営業トークの組み立て方|結論から伝える話し方と手順
営業トークは、「結論、理由、具体例、もう一度結論」の順を基本に組み立てると、相手に伝わりやすくなります。ただし、結論を言う前に、相手の困りごとや望みを聞いておくことが前提です。商談の全体は、導入、聞き取り、提案、疑問への答え、まとめと次の一歩の順に組み立てます。消費者に向けた説明では、事実と違うことや、先のことを言い切る説明は、法律の問題にもなるので注意します。この記事では、営業トークの全体像、組み立ての手順、結論から伝える型の比べる表、注意点、よくある失敗、チェックリストの順にまとめます。

営業トークとは?商談の全体は、どんな順番で組み立てますか?
営業トークは、商談や接客の場で、相手に提案の中身を伝え、判断してもらうための話の組み立てです。決まったせりふを覚えて話すことではありません。相手によって話の中身は変わりますが、話す順番の骨組みを持っておくと、どの相手にも落ち着いて話せます。
結論から話すことは、営業に限らず、仕事の伝え方の基本とされています。文化審議会の「公用文作成の考え方」は、文書の結論はできれば最初の段落で示し、最後まで読まないと何を言おうとしているか分からない書き方は避けるよう勧めています。そのうえで、次の段落から目的や理由、根拠などの詳細を説明するとしています。福島労働局のビジネスマナーの資料でも、報告は結論、理由、経過の順に伝えるとしています。
商談の全体の流れ
- 導入:あいさつと時間のお礼、今日の目的と所要時間を伝えます。
- 聞き取り:相手の今のやり方、困っていること、望む状態を聞きます。
- 提案:聞いた内容に合わせて、結論から提案を伝えます。
- 疑問への答え:価格、手間、時期などの気がかりに答えます。
- まとめと次の一歩:要点をまとめ、次に何をするかを相手と決めます。
聞き取りの準備は商談のヒアリングシートの作り方、店頭での声かけは店頭販売の声かけと接客の基本で紹介しています。

営業トークは、どんな手順で組み立てればよいですか?
1. 商談の目的を1つに決める
「今日はどこまで進めたいか」を1つに決めます。次回の詳しい説明の約束、見積もりの依頼、試してもらう日の決定などです。目的が決まると、話す量と順番も決まります。目的は、導入のところで相手にも伝えます。
2. 相手の話を聞く
結論を言う前に、相手の状況を聞きます。鹿児島労働局のハローワークの資料では、「はい・いいえ」で答えられる閉ざされた質問と、相手に考えさせる開かれた質問を使い分けること、「なぜ」より「どのように」を使って問い詰める形を避けること、話をさえぎって質問しないことを勧めています。聞いた言葉は、あとで提案に使うためにメモしておきます。
3. 結論を一文にする
聞いた内容をもとに、「○○の手間を減らすために、△△をご提案します」のように、相手の困りごとと提案をつないだ一文を作ります。一文で言えないときは、提案の中身がまだ絞れていない合図です。
4. 理由と根拠をそろえる
結論を支える理由は、多くても3つほどに絞ります。数字や事例を使うときは、出どころを確かめたものだけを使い、聞かれたら資料を示せるようにしておきます。確かめていない数字は、話の中に入れないことが大切です。
5. 具体例を、相手の場面に当てはめる
具体例は、相手の仕事や暮らしの場面に当てはめて話します。「たとえば朝の受付のときに」のように、相手が自分の姿を思い浮かべられる言い方にすると、提案の中身が伝わりやすくなります。
6. 特徴を、相手にとっての良さに言い換える
商品の特徴をそのまま並べても、相手は自分にどう関係するのか分かりません。特徴が、相手の仕事や暮らしの中で何を変えるのかに言い換えます。
| 特徴(商品の側から見たこと) | 相手にとっての良さ(相手の側から見たこと) |
|---|---|
| 軽くて持ち運べる | 外出先や別の部屋でも使える |
| 操作の画面が大きい | 文字が読みやすく、入力の間違いが減る |
| 月ごとに契約できる | まず短い期間で試し、合うかどうかを確かめられる |
7. 疑問や反対への答えを用意する
価格、取り入れる手間、時期、今のやり方との違いなど、出てきそうな疑問を先に書き出し、答えを用意します。疑問を言われたら、まず「そこが気になりますよね」と受け止め、何が気がかりなのかを確かめてから答えます。答えの作り方はお客様からよく聞かれる質問への答え方とFAQの作り方が参考になります。
8. まとめて、次の一歩を相手に決めてもらう
最後に要点を短くまとめ、次に何をするかを相手に選んでもらいます。決めるのは相手です。急がせたり、断りにくい雰囲気をつくったりしないようにします。関連する商品の提案の仕方はクロスセルとアップセルの進め方で紹介しています。

