高齢者への接客のポイント|話し方・見せ方・契約の確認

高齢のお客様への接客は、「ゆっくり、はっきり、短く話す」「大きく、見やすく見せる」「急がせず、本人の意思を確かめる」の3つが基本です。ただし、年齢だけで「分からないだろう」と決めつけるのは失礼にあたります。一人ひとりの様子を見て、必要な配慮だけを足すのが、高齢のお客様にも、ほかのお客様にも心地よい接客です。この記事では、販売の仕事をする方と販促担当の方に向けて、話し方と聞き方、説明と手続きの進め方、場面ごとの対応、認知症かもしれない方や契約で気をつけること、よくある失敗とチェックリストを順にまとめます。

年配の客と話す食料品店の店員

高齢のお客様の接客で、何が大切ですか?

年齢を重ねると、聞こえ方や見え方、体の動きに変化が出ることがあります。たとえば厚生労働省は、聴力は一般に40歳代から下がる傾向があり、65歳を超えると聞こえにくさを感じる人が急に増え、75歳以上では約半数が聞こえにくさを感じているとも言われていると紹介しています。

店頭では、次のような様子が見られることがあります。

  • 店員の声が聞き取りにくく、聞き返すことが増える
  • 値札や説明書の小さな字が読みにくい
  • 長い時間立ったまま話を聞くのがつらい
  • 画面の操作や、新しい手続きの仕組みに慣れていない
  • 一度にたくさんの説明を受けると、整理しにくい

ただし、これらは誰にでも当てはまるわけではありません。年齢が高くても、店員より商品に詳しいお客様もいます。大切なのは、年齢で対応を決めるのではなく、目の前のお客様の様子を見て、必要な配慮をすることです。出入国在留管理庁と文化庁の「やさしい日本語」のガイドライン(話し言葉のポイント)でも、相手に配慮した話し方は高齢者や障害のある人などにも役立つとしたうえで、大人の相手を子ども扱いしないよう注意しています。

消費者契約法も、事業者が勧誘するときは、知ることができたお客様の年齢、心身の状態、知識や経験を考え合わせて、契約の内容について必要な情報を提供するよう努めることを求めています(第3条第1項第2号)。高齢のお客様に合わせて説明を工夫することは、この考え方にも沿っています。

洋服店で服を選ぶ年配の夫婦

話し方と聞き方は、どうすればよいですか?

声のかけ方

  • お客様の視野に入ってから、正面に近い位置で声をかける。後ろから急に声をかけると、驚かせてしまうことがある
  • 最初に「〇〇売場の〇〇です」と名乗り、何の用件かを伝える
  • 声をかけるのは1人にする。複数の店員で囲むと、圧迫感を与える
  • 座って話を聞ける場所があれば、「よろしければおかけください」と案内する

話し方

  • ゆっくり、はっきり話す。早口や、甲高い声でまくしたてる話し方は避ける
  • 大きな声を出すより、正面から、言葉を区切って話す
  • 一度に伝えることは1つにする。「1つ目は〇〇です」と、数を示しながら進める
  • 専門用語やカタカナ語を、ふだんの言葉に言い換える
  • 大事な数字(金額、日付、時間)は、紙に書いて見せる

聞き方

  • 話を最後まで聞く。先回りして「つまり〇〇ですね」とまとめない
  • 聞き取れなかったときは、聞き返してよい。分からないまま話を進めない
  • お客様の言葉を繰り返して、「〇〇ということですね」と確かめる
  • 質問は1つずつにして、答えを待ってから次に進む

静岡県が窓口の職員向けにまとめた接遇の資料では、日本認知症官民協議会の手引きをもとに、「まずは見守る」「後ろから声をかけない」「おだやかに、はっきりした口調で」「本人の言葉に耳を傾けてゆっくり対応する」などの対応のポイントが紹介されています。認知症の方に限らず、高齢のお客様の接客でも参考になる内容です。

聞こえにくそうなとき

内閣府がまとめている合理的配慮の例では、聞こえにくい方に対して、筆談や、必要な物を一覧にしたコミュニケーションボードなど目で見て分かる方法を使うこと、ゆっくりはっきり話すこと、複数の人が同時に話さないようにすることが挙げられています。店頭では、筆談用の紙とペンをレジ横に置いておくと、すぐに使えます。音楽や放送の大きい場所を避け、静かな場所で話すことも助けになります。

年配の客に商品を説明する店員

説明と手続きは、どう進めますか?

