外国人のお客様への接客の基本|やさしい日本語と指さし

外国人のお客様への接客は、英語で話そうとするより、「やさしい日本語」で短くはっきり話し、商品や数字を指さして見せるほうが、伝わりやすいことがあります。それでも通じないときは、翻訳アプリや多言語の案内に切り替えます。日本に住んでいる方か、旅行中の方かで必要な案内も変わり、2026年11月1日の購入分からは、旅行者向けの消費税の免税の仕組みも変わりました。この記事では、販売の仕事をする方と販促担当の方に向けて、やさしい日本語の話し方、指さしなど言葉以外の伝え方、伝え方の手段の比べ方、支払いや免税の注意点、よくある失敗とチェックリストを順にまとめます。

土産物の店で品物を見る旅行者

外国人のお客様の接客で、最初に知っておきたいことは?

出入国在留管理庁と文化庁の「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」では、やさしい日本語を「難しい言葉を言い換えるなど、相手に配慮したわかりやすい日本語」と説明しています。外国人だけでなく、高齢の方や障害のある方など、多くの人に分かりやすく伝えるための日本語です。

やさしい日本語が接客で役に立つ理由は、主に次の3つです。

  • 英語が通じるとは限らない:ガイドラインでは、日本に住む外国人の国籍が多様になっていることや、日常生活に困らない言語として「英語」より「日本語」を挙げた人が多いという調査が紹介されています
  • 日本語で会話できる人が多い:ガイドライン(話し言葉のポイント、2022年10月)で紹介されている「在留外国人に対する基礎調査」(令和3年度)では、8割強の在留外国人が、自分の日本語の力を「日常生活に困らない程度に会話できる」以上と答えています
  • 翻訳アプリの助けにもなる:伝えたいことを整理した日本語で話しかけるほうが、翻訳機器の翻訳の精度が上がるとされています

一方で、日本語をほとんど話さない方には、やさしい日本語も通じません。その場合は、翻訳アプリや多言語の案内、指さしで伝えます。反対に、日本語を上手に話す方には、やさしい日本語をやめて、ふだんどおりに話します。ガイドラインでも、見た目で判断しないよう注意しています。

また、同じ外国人のお客様でも、日本に住んでいる方と、旅行で来ている方とでは、知りたいことが違います。住んでいる方は、使い方や手入れ、あとでの問い合わせ先を、旅行中の方は、持ち帰り方や免税、母国で使えるかどうかを気にすることがあります。

スマートフォンを見ながら話す2人

やさしい日本語は、どう話せばよいですか?

最初のひと言

声をかけるときは、まず日本語で、ふだんより少しゆっくり話しかけます。「こんにちは。日本語で大丈夫ですか」と聞くと、お客様が日本語で話すか、ほかの方法がよいかを選びやすくなります。返事の様子を見て、次のように進め方を決めます。

  • 日本語でふつうに返事があれば、やさしい日本語で、または、ふだんどおりに話す
  • 「少し」などの返事なら、やさしい日本語に、指さしや実物を組み合わせる
  • 日本語での返事が難しそうなら、翻訳アプリや指さしの表に切り替える

話し方の基本

ガイドラインでは、翻訳機器を使うときにも役立つ基本として、「はっきり言う」「最後まで言う」「短く言う」の3つを挙げ、「ハサミの法則」としてまとめています。店頭では、次のように話します。

  • 短く切って話す。一つの文で伝えることは1つにする
  • 文の最後まで言い切る。「こちらはちょっと…」のように途中で止めない
  • ゆっくりしたペースで話す
  • あいまいな言い方をしない。「結構です」は「いりません」か「大丈夫です」か分かりにくいので使わない
  • お願いは、疑問の形にしない。「書いていただけますか」ではなく「ここに名前を書いてください」と言う

言葉の選び方

ガイドラインでは、次のような言い換えが勧められています。

  • 難しい言葉や言い回しを使わない
  • カタカナの外来語、とくに和製英語を使わない
  • 「ずきずき」「さらさら」のような擬音語・擬態語(オノマトペ)を使わない
  • 「できなくはない」のような二重の否定を使わない
  • 尊敬語や謙譲語を使わず、「です」「ます」の丁寧な言い方にする
  • 「いつ」「どれ」と聞くより、「はい」「いいえ」で答えられる質問にする

聞き方と進め方

  • 笑顔で、相づちを打ちながら聞き、聞いていることを示す
  • お客様の言ったことを繰り返して、分かったことを示す
  • 分からないときは、繰り返して意図を確かめる
  • 「私の話す速さは大丈夫ですか」と聞き、反応を見ながら話し方を変える
  • うまく通じなくても黙らずに、言い方を変えたり、ほかの手段に切り替えたりして話を続ける

ガイドラインには、大人の相手を子ども扱いしないこと、不自然に英語を混ぜた日本語にしないことも書かれています。丁寧さは、言葉の難しさではなく、態度で伝えます。

布や土産物が並ぶ市場の店先

店頭の言い方を、やさしい日本語に言い換えると?

