人が読み、事実と違う所や、言い過ぎている所がないかを見ます
  6. 置き場所を決めて配る:内部用はレジ横やスタッフの共有場所に、公開用はお客様の目に入る場所やWebページに置きます
  7. 見直す日を決める:価格や商品が変わったら、すぐに直します。定期的に見直す日も決め、最後に直した日を書いておきます

Webページに載せるときは、質問を見出しにして、1問ずつ答えを書くと読みやすくなります。なお、検索サービスの Google は、2023年8月に、FAQの構造化データによる検索結果での表示を、よく知られた権威のある政府や健康に関するサイトに限ると発表しています。検索結果での見え方より、ページを読む人に分かりやすいかどうかを優先しましょう。

商品の説明を覚える手順は、コラム「新しい商品を売る前の商品知識の覚え方」で、答え方を練習する方法は「接客ロールプレイングのやり方」で紹介しています。

ヘッドセットで話す2人の窓口担当

質問の種類と、FAQの種類で答え方はどう違いますか?

質問の種類によって、答えるときに押さえる点が変わります。

質問の種類 質問の例 答え方のポイント 気をつけたいこと
価格と支払い 「全部でいくらですか」「カードは使えますか」 合計の金額を先に言う。使える支払い方法を具体的に挙げる 税込みかどうか、毎月かかる費用、割引の条件を落とさない
商品の違い 「AとBは何が違いますか」 違いを1〜2点に絞り、使い方に合うほうを伝える 他社の商品を悪く言わない。根拠のない比較をしない
使い方と手入れ 「どうやって使いますか」 実物を見せながら、順番に説明する 説明書と違うことを言わない。安全に関わる注意は省かない
在庫と取り寄せ 「ほかの色はありますか」 ある・ないを先に言い、ない場合の方法を伝える 入荷の日が決まっていないのに、日にちを約束しない
返品と交換 「あとで交換できますか」 できる・できないを先に言い、期限と必要な物を伝える 店の決まりと違う約束をしない
効果や性能 「本当に効きますか」「長持ちしますか」 メーカーが示している内容を、示している範囲で伝える 効果を言い切らない。個人の感想を事実のように言わない
専門的な相談 「病気でも使えますか」「税金はどうなりますか」 店頭で判断せず、医師や専門の窓口に確かめるよう伝える 分からないことを分かるように答えない

内部用と公開用のFAQは、読む人が違うため、書き方も変わります。

比べる点 内部用のFAQ 公開用のFAQ
読む人 店員、催事のスタッフ お客様
書く内容 答え、根拠の資料、確かめる先、言ってはいけないこと 答えと、問い合わせ先
書き方 口に出して言える文にする。答えの例をそのまま書く 短い文で、専門用語を使わない
置き場所 レジ横、スタッフの共有場所、共有のファイル POP、チラシ、レジ横の案内、Webページ
直すとき 新しい質問が出たら、その日のうちに足す 内部用と食い違わないよう、同時に直す
受付で客の質問に答える係の人

答えるときとFAQを書くときに、気をつけることは?

事実と違うことを言わない

消費者契約法では、事業者が契約の勧誘をするときに、大切な事項について事実と違うことを告げ、お客様がそれを信じて契約した場合、お客様はその契約を取り消せるとしています(第4条第1項第1号)。将来の値段のように確かでないことを、確かなように言い切った場合も同じです(同項第2号)。また、お客様に良い点だけを伝え、不利になる事実をわざと、または大きな不注意で伝えなかった場合も、取り消しの対象になることがあります(同条第2項)。質問に答えるときは、良い点と一緒に、条件や合わない点も伝えましょう。

書いた答えも「表示」になる

景品表示法は、商品の内容を実際より良く見せる表示や、取引の条件を実際より有利に見せる表示を禁じています(第5条)。消費者庁の資料では、ここでいう表示の例として、チラシやポスター、陳列のほか、セールストークやインターネット上の広告も挙げられています。店頭で話す答えも、POPやWebページに書くFAQも、この決まりの対象になりえます。

