店頭販売の目標とKPIの決め方|売上を分けて行動の数字にする

店頭販売の目標は、最後に達成したい数字を1つ決め、それを「客数」と「客単価」のように分けて、売場で毎日動かせる数字に置きかえると決めやすくなります。この途中の数字がKPIです。KPIは数を絞り、計算の仕方と集計の期間をそろえ、週ごとに実績と比べて見直します。この記事では、店頭販売の責任者や販促担当の方に向けて、目標とKPIを決める手順、よく使う指標の比べ方、数字を追うときの注意点、よくある失敗とチェックリストをまとめます。

グラフの前でタブレットを見る女性

店頭販売のKPIとは?目標とはどう違いますか?

KPIは Key Performance Indicator の略で、重要業績評価指標と訳します。内閣府の資料では、目標を達成するための取り組みの進み具合を、数字で測るための指標と説明しています。最後に達成したい目標そのものを表す指標は、KGI(重要目標達成指標)と呼びます。用語の意味は、コラム「営業・販売の現場でよく使う用語集」でも紹介しています。

店頭販売にあてはめると、次の3段で考えると整理しやすくなります。

段 中身 店頭販売での例
最後の目標(KGI) 期間の終わりに達成したい結果 月の売上、契約や申込みの件数
途中の指標(KPI) 結果に向かって進んでいるかを測る数字 来店客数、購買率、客単価、買上点数
毎日の行動 KPIを動かすために売場ですること 声かけ、見本や体験の案内、一緒に使う商品の紹介

「目標」と「KPI」は、言葉が混ざりやすいところです。KPIは「何を測るか」という指標の名前で、目標値は「どこまで達成するか」という数字です。たとえば「購買率」はKPIで、「今月の購買率を先月より上げる」と決めた水準が目標値です。内閣府の資料でも、取り組みと直接つながり、成果を客観的に表すKPIを選び、妥当な水準の目標値を置くこと、進み具合を定期的に確かめ、届かないときは原因を分析することが挙げられています。

売上は、どう分けて考えますか?

中小企業基盤整備機構のJ-Net21では、売上をまず「客数」と「客単価」に分け、客数はさらに「新しいお客様」と「今のお客様の来店の回数」に、客単価は「買上点数」と「商品の単価」に分ける考え方を紹介しています。分けることで、どこに力を入れればよいかが見えやすくなります。

店頭販売では、客数をもう一段、売場での流れに沿って分けると、毎日の行動と結びつけやすくなります。

  • 来店客数:店や売場に入った人の数
  • 購買率:来店した人のうち、買った人の割合
  • 客単価:買った人1人あたりの買上金額

この3つを掛け合わせると、売上になります。売上が目標に届かないときも、どの数字が足りないのかを分けて見れば、打つ手を決めやすくなります。

タブレットを指さして話し合う手元

店頭販売の目標とKPIは、どんな手順で決めますか?

目標とKPIは、上から順に決めていきます。次の7つの手順で進めると、抜けが少なくなります。

  1. 期間と最後の目標を決める:月、四半期、催事の会期など、期間を先に決めます。最後の目標は、売上や契約の件数など1つに絞ります。
  2. 目標を分ける:売上なら「来店客数×購買率×客単価」のように分けます。契約を目標にするなら「接客した人の数×契約に至った割合」のように分けます。
  3. 弱いところを探す:過去の実績を同じように分けて、どこが伸び悩んでいるかを見ます。来店は多いのに買う人が少ない、買う人は多いのに1人あたりの金額が小さい、などです。
  4. 動かせる指標を選ぶ:売場の行動で変えられる数字を、KPIとして選びます。天気や館の集客のように、売場で変えられないものは参考の数字にとどめます。
  5. 計算の仕方を決める:割合の分母、税込みか税抜きか、返品を引くか、何時で締めるかを決めて、書いて残します。
  6. 目標値を決める:直近の実績をもとに、曜日、時間帯、立つ人数、売場の広さ、季節の行事などを考えて決めます。
  7. 記録と見直しの方法を決める:誰が、いつ、何で記録するか(レジの集計、日報、手書きの集計表など)と、見直す日を決めます。

目標値は、何をもとに決めればよいですか?

目標値は、前の期間の実績を出発点にします。そのうえで、前の期間と条件が違うところを足し引きします。たとえば、立つ人数が増える、売場の場所が変わる、季節の行事がある、新しい商品が入る、といった違いです。条件を考えずに「前の月より一律に何割増し」と決めると、達成しても届かなくても、理由が分からなくなります。

目標値は、少し工夫すれば届く水準にすると、毎日の行動を変えるきっかけになります。届く見込みのない数字は、現場の人が途中であきらめる原因になります。反対に、何もしなくても届く数字では、工夫が生まれにくくなります。

個人の目標とチームの目標は、どう分けますか?

