催事の売上目標の立て方と振り返り方|逆算の手順と記録の取り方

催事の売上目標は、気分や前回の数字だけで決めるのではなく、費用から逆算した「最低限必要な売上」と、客数と客単価から積み上げた「見込める売上」の両方を出し、その間に置くと決めやすくなります。決めた目標は日ごと・時間帯ごとに分けておくと、期間の途中で遅れに気づけます。終わったあとは、目標と実績の差を「客数」と「客単価」に分けて確かめると、次の催事で何を変えるかがはっきりします。この記事では、売上目標の考え方、立て方の手順、振り返りの進め方、方法ごとの比較、注意点とよくある失敗、チェックリストをまとめます。

グラフ入りの資料とノートパソコン

催事の売上目標とは?何を決めておけばよい?

売上目標は、催事の期間中に達成したい売上の金額です。ただし、金額だけを決めても、当日にどう動けばよいかは見えてきません。催事の目標は、次のような数字の組み合わせで考えると使いやすくなります。

  • 売上:期間中に売れた金額の合計です。
  • 粗利:売上から、売れた商品の仕入れや原価を引いた額です。出店料や人件費などの費用は、ここから払うことになります。
  • 客数:買ってくれたお客様の数です。レジを通った回数で数えることが多くあります。
  • 客単価:お客様1人あたりの買い上げ金額です。売上を客数で割って求めます。
  • 立ち寄り数:ブースで足を止めた人や、試食・体験をした人の数です。

中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する J-Net21 では、売上はまず「客数」と「客単価」に分けられ、さらに客数は「新規のお客様」と「既存のお客様の来店頻度」に、客単価は「買い上げ点数」と「商品単価」に分けられると説明されています。催事は短い期間に初めてのお客様と出会うことが多いため、この分け方に「ブースの前を通る人のうち、何人が立ち寄り、何人が買うか」という見方を足すと、目標が当日の行動につながりやすくなります。

目標を決めると、準備の量が決まる

売上目標は、準備のもとになる数字でもあります。目標の客数が決まれば、レジの台数や会計を受け持つ人の数の目安が立ちます。客単価と商品ごとの売れ方の見込みが決まれば、持ち込む在庫の量も決めやすくなります。目標がないまま準備を進めると、在庫が足りない、人が余る、といったずれが起きやすくなります。在庫の考え方はコラム「催事の在庫の持ち方と補充のコツ」、人の数の考え方は「催事スタッフの人数の考え方とシフトの組み方」で紹介しています。

円グラフを描いて計画を立てる手元

売上目標は、どんな手順で立てる?

ここでは、費用から逆算する方法と、客数から積み上げる方法を組み合わせた手順を紹介します。二つの方向から数字を出すと、目標の根拠を関係者に説明しやすくなります。

手順1:催事の目的を決める

催事の目的は、売上だけとは限りません。新商品を知ってもらう、会員の登録を増やす、地域で名前を覚えてもらう、といった目的もあります。目的によって、売上目標を重く見るのか、ほかの数字(試食の数、登録の数など)を重く見るのかが変わります。最初に目的を一つか二つに絞り、関係者で共有しておきます。

手順2:かかる費用を書き出す

次に、催事にかかる費用を書き出します。費用は、売上に応じて増える「変動費」と、売上に関係なくかかる「固定費」に分けます。J-Net21 では、変動費の例として仕入れた商品や原材料、固定費の例として正社員の給与や店舗の家賃が挙げられています。催事に当てはめると、次のように分けられます。

分類 催事での例
変動費 商品の仕入れや原価、売上に応じてかかる会場の手数料、キャッシュレス決済の手数料、包装材
固定費 区画の出店料、什器や備品の借り賃、装飾や販促物の制作費、スタッフの人件費、交通費や運搬費

会場の手数料が売上に対する割合で決まる場合は変動費、金額が決まっている場合は固定費として扱います。契約の内容によって分け方が変わるため、会場との取り決めを確かめてから表に入れます。

手順3:最低限必要な売上を計算する

費用を分けたら、損失が出ない売上の水準を計算します。利益がゼロになる売上高を「損益分岐点売上高」と呼びます。J-Net21 では、次の式が紹介されています。

  • 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
  • 目標利益を出すための必要売上高 =(固定費 + 目標利益)÷(1 − 変動費率)

変動費率は、売上に対する変動費の割合です。J-Net21 の例では、売上高100万円、変動費50万円(変動費率50%)、固定費20万円の場合、損益分岐点売上高は40万円になります。目標利益を10万円とすると、必要売上高は60万円です。催事でも同じ考え方で、「最低でもここまでは売りたい」という下限の数字を出せます。