  1. 目的を聞く:何に使いたいのか、今困っていることは何かを、最初に確かめます
  2. 要点を先に伝える:結論と大事な点を2〜3つに絞って話し、細かい説明はそのあとにします
  3. 見せながら説明する:実物や見本を手に取ってもらい、大きな字の資料を使います。資料の文字が小さいときは、要点を大きく書き出して渡します
  4. 場所や操作は具体的に言う:「そこ」「あれ」ではなく、「右下の青いボタン」のように伝えます。内閣府の例にも、位置関係を「30センチ右」「2歩前」のように分かりやすく伝える工夫があります
  5. 記入や操作を手伝うときは、本人に確かめながら進める:書類の記入や画面の操作を代わりに行う場合は、一つずつ本人の意思を確かめます
  6. 最後に要点を紙で渡す:買った物、合計の金額、毎月の費用、問い合わせ先を、大きな字で書いて渡します

契約や高い買い物のときは、「ご家族と相談してから決めたい」「一度持ち帰って考えたい」と言われることもあります。その場で決めるよう急がせず、資料を渡して、相談の時間を取ってもらいましょう。高齢の家族のスマートフォン選びは、コラム「高齢の家族のスマホ選びのポイント」でも紹介しています。

売場や受付でできる準備

話し方のほかに、売場の準備でも配慮ができます。接客が始まる前に整えておくと、どの店員でも同じ対応ができます。

  • 値札や案内の文字を大きくし、背景との色の差をはっきりさせる
  • 説明や手続きに時間がかかる売場には、座って話せる椅子を置く
  • 通路に物を置かず、つえや車いすでも通れる幅を保つ
  • 筆談用の紙とペン、拡大鏡、大きな字の資料をレジ横にまとめて置く
  • よく聞かれる説明は、大きな字の案内の紙にして、渡せるようにしておく
  • 日付や時間を書くときは、「午後2時から午後3時まで」のように、午前・午後と「から」「まで」を使う
スーパーで品物を選ぶ年配の夫婦

場面ごとの対応を比べると?

場面 見られることのある様子 対応の例 避けたいこと
声をかける 店員に気づいていない 視野に入ってから、正面に近い位置で名乗って声をかける 後ろから急に声をかける。複数で囲む
説明する 聞き返しが多い 言葉を区切って、ゆっくり話す。要点を紙に書く 同じ説明を、早口で繰り返す
商品を見せる 値札や表示を読みにくそう 大きな字の資料を使う。読み上げて伝える 「書いてあるとおりです」で済ませる
手続き・記入 書類や画面の操作に戸惑う 一つずつ本人に確かめながら手伝う 店員がすべて決めて、どんどん進める
迷っている 決められず、黙ってしまう 選ぶ点を2つほどに絞って示す。考える時間を取る 「今日だけです」と決断を急がせる
同じ質問が続く 前に説明したことを、また聞かれる 初めて聞かれたように答え、紙に書いて渡す 「さっき言いましたよね」と言う
家族と来店 家族が話を進めようとする 本人にも顔を向けて話し、本人の考えを確かめる 本人を飛ばして、家族とだけ話す

言葉の言い換えも、場面ごとに用意しておくと便利です。たとえば「オプション」は「追加のサービス」、「月額」は「毎月の料金」、「解約」は「やめる手続き」、「初期設定」は「使い始めの設定」と言い換えると、伝わりやすくなります。

店で商品を手に取って見る年配の夫婦

認知症かもしれない方や、契約で気をつけることは?

認知症の方への対応の心得

同じ静岡県の資料では、認知症の人への対応の心得として「驚かせない」「急がせない」「自尊心を傷つけない」の3つが基本とされています。認知症は、誰でもなりうるものです。店員が「認知症かもしれない」と決めつけたり、ほかのお客様の前でそれを口にしたりしないようにします。様子が気になるときは、さりげなく見守り、困っている様子なら「何かお手伝いしましょうか」と声をかけます。

何度も同じ問い合わせがあるときや、本人だけでは手続きが難しそうなときは、ご本人の了解を得て、ご家族と一緒に来てもらうことを提案する方法があります。地域包括支援センターなど、高齢の方の相談窓口があることを伝えるのも一つの方法です。ご本人の様子や事情を、了解なくほかの人に伝えることはしません。