厚生労働省の職業能力評価基準(アパレル分野の販売)では、店舗の計数管理の能力として、個人の売上の目標や、複数の商品を組み合わせて買ってもらうこと(販売セット率)の目標を立て、達成に向けて行動の計画をつくることが挙げられています。上の段階では、店の予算を一人ひとりに合った個人の予算に分け、日・週・月などの単位で予算と実績を比べ、差があれば原因を分析して対策を立てることが求められています。

個人の目標は、経験や担当する時間帯に合わせて決めます。あわせてチームの目標を置くと、混んでいる時間に助け合う、引き継ぎを丁寧にする、といった行動も評価しやすくなります。

店のカウンターで買い物袋を渡す店員

店頭販売でよく使うKPIには、何がありますか?

店頭販売でよく使う指標を、計算の例とあわせて比べます。計算の仕方は職場によって違うため、表は一つの例として使ってください。

指標 計算の例 分かること・動かす行動 気をつけたい点
来店客数 店や売場に入った人の数 売場に人を呼ぶ力。店頭の見せ方や告知で動かす 入口で数えるか、時間を区切って数えるかをそろえる
接客数 声をかけて会話になった人の数 声かけの量。声をかけるきっかけづくりで動かす 数だけを追うと、しつこい声かけになりやすい
体験の数 試着、試食、実演などを体験した人の数 商品に興味を持った人の数。見本の置き方や案内で動かす 体験のあとの説明につなげる流れも決めておく
購買率(成約率) 買った人の数÷来店した人の数(または接客した人の数) 説明や提案の力。説明の順番や比べ方の案内で動かす 分母を「来店」にするか「接客」にするかを決めておく
客単価 売上÷買った人の数 1人あたりの買上。選び方の案内で動かす 税込みか税抜きか、返品を引くかをそろえる
買上点数・セット率 売った点数÷買った人の数、複数の商品を買った人の割合 組み合わせの提案の力。一緒に使う商品の紹介や陳列で動かす お客様が要らない物まで勧めない
再来店・会員登録の数 2回目以降に来た人の数、会員になった人の数 お客様との関係づくり。次の来店につながる案内で動かす 連絡先を預かるときは、使う目的を伝える
1時間あたりの売上 売上÷スタッフの延べ勤務時間 人の配置が合っているか。シフトの組み方で動かす 混む時間と空く時間を分けて見る

このうちKPIとして置くのは、今の弱いところに関係する指標です。来店は多いのに買う人が少ないなら購買率と体験の数、買う人は多いのに金額が小さいなら客単価と買上点数、というように選びます。表の指標を全部、毎日追う必要はありません。一緒に使う商品の提案の進め方は、コラム「クロスセルとアップセルの進め方」で紹介しています。

常設の売場と催事の売場で、選ぶ指標は変わりますか?

変わります。常設の売場では、同じお客様にまた来てもらうことが売上を支えるため、再来店や会員登録の数が役に立ちます。期間を区切った催事では、通りかかった人に立ち止まってもらう力と、短い時間で説明する力が大事になるため、時間帯ごとの接客数や購買率をこまめに見ます。催事の売上目標の立て方は、コラム「催事の売上目標の立て方と振り返り方」、販促の効果の測り方は「販促イベントの効果の測り方」で紹介しています。

棒グラフを映したタブレットとメモ帳

KPIを決めて追うとき、何に気をつければよいですか?

数を追う指標は、強引な勧誘につながらないようにする

接客数や契約の件数だけを強く追うと、帰ろうとするお客様を引き止めたり、良い点だけを伝えたりする売り方になりかねません。消費者契約法では、事業者が勧誘のときに重要な事柄について事実と違うことを告げた場合や、お客様が帰りたいと伝えたのに勧誘している場所から帰さなかった場合などに、そのためにお客様が事実を誤って信じたり、困惑したりして結んだ契約は、取り消せることが定められています。数の指標を置くときは、説明の確認や苦情の件数など、売り方の質を見る項目もあわせて見ると、偏りを防げます。詳しくは所管の窓口や専門家にご確認ください。

連絡先を預かる指標は、個人情報の決まりを守る

会員登録やアンケートの数をKPIにする場合は、お客様の個人情報を扱います。個人情報保護法では、個人情報を扱う事業者は使う目的をできる限り特定すること、申込書などの書面で本人から直接預かるときは使う目的をあらかじめはっきり示すこと、預かった情報が漏れたりなくなったりしないよう安全に管理することなどが定められています。登録の数を増やすことだけを急がず、使う目的の説明を省かないようにします。