手順4:客数と客単価から、見込める売上を積み上げる

次に、見込める売上を下から積み上げます。考え方は次のとおりです。

  • 見込める売上 = 客数 × 客単価
  • 客数 = ブースの前を通る人の数 × 立ち寄る割合 × 買う割合
  • 客単価 = 1人あたりの買い上げ点数 × 商品の平均単価

前を通る人の数は、会場が来館者数などの資料を持っていれば、それを参考にします。資料がない場合は、下見のときに時間を決めて、前を通る人を数えておく方法があります。立ち寄る割合や買う割合は、商品や売り方で大きく変わります。過去の催事の記録があればそれを使い、なければ控えめな値で置いておき、初日の結果を見て直します。

手順5:下限と見込みを比べて、目標を決める

手順3の「必要な売上」と、手順4の「見込める売上」を比べます。見込みが必要な売上を上回っていれば、その間に目標を置きます。見込みが下回る場合は、そのまま目標を高く置くのではなく、どの数字を変えれば届くのかを考えます。例えば、セット商品で買い上げ点数を増やす、試食で立ち寄る割合を上げる、費用を見直す、期間や区画の大きさを変える、といった方法です。それでも届かない場合は、出店そのものを見直す判断の材料にもなります。

手順6:日ごと・時間帯ごとに分ける

期間全体の目標が決まったら、日ごと、さらに時間帯ごとに分けます。週末と平日、昼と夕方では人の流れが違うため、均等に割るより、会場の混み方の傾向に合わせて配分します。日ごとの目標があると、初日の夕方の時点で遅れているのか、予定どおりなのかを確かめられます。時間帯ごとの目標は、休憩や補充の時間を決めるときにも役立ちます。

フリップボードを囲む振り返りの打ち合わせ

終わったあとの振り返りは、どう進める?

振り返りの目的は、反省会をすることではなく、次の催事で変えることを決めることです。J-Net21 では、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)をくり返す PDCA サイクルについて、「計画どおりに実行できたか」の確認と、「実行した中身がよかったか」の評価を分けて考えることが勧められています。催事の振り返りでも、この二つを分けると話が整理しやすくなります。

当日のうちに記録しておくこと

  • 日ごと・時間帯ごとの売上、客数、客単価
  • 商品ごとの販売数と、欠品していた時間
  • 立ち寄り数や試食・体験の数(数えている場合)
  • 天候、会場の混み方、近くで開かれていた催しなど、外の条件
  • お客様からよく聞かれた質問や、買わなかった理由として聞こえた声
  • スタッフが気づいたこと(混んだ時間、動きにくかった場所など)

記録は、その日のうちに短くまとめておくと、あとで思い出す手間が減ります。日報の書き方はコラム「販売の日報と報告書の書き方」も参考にしてください。

目標と実績の差を分けて見る

実績が目標に届かなかったときは、差を「客数の差」と「客単価の差」に分けます。客数が足りなかった場合は、前を通る人が少なかったのか、立ち寄る人が少なかったのか、立ち寄った人が買わなかったのかを確かめます。客単価が低かった場合は、買い上げ点数が少なかったのか、安い商品に売れ方が偏ったのかを見ます。目標を上回ったときも、何が効いたのかを同じように分けておくと、次の催事でくり返せます。

次の催事への申し送りを作る

振り返りの最後に、「続けること」「やめること」「次に試すこと」を数行ずつにまとめます。あわせて、次の目標を立てるときに使う数字(立ち寄る割合、買う割合、客単価、時間帯ごとの売上の比率)を一つの表に残しておくと、次の計画が立てやすくなります。催事全体の効果の測り方は、コラム「販促イベントの効果の測り方」で紹介しています。

色分けしたグラフの資料を見比べる手元

目標の立て方と、追いかける数字を比べると?

目標の立て方には、いくつかの考え方があります。一つに決める必要はなく、組み合わせて使うと数字の根拠が説明しやすくなります。

方法 考え方 向いている場面 気をつける点
費用から逆算する 損益分岐点売上高や必要売上高から、下限を決める 出店料や人件費が大きい催事、初めての会場 見込みとは関係なく決まるため、届くかどうかは別に確かめる
客数と客単価から積み上げる 前を通る人の数、立ち寄る割合、買う割合、客単価をかけ合わせる 当日の行動の目標まで落としたいとき 割合の置き方で結果が大きく動くため、根拠を書き残す
過去の実績をもとにする 同じ会場や似た催事の実績に、変わった条件を足し引きする 同じ会場に何度も出店しているとき 季節、曜日、天候、区画の位置の違いを補正する
商品ごとに積み上げる 商品ごとの販売数の見込みに単価をかけて合計する 品目が少なく、売れ筋がはっきりしているとき 在庫の量と合わせて考え、欠品する時間を見込む