結論から伝える型には、どんなものがありますか?
結論から伝える話し方には、いくつかの型があります。英語の頭文字をとった呼び方をされるものもありますが、呼び方よりも、どの順番で話すかを押さえることが大切です。主な型を表で比べます。
| 型 | 話す順番 | 向く場面 | 例 |
|---|---|---|---|
| 結論・理由・具体例・結論(PREP と呼ばれることがある型) | 結論を言い、理由と具体例で支え、最後にもう一度結論を言う | 提案の中心を伝えるとき、質問に答えるとき | 「A案をおすすめします。今の入力の手間を減らせるからです。たとえば受付の入力が1回ですみます。そのため、A案が合うと考えます」 |
| 要点・詳細・要点(SDS と呼ばれることがある型) | 要点を短く言い、詳しく説明し、要点で締める | 会社や商品の紹介、短い説明 | 「本日は3点ご説明します。(3点の説明)以上の3点です」 |
| 問い・答え | 相手が気にしていそうな問いを先に示し、答えを続ける | 不安や疑問を先回りして説明するとき | 「費用はどのくらいかかるのか、という点からご説明します」 |
| 時系列(背景・経過・結果) | 起きた順に話し、最後に結果を言う | 経緯の説明、出来事の報告の詳細 | 「先月このようなことがあり、その後こう対応し、結果としてこうなりました」 |
時系列の型は、出来事を正しく伝えるのには向きますが、結論が最後になります。提案の場面では、まず結論を言ってから、必要な分だけ経緯を補うと、相手は話の行き先が分かったうえで聞けます。どの型を使う場合でも、話し始めに「今日は○○についてお話しします」と全体を示しておくと、相手は聞く準備ができます。
同じ提案を、2つの順番で比べると
受付の手間に困っているお店に、新しいやり方を提案する場面で比べます。
- 経緯から話す場合:「先日うかがったお話では、朝の受付が混み合うとのことでした。そこで社内で検討し、いくつかの方法を比べてみました。その結果、B案がよいのではないかと考えました」
- 結論から話す場合:「朝の受付の混雑を減らすために、B案をご提案します。理由は、受付の入力が1回ですむからです。たとえば開店直後の混み合う時間でも、お客様を待たせにくくなります。そのため、B案が合うと考えます」
経緯から話すと、相手は最後まで「結局どうしたいのか」を待つことになります。結論から話すと、相手は最初に提案の中身をつかみ、そのあとの理由を自分の店に当てはめながら聞けます。

話すときに気をつけることは?法律で決められていることは?
短く、通じる言葉で話す
「公用文作成の考え方」は、伝わる文の書き方として、一文を短くすること、一文の論点を一つにすること、専門用語や外来語をむやみに用いないことを挙げています。話し言葉でも同じです。社内で使う略語や業界の言葉は、相手に通じる言葉に言い換えましょう。
敬語は重ねすぎない
文化庁の「敬語の指針」では、「させていただく」は、相手の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受ける場合に使うのが基本で、そうでない場面では「いたします」の方が簡潔に感じられることがあるとしています。丁寧にしようとして言葉を重ねると、かえって話が長くなります。
消費者に向けた説明で気をつけること
消費者と事業者の間の契約には、消費者契約法がかかります。同法では、事業者の勧誘によって消費者が誤認したり困惑したりして結んだ契約を、消費者が取り消せる場合を定めています。営業トークに関係する主なものは次のとおりです。
- 事実と違うことを告げる:重要な事項について事実と異なることを告げ、消費者がそれを事実だと誤認した場合(第4条第1項第1号)
- 先のことを言い切る:将来の価格や受け取る金額など、変わるかどうか分からないことについて断定的な判断を示し、消費者がそれを確実だと誤認した場合(同項第2号)
- 都合の悪いことを言わない:消費者の利益になることを告げながら、不利益になる事実を故意または重大な過失で告げず、消費者がその事実はないと誤認した場合(同条第2項)
- 帰らない、帰さない:帰ってほしいと示されても退去しない、帰りたいと示されても退去させないことで、消費者が困惑した場合(同条第3項第1号・第2号)
取消しができる期間は、原則として、追認をすることができる時(誤認に気づいたり困惑から抜け出したりして、取り消せることを知った時)から1年、契約を結んだ時から5年です(同法第7条第1項。一部に別の期間の定めがあります)。また、事業者から契約の媒介を任された人(同法第5条第1項)や、事業者の代理人(同条第2項)が同じような勧誘をした場合も、同じように扱われます。営業を任されて話す人のトークも、対象になるということです。
景品表示法では、商品やサービスの内容を実際のものより著しく優良だと示す表示(優良誤認表示)や、価格などの取引の条件について、著しく有利だと誤認される表示(有利誤認表示)を禁止しています。消費者庁の「表示に関するQ&A」では、口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む)も、景品表示法の「表示」に含まれると説明しています。チラシに書いていないことでも、口で言ったことは表示として扱われるということです。詳しくは所管の窓口や専門家にご確認ください。