店頭でよく使う言い方を、やさしい日本語に言い換えた例です。言い換えのあとは、身ぶりや実物と組み合わせて伝えます。

ふだんの言い方 やさしい日本語の例 言い換えのポイント
少々お待ちくださいませ ちょっと待ってください。2分です 敬語を丁寧語にする。待つ時間を数字で言う
ご試着なさいますか 着てみますか。着る部屋は、あそこです 尊敬語をやめる。場所を指さす
在庫を確認してまいります ほかにあるか、見てきます。ここで待ってください 「在庫」「確認」を、ふだんの言葉にする
袋はご入用ですか 袋はいりますか 「はい」「いいえ」で答えられる形にする
お会計はあちらのレジになります お金は、あそこで払います 「会計」「レジ」を言い換え、場所を指さす
こちらは返品をお受けできかねます これは、買ったあと、返すことができません 遠回しな言い方をやめ、最後まで言い切る
ポイントカードはお持ちですか この店のカードはありますか 実物のカードを見せながら聞く

紙に書いて伝えるときも、考え方は同じです。書き言葉のガイドラインでは、一文を短くする、3つ以上のことは箇条書きにする、漢字の量に気をつけてふりがなを付ける、元号ではなく西暦を使う、時間は午前・午後を書き、「〜」ではなく「から」「まで」を使う、といった工夫が紹介されています。店頭のPOPを作るときの考え方は、コラム「のぼり旗・POP・ノベルティの選び方と置き方」でも紹介しています。

スマートフォンの画面を指さす手元

指さしや翻訳アプリなど、伝え方の手段を比べると?

ガイドラインでは、言葉以外の工夫として、身ぶり手ぶり、資料や写真、図や実物を使うこと、その場所で必要な物の一覧を1枚にまとめた「コミュニケーションボード」を用意することが挙げられています。ただし、身ぶりの意味は世界共通ではないため、注意が要ります。

手段 向く場面 良い点 気をつけること
やさしい日本語 日本語が少し分かる方との会話 準備が要らない。どの店員でもすぐ使える 日本語をほとんど話さない方には通じない
英語 英語を話す方との会話 話せる人が多い言語の一つ 英語を話さない方もいる。店員の英語力で差が出る
翻訳アプリ・翻訳機 込み入った説明、日本語が通じないとき 多くの言語に対応できる 長い文や、途中で止まる文は、うまく訳されないことがある。短く区切って話す
指さしの表・コミュニケーションボード サイズ、色、支払い方法など、決まった質問 声を出さずに伝えられる。混んでいても使える 前もって作っておく必要がある。載っていないことは伝えにくい
実物・写真・数字を見せる 商品の違い、値段、数量 言葉が分からなくても伝わる 税込みかどうかなど、条件は別に伝える
多言語のPOP・案内 よく聞かれる質問、店の決まり お客様が自分で読める 翻訳の誤りがないか、内容が古くないかを確かめる

指さしの表に入れておきたいもの

  • あいさつと「はい」「いいえ」
  • 値段(電卓や紙で数字を見せる欄)と、税込みかどうか
  • サイズ、色、数量
  • 使える支払い方法
  • 免税の手続きができるかどうか
  • 試着、袋、包装の有無
  • トイレ、エレベーター、出口などの場所
  • 「少し待ってください」「ほかの店員を呼びます」

文字だけでなく、絵や図記号を添えると、読めない言語のお客様にも伝わりやすくなります。

スマートフォンの電卓と書類で計算する手元

支払いや免税、説明で気をつけることは?