契約で気をつけること

  • 不安につけこまない:消費者契約法では、加齢や心身の故障で判断力が著しく下がっていることから、生活の維持に過大な不安を抱いていると知りながら、その不安をあおり、正当な理由がないのに「この契約をしないと今の生活が続けられない」と告げて契約させた場合、取り消せるとしています(第4条第3項第7号)
  • 不利な点を伝え、量を勧めすぎず、引き止めない:不利な事実を伝えない(同条第2項)、帰りたいと示したのに引き止める(同条第3項第2号)、通常の量を著しく超えると知りながら勧める(同条第4項)、といった勧め方で契約させた場合も、取り消しの対象になることがあります。くわしくはコラム「クロスセルとアップセルの進め方」で紹介しています

障害のある方への合理的配慮

障害者差別解消法では、障害のある方から、困りごとを取り除いてほしいという意思が示されたとき、負担が重すぎない範囲で、必要で合理的な配慮をするよう事業者に求めています(第8条第2項)。内閣府によると、事業者の合理的配慮の提供は、2024年4月1日から義務になりました。聞こえや見え方に障害のある高齢のお客様から、筆談や読み上げを頼まれたときは、できる方法を一緒に考えましょう。

お客様やご家族が契約のことで困っているときは、消費者ホットライン「188」を案内できます。188は、地方公共団体が設けている身近な消費生活センターや相談窓口につながる全国共通の番号です(2026年11月時点)。法令の内容は一般的な説明です。詳しくは所管の窓口や専門家にご確認ください。

帽子を選ぶ年配の夫婦

よくある失敗と、接客のチェックリスト

よくある失敗

  • 子ども扱いする:必要以上にくだけた言葉や、幼い子どもに話すような口調を使ってしまう
  • 大声だけで解決しようとする:大きな声で早口に話すと、かえって伝わりにくい。周りのお客様にも話が聞こえてしまう
  • 年齢で決めつける:「難しいと思うので」と、お客様が知りたい説明を省いてしまう
  • 家族とだけ話す:契約する本人の考えを確かめないまま、話を進める
  • 急がせる:後ろに並ぶお客様を気にして、説明を飛ばしたり、決断を急がせたりする
  • 説明を口だけで済ませる:金額や手続きを紙に書いて渡さず、あとで「聞いていない」と言われる

接客のチェックリスト

  • 視野に入ってから、正面に近い位置で名乗って声をかけた
  • 座れる場所や、静かな場所を案内できる
  • ゆっくり、はっきり、言葉を区切って話した
  • 一度に伝えることを1つにした
  • 専門用語やカタカナ語を言い換えた
  • 大事な数字と要点を、大きな字で紙に書いて渡した
  • お客様の言葉を繰り返して、分かったかを確かめた
  • 契約する本人の意思を確かめた
  • 考える時間や、家族と相談する時間を取ってもらった
  • 筆談用の紙とペン、大きな字の資料を用意している

よくある質問

何歳くらいから、高齢のお客様として対応を変えればよいですか?

年齢で対応を切り替える必要はありません。聞き返しが多い、字を読みにくそうにしているなど、お客様の様子を見て配慮を足します。配慮が要るかどうか分からないときは、「資料の字は見やすいですか」「この場所で声は聞こえますか」と、お客様に聞いてかまいません。

ご家族から「本人の代わりに契約したい」と言われたら、どうしますか?

契約する人が誰になるのかを、最初に確かめます。本人の名前で契約するなら、本人の意思を確かめることが基本です。代わりの人が手続きできるかどうか、どんな書類が要るかは、商品やサービス、会社ごとの決まりによって違うため、その決まりに沿って案内します。なお、認知症などで判断能力が十分でない方の財産の管理や契約を支える仕組みとして、成年後見制度があります。制度の詳しいことは、法務省の案内や専門の窓口に確かめるよう伝えます。

同じ説明を何度も求められたら、どうすればよいですか?

嫌な顔をせず、初めて聞かれたように答えます。そのうえで、要点を大きな字で紙に書いて渡すと、お客様があとで見返せます。手続きや契約に関わる説明が続くときは、ご家族と一緒にもう一度来てもらうことを提案するのも一つの方法です。

「だまされているのでは」と心配されたら、どう答えますか?

心配するのは自然なことだと受け止めます。そのうえで、店の名前と自分の名前を伝え、契約の内容と金額を書面で渡し、持ち帰って家族と相談してよいことを伝えます。その場での決断を求めないことが、安心につながります。偽のメールやSMSのような被害を心配されているときは、コラム「迷惑メール・偽のSMSの見分け方」の内容も参考になります。

店頭での接客や販売の進め方を外部に相談したいときは、営業代行のページで当社の取り組みを紹介しており、ご相談はお問い合わせフォームから受け付けています。

同じカテゴリの他の記事

催事・イベントの企画・運営、営業代行、店舗運営についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