売場で変えられない事情は、別に記録する

天気、館やモールの催し、近くの売場の工事、商品の入荷の遅れなどは、売場の努力では変えられません。こうした事情は、日報などに書き残しておきます。あとで実績を振り返るとき、行動の良しあしと、外の事情による増減を分けて考えられます。日報の書き方は、コラム「販売の日報と報告書の書き方」にまとめています。

数字を、人を責める材料にしない

KPIは、売り方を良くするための道具です。目標に届かない人を人前で責める材料にすると、数字を正しく記録しなくなったり、助けを求めにくくなったりします。届かない理由を一緒に分けて考え、次に試すことを決める場にします。販売の仕事をする人のやる気の保ち方は、コラム「販売スタッフのやる気を保つ工夫」で紹介しています。

花屋で支払いを受ける店員

店頭販売のKPIで、よくある失敗は?

  • KPIが多すぎる:追う数字が多いと、どれを優先すればよいか分からなくなります。毎日見る数字は、少なく絞ります。
  • 売上しか見ていない:結果の数字だけでは、何を変えればよいかが分かりません。売上を分けた途中の数字も見ます。
  • 行動の数字しか見ていない:声かけの数は増えたのに、売上が変わらないことがあります。行動の数字と結果の数字を、組にして見ます。
  • 計算の仕方が人によって違う:同じ「購買率」でも、分母が違えば比べられません。計算の仕方を書いて共有します。
  • 目標値の根拠が分からない:「なぜこの数字なのか」が説明できないと、達成しても届かなくても振り返れません。前の実績と条件の違いを書き添えます。
  • 見直さない、または変えすぎる:一度決めたまま放っておくのも、毎日のように変えるのも、うまくいきません。週ごとに実績と比べ、目標値を変えるのは前提が変わったときにします。
  • 記録の手間が大きすぎる:接客の合間に細かい記録を求めると、記録が抜けたり、接客がおろそかになったりします。記録する項目は、使う分だけにします。
タブレットのグラフを見ながらメモを取る人

店頭販売の目標とKPIを決めるときのチェックリスト

決めた内容を、次の項目で確かめます。

  • 期間と、最後の目標(売上や件数など)が1つに決まっている
  • 最後の目標を、来店客数、購買率、客単価などに分けてある
  • 過去の実績を同じように分けて、弱いところを確かめた
  • KPIは、売場の行動で動かせる数字になっている
  • KPIの数は、毎日確かめられるだけに絞ってある
  • 割合の分母、税込みか税抜きか、返品の扱い、締めの時刻を書いて残した
  • 目標値の根拠(前の実績と、条件の違い)を説明できる
  • 個人の目標とチームの目標の両方がある
  • 売り方の質を見る項目(説明の確認、苦情など)もある
  • 連絡先を預かる場合は、使う目的の伝え方を決めた
  • 誰が、いつ、何で記録するかが決まっている
  • 見直す日と、見直す人が決まっている

よくある質問

KPIは、いくつくらい決めればよいですか?

決まった数はありません。売場で毎日確かめて、行動を変えられる数にとどめます。最後の目標に近い結果の数字と、それを動かす行動の数字を組にして、少ない数から始めると続けやすくなります。慣れてきたら、必要に応じて足します。

来店客数を数える仕組みがないときは、どうすればよいですか?

まずは、レジの記録で分かる「買った人の数」と「客単価」から始めます。来店客数は、混む時間帯と空く時間帯に時間を区切って数えるなど、決まった方法で続けると目安として使えます。数え方を途中で変えると前の数字と比べられなくなるため、方法を決めて記録しておきます。

目標に届かない日が続いたら、目標を下げるべきですか?

先に、届かない理由を分けて確かめます。来店客数、購買率、客単価のどれが足りないのか、売場で変えられない事情があったのかを見ます。立つ人数や売場の場所など、目標を決めたときの前提が変わったなら見直します。前提が同じなら、目標はそのままにして、行動のほうを変えてみます。

個人の目標は、必要ですか?

個人の目標があると、自分の行動を振り返りやすくなります。厚生労働省の職業能力評価基準でも、個人の売上の目標や行動の計画を立てることが、販売の仕事の能力の一つとして挙げられています。ただし、担当する時間帯や経験で条件が違うため、一律にせず、一人ひとりに合わせて決めます。チームの目標もあわせて置くと、助け合う行動を評価しやすくなります。

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