免税の仕組みが変わった

国税庁と観光庁によると、外国人旅行者などに向けた消費税の免税の仕組み(輸出物品販売場制度)は、2026年11月1日の購入分から「リファンド方式」に移りました。免税店では、免税の対象になる物品も税込みの価格で販売し、購入した方は、購入日から90日以内に、出国のときに空港や港にある免税手続用の端末でパスポートを示して、物品を国外に持ち出すことの確認を受けます。その確認のあとに、免税店から消費税に当たる額が返金されます(2026年11月時点)。

免税の手続きは、税務署から許可を受けた免税店だけが行えます。店員は、自分の店が免税店かどうか、どんな手続きをするかを、前もって確かめておきます。分からないことを推測で答えず、詳しい内容は国税庁や観光庁の案内、または店の責任者に確かめましょう。

支払いと値段の伝え方

  • 使える支払い方法は、入口やレジに図や文字で示しておく
  • 値段は、税込みの金額を数字で見せる
  • 海外で発行されたカードが使えるかどうかは、店の決済の仕組みによって違うため、前もって確かめておく

支払い方法の種類は、コラム「キャッシュレス決済の種類と使い分け」で紹介しています。

契約や大事な条件の説明

消費者契約法は、事業者が勧誘するときに、知ることができたお客様の年齢、心身の状態、知識や経験を考え合わせて、契約の内容について必要な情報を提供するよう努めることを求めています(第3条第1項第2号)。日本の仕組みや決まりを知らない方もいるため、返品できない、毎月の料金がかかる、といった大事な条件は、紙に書いて渡し、分かったかどうかを確かめます。込み入った契約の説明は、やさしい日本語だけでは伝えきれないこともあるため、ガイドラインでも、通訳や翻訳機器などほかの手段に切り替えることが勧められています。

見た目で決めつけない

見た目や名前だけで、日本語が話せないと決めつけたり、外国人のお客様だけに違う対応をしたりしないようにします。食品の原材料などを聞かれたときは、表示を一緒に見ながら答え、分からないことは推測で答えません。法令や手続きの内容は一般的な説明です。詳しくは所管の窓口や専門家にご確認ください。

机の上のスマートフォンを指さして話す人たち

よくある失敗と、準備のチェックリスト

よくある失敗

  • 英語でなければと身構える:英語が出てこず、黙ってしまう。やさしい日本語と指さしで伝わることもあります
  • 丁寧すぎる敬語を使う:「お受けできかねます」のような言い方で、意味が伝わらない
  • あいまいに答える:「ちょっと難しいですね」と言い、できるのか、できないのかが伝わらない
  • 声を大きくする:伝わらないときに大きな声で繰り返し、お客様を驚かせてしまう
  • 翻訳アプリに長い文を入れる:長い文をそのまま話しかけ、違う意味に訳されてしまう
  • 免税を推測で答える:制度が変わったことを知らず、古い手続きの説明をしてしまう

準備のチェックリスト

  • 店頭でよく使う言い方を、やさしい日本語に直した一覧がある
  • 指さしの表やコミュニケーションボードを、レジ横に置いている
  • 使える支払い方法を、入口やレジに図と文字で示している
  • 値段の表示が、税込みの金額で分かりやすい
  • 自分の店が免税店かどうかと、今の手続きを知っている
  • 翻訳アプリを使える端末と、使う手順を決めている
  • 返品や毎月の料金など、大事な条件を紙で渡せる
  • 多言語のPOPや案内の内容が、古くなっていない
  • 見た目で判断せず、まずは日本語で声をかけている

よくある質問

英語が苦手でも、外国人のお客様の接客はできますか?

できます。日本語で会話ができる外国人の方も多く、やさしい日本語で短くはっきり話し、実物や数字を指さして見せれば伝わる場面はたくさんあります。込み入った説明が要るときだけ、翻訳アプリや、英語の話せる店員に切り替えます。

やさしい日本語で話すのは、失礼になりませんか?

「です」「ます」の丁寧な言い方で話せば、失礼にはなりません。気をつけたいのは、幼い子どもに話すような口調にしないことです。話してみて、日本語を上手に話す方だと分かったら、ふだんどおりの話し方に戻します。

免税について聞かれたら、どう答えればよいですか?

まず、自分の店が免税の手続きをできる店かどうかを伝えます。免税店でない場合は、手続きができないことを、はっきり伝えます。免税店の場合は、店の決まった手順に沿って案内します。2026年11月1日の購入分からは、店では税込みで支払い、出国のときの確認のあとに返金される仕組みになっています。

翻訳アプリを使うときのコツはありますか?

一度に話す文を短くし、文の最後まで言い切ります。「あれ」「それ」のような言葉を減らし、商品の名前をはっきり言います。訳された文をお客様に見せたあと、うなずきや返事で伝わったかを確かめ、伝わっていなければ言い方を変えて入れ直します。

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