効果や性能をうたう答えには、裏付けが要ります。消費者庁は、表示が実際より著しく良いと示していないかを判断するため、裏付けとなる合理的な根拠の資料を出すよう求めることができます。資料を出さない場合や、出した資料が根拠と認められない場合は、措置命令の上では不当な表示とみなされます(第7条第2項)。メーカーが示している内容を超えて「よく効く」「誰でも使える」と書かないようにします。

そのほかの注意

  • 質問を記録するときは、お客様の名前や連絡先、見た目の特徴などを書かない
  • 健康、法律、税金などの専門的な判断は、店頭でしない。専門の窓口や専門家に確かめるよう伝える
  • 他社の商品やお店を悪く言う答えを書かない
  • 苦情につながりそうな質問は、責任者に引き継ぐ流れを決めておく。初めの受け答えは、コラム「催事での苦情の初期対応」で紹介しています

法令の内容は一般的な説明です。扱う商品や契約に当てはまるかどうかは、詳しくは所管の窓口や専門家にご確認ください。

ノートパソコンに貼った付箋にメモを書く手元

よくある失敗と、見直しのチェックリスト

よくある失敗

  • 前置きが長い:事情の説明から入り、結論がなかなか出てこない。お客様が途中で聞くのをやめてしまう
  • 店員ごとに答えが違う:内部用のFAQがないか、古いまま使われている
  • その場しのぎで答える:分からないのに「大丈夫です」と答え、あとで違っていた
  • FAQを作って終わる:価格や商品が変わっても直さず、古い答えが残る
  • 店の言葉で書く:社内の略語や商品の型番だけで書き、お客様に伝わらない
  • 公開用のFAQが多すぎる:質問を並べすぎて、探したい答えが見つからない。多い質問から順に載せ、まれな質問は店員が答える

見直しのチェックリスト

  • 答えの最初の一文で、結論を言っている
  • 理由と、条件や例外が書かれている
  • 金額は税込みかどうか、毎月の費用があるかが分かる
  • 根拠の資料(仕様書、店の決まり、契約の条件)を確かめた
  • 書いた人とは別の人が、内容を確認した
  • 効果を言い切る表現や、他社を悪く言う表現がない
  • 専門用語や略語を、ふだんの言葉に直した
  • 内部用と公開用の答えが食い違っていない
  • 最後に直した日と、次に見直す日が書いてある
  • 答えに困った質問を記録する場所がある

よくある質問

同じ質問を何度もされて、接客が止まってしまいます。どうすればよいですか?

記録で多かった質問から順に、答えをPOPや案内の紙にして、お客様の目に入る場所に置きます。たとえば支払い方法や、手続きにかかる時間などは、掲示で伝えやすい質問です。掲示を見ても分からないお客様には、店員がその掲示を指して説明すると、短い時間で済みます。

「さっきの人と言っていることが違う」と言われたら、どうしますか?

まず、分かりにくい思いをさせたことをおわびします。そのうえで、責任者や資料で正しい答えを確かめてから、あらためて伝えます。どちらが正しいかをその場で言い合わないことが大切です。あとで、なぜ答えが分かれたのかを確かめ、内部用のFAQを直して、ほかの店員にも知らせます。

FAQは、何問くらい用意すればよいですか?

決まった数はありません。数をそろえるより、実際によく聞かれる質問から作るほうが役に立ちます。内部用は、答えに困った質問を足していくと、自然に増えていきます。公開用は、探しやすさを考えて、多い質問に絞って載せます。

答えにくい質問や、答えてはいけない質問はありますか?

ほかのお客様の情報、まだ公表されていない商品や値下げの予定、店の内部の事情などは、答えません。「申し訳ありませんが、お答えできません」と、短く丁寧に伝えます。病気や法律に関わる相談のように、店員が判断できない内容は、専門の窓口や専門家に確かめるよう案内します。

店頭での接客や販売の進め方を外部に相談したいときは、営業代行のページで当社の取り組みを紹介しており、ご相談はお問い合わせフォームから受け付けています。

同じカテゴリの他の記事

催事・イベントの企画・運営、営業代行、店舗運営についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