あわせて、期間中に追いかける数字も整理しておきます。売上だけでなく、途中で確かめられる数字を持っておくと、当日の打ち手を選びやすくなります。

数字 わかること 当日の打ち手の例
立ち寄り数 ブースが目に留まっているか 声かけの言葉や立つ位置、POP の向きを変える
購入率(買った人 ÷ 立ち寄った人) 説明や提案が伝わっているか 説明の順番を変える、試せる商品を増やす
客単価 1人あたりの買い上げが伸びているか 組み合わせの提案、セット商品の案内
粗利 売上が利益につながっているか 値引きの幅や対象を見直す

店頭販売の目標と指標の決め方は、コラム「店頭販売の目標と KPI の決め方」でも紹介しています。

電卓と数字の資料を確かめる手元

注意点と、よくある失敗は?

注意点

  • 税込か税抜かをそろえる:目標と実績で税込と税抜が混ざると、差を正しく比べられません。会場への報告の形にも合わせます。
  • 売上と利益を分けて考える:値引きや大きな特典で売上が増えても、粗利が減っていることがあります。
  • 会場の数え方を確かめる:会場のレジで売上を管理する催事では、締めの時刻や返品の扱いが自社と違うことがあります。
  • 根拠を書き残す:割合や見込みの数字をどう置いたかを残しておくと、振り返りで「見込みが外れたのか、実行が足りなかったのか」を分けられます。
  • 目標を変えるときは理由を残す:期間の途中で目標を見直すのは問題ありませんが、何を見て変えたのかを記録しておきます。

よくある失敗

  • 前回の実績に一定の割合を足しただけで決める:会場や季節が変わると、前回の数字がそのまま使えないことがあります。
  • 期間全体の目標しかない:最終日に届かないとわかっても、打てる手が残っていません。
  • 目標が高すぎて、途中であきらめてしまう:届く見込みのない目標は、スタッフの動きを支えにくくなります。下限と見込みを分けて示すと、納得を得やすくなります。
  • 記録が残っていない:時間帯ごとの売上や欠品の時間が残っていないと、差の理由を確かめられません。
  • 差の理由を人のせいにする:「声かけが足りなかった」だけで終えると、次に変えることが決まりません。数字と外の条件を先に確かめます。
グラフの資料に書き込みをする手元

売上目標と振り返りのチェックリスト

準備から振り返りまでに確かめたい点を、段階ごとにまとめました。

目標を立てるとき

  • 催事の目的を一つか二つに絞り、関係者で共有したか
  • 費用を変動費と固定費に分けて書き出したか
  • 損益分岐点売上高と、目標利益を出すための必要売上高を計算したか
  • 客数と客単価から、見込める売上を積み上げたか
  • 下限と見込みを比べ、届かない場合の打ち手を考えたか
  • 日ごと・時間帯ごとの目標に分けたか
  • 目標の数字から、在庫の量と人の数を決めたか

期間中

  • 時間帯ごとに売上と客数を記録しているか
  • 日ごとの目標と比べ、遅れている理由を確かめたか
  • 欠品や混雑の時間を書き残したか

終わったあと

  • 目標と実績の差を、客数と客単価に分けて確かめたか
  • 外の条件(天候、混み方、近くの催し)を記録したか
  • 続けること・やめること・次に試すことを決めたか
  • 次の目標づくりに使う数字を表に残したか

よくある質問

初めての会場で、過去の実績がないときはどうすればよいですか?

まず費用から必要な売上を計算し、下限を決めます。そのうえで、下見で前を通る人を数える、会場に来館者の傾向を聞く、似た商品の催事の様子を見る、などの方法で見込みを立てます。割合は控えめに置き、初日の結果を見て日ごとの目標を見直すと、無理のない計画になります。

目標は、スタッフにどこまで伝えればよいですか?

期間全体の金額だけでなく、その日の目標と、追いかける数字(立ち寄り数や客単価など)を伝えると、行動に移しやすくなります。数字の根拠も短く添えると、目標に納得してもらいやすくなります。

目標に届かなかった日は、翌日の目標を上げるべきですか?

足りない分をそのまま翌日に上乗せすると、届きにくい目標になることがあります。まず届かなかった理由を確かめ、翌日に変えられること(声かけ、陳列、時間帯ごとの人の配置など)を決めてから、期間全体の見込みを見直します。

振り返りは、いつ行うのがよいですか?

記憶が新しいうちに行うのが基本です。毎日の終わりに短く確かめ、催事が終わったあとに全体をまとめる、という二段階にすると、細かな気づきを残しやすくなります。

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