よくある失敗と、その直し方は?
営業トークの失敗の多くは、話す順番か、話す量のどちらかで起きます。よくある例と直し方をまとめます。
| よくある失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 前置きが長い | 相手が話の行き先をつかめず、聞く気をなくす | 時間のお礼と今日の目的を言ったら、本題に入る |
| 聞く前に話し始める | 相手の困りごとに合わない提案になる | 提案の前に、今のやり方と困りごとを聞く |
| 特徴を全部並べる | 何が大事か分からず、印象に残らない | 相手に関係する良さを1つか2つに絞る |
| 専門用語や社内の略語を使う | 相手が聞き返せず、分かったふりで話が進む | 相手に通じる言葉に言い換える |
| 根拠のない数字や言い切りを使う | 信頼を失い、消費者向けでは法律の問題になる | 確かめた事実だけを話し、分からないことは調べて答える |
| 沈黙をうめようと話し続ける | 相手が考える時間がなくなる | 質問のあとは、相手が答えるまで待つ |
| 次の一歩を決めずに終わる | 「検討します」のまま連絡が途切れる | 誰が何をいつまでにするかを確かめて終える |
話し方は、練習で身につきます。お客様役と営業役を入れ替えながら練習すると、相手から見た話の分かりやすさに気づけます。進め方は接客ロールプレイングのやり方で紹介しています。

営業トークを組み立てるときのチェックリスト
準備のとき
- 今日の商談の目的を1つに決めた
- 聞きたいことを、質問の形で書き出した
- 結論を一文で言える
- 理由を多くても3つほどに絞り、根拠を確かめた
- 具体例を、相手の場面に当てはめた
- 特徴を、相手にとっての良さに言い換えた
- 出てきそうな疑問と答えを用意した
話している間
- 最初に、時間のお礼と今日の目的、所要時間を伝えた
- 提案の前に、相手の話を聞いた
- 結論から話し、理由と具体例で支えた
- 一文を短くし、通じる言葉を使った
- 事実と違うことや、先のことを言い切る言い方をしていない
- 相手の不利益になることも、利益になることと同じように伝えた
終わったあと
- 次の一歩と期限を、相手と確かめた
- 聞いたことと約束したことを記録した
- うまく伝わらなかったところを書き出し、次の練習に使った
約束の取り方は電話でアポイントを取るときの基本、訪問の場でのふるまいは法人を訪問する営業のマナーで紹介しています。
よくある質問
台本は、丸暗記したほうがよいですか?
丸暗記はおすすめしません。台本どおりに話そうとすると、相手の反応を聞き逃しやすくなります。覚えるのは、話の順番と、結論の一文、よく聞かれる質問への答えです。言い回しは、相手に合わせて変えて構いません。
結論から話すと、冷たい印象になりませんか?
結論の前に、時間のお礼や、聞かせてもらった話への感謝を一言添えると、冷たい印象にはなりにくくなります。結論を先に言うことは、相手の時間を大切にすることでもあります。
相手があまり話してくれないときは、どうすればよいですか?
「はい・いいえ」で答えられる質問から始めると、答えてもらいやすくなります。答えが返ってきたら、「どのように」「どんな場面で」と少しずつ広げます。話してもらえない理由が、時間がないことにある場合もあるので、所要時間を最初に伝えておくことも大切です。
法人向けと個人向けで、組み立ては変わりますか?
結論から伝える順番は同じです。法人向けでは、目の前の担当の方が社内で説明しやすいように、理由や数字を資料にまとめて渡すと役立ちます。個人向けでは、専門の言葉を減らし、暮らしの場面に当てはめた具体例を使います。消費者に向けた説明では、前の章で紹介した消費者契約法や景品表示法の決まりにも気をつけます。
商談や店頭での説明を含む営業の活動を外部に任せたいときは、営業代行のページで当社の取り組みを紹介しており、ご相談はお問い合わせフォームから受け付けています。
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