催事・物産展・ポップアップストア・マルシェの違いは?言葉の意味と使い分け

催事・物産展・ポップアップストア・マルシェは、どれも期間を区切って品物を売ったり見せたりする場です。ただし、言葉が指す範囲は違います。「催事」は、百貨店やショッピングモールなどで開く特別な催しを広く指す言葉です。物産展は催事の一つの形で、ある土地の名産品を集めて売ります。ポップアップストアは、短い期間だけ開く「店」を指します。マルシェはフランス語で「市場」の意味で、日本では生産者や作り手が自分で品物を売る「市」を指すことが多い言葉です。この記事では、4つの言葉の意味を表で比べ、言葉にまつわる雑学と、目的ごとの選び方をまとめます。あわせて、形ごとの準備や手続きの違いと、選ぶときによくある失敗も紹介します。

店に並んだスニーカー

4つの言葉は、それぞれ何を指す?

4つの言葉には、はっきり決まった使い分けがあるわけではありません。ここでは、辞書の説明と、一般的な使われ方をもとに整理します。

催事(さいじ)

「催事」は「さいじ」と読みます。辞書では「特別な催しごと。展示会・特売会など」(デジタル大辞泉)、「百貨店などで行なう特別のもよおし」(精選版 日本国語大辞典)と説明されています。催事を開く場所は「催事場」と呼ばれ、百貨店の売り場の案内でも見かける言葉です。

ショッピングモールでは、通路や広場の一角を期間を区切って借りて開く出店も、催事と呼ぶことが多くあります。売るものは、食品、衣料、雑貨、サービスの案内などさまざまです。催事は、場所や売り方の種類を指すというより、「ふだんの売り場とは別に、特別に開く催し」全体を指す広い言葉だと考えると整理しやすくなります。

物産展

物産展は、辞書では「ある土地の名産品や工芸品などを展示・販売する催し物」(デジタル大辞泉)と説明されています。「北海道物産展」のように、地域の名前を付けて開くのが一般的です。

特徴は、地域でくくって、いくつもの店や作り手の品を一つの会場に集めることです。百貨店の催事場で開かれるもののほか、ショッピングモールの広場などで開かれるものもあります。物産展は、催事の中の一つの型と言えます。出店する側の準備は、コラム「物産展に出店するときの準備」で紹介しています。

ポップアップストア

ポップアップストアは、辞書では「ある場所で数日から数十日の間だけ開かれる、短期間営業の店」(デジタル大辞泉)と説明され、ポップアップショップとも呼ばれます。英語の「ポップアップ(pop-up)」には「ひょっこり現れる」という意味があります(日本大百科全書)。

開く場所は、空き店舗、商業施設の区画、店の一角などです。一つのブランドや会社が、自分の店として期間を区切って開く形が多く見られます。売り場の飾りつけや品ぞろえを、そのブランドの考え方でまとめやすいことが特徴です。開くまでの流れは、コラム「ポップアップストアの開き方」で紹介しています。

マルシェ

マルシェ(marché)は、フランス語で「市場」のことです。辞書でも「市。市場」(デジタル大辞泉)と説明されています。農林水産省の広報誌では、地域で採れた農作物などを持ち寄って売ることを「マルシェ」と呼ぶことが広まり、全国各地で開かれるようになったと紹介されています。

会場は、公園、駅前の広場、商店街、施設の広場などです。たくさんの出店者がテントや机を並べ、作った人が自分で説明しながら売る形が多く見られます。野菜や果物のほか、手作りの加工品や雑貨が並ぶこともあります。

買い物客でにぎわう屋内の市場

期間・場所・運営する人・出店のしかたは、どう違う?

4つの言葉の一般的な使われ方を、表にまとめました。実際の呼び方は、主催する人や会場によって変わります。

項目 催事 物産展 ポップアップストア マルシェ
期間 会場が決めた期間に区切って開く 期間を区切って開く 短い期間だけ開く 1日だけの開催や、決まった曜日にくり返し開くものがある
主な場所 百貨店の催事場、モールの通路や広場、店頭 百貨店の催事場、モールの広場など 空き店舗、商業施設の区画、店の一角 公園、駅前の広場、商店街、施設の広場
運営する人 会場の施設、または施設と取り決めをして出店する会社 会場の施設が企画し、地域の店や団体が出店する形が多い 出店するブランドや会社 地域の団体、商店街、施設などの主催者
出店のしかた 区画を期間で借りる、または会場の企画に加わる 主催者が地域ごとに店を集め、一つの会場に並べる 一つのブランドが単独で店を開くことが多い 多くの出店者がテントや机を並べ、対面で売る
主に並ぶもの 食品、衣料、雑貨、サービスの案内など幅広い その土地の名産品、食品、工芸品 そのブランドの商品、新商品、限定品 野菜や果物、加工品、手作りの品
主に来る人 買い物の途中で通りかかる人 その土地の味や品に関心のある人 そのブランドを知っている人や、告知を見て来る人 近くに住む人や、散歩や休日の外出のついでに寄る人

表のとおり、「催事」はほかの3つより広い言葉です。物産展は催事の一つです。また、百貨店やモールが、館内で開くポップアップストアやマルシェを「催事」として扱うこともあります。同じ出店でも、会場の側から見るか、出店する側から見るかで呼び名が変わる、と考えると混乱しにくくなります。

来る人の違いは、売り方にも関わります。通りかかる人が多い催事では、短い言葉で何のブースかを伝える工夫が要ります。目当てに来る人が多い物産展やポップアップストアでは、品ぞろえや限定品の案内が大切になります。

金沢の市場に並ぶ鮮魚

言葉と歴史の雑学

「催事」と「祭事」は同じ読み

「催事」と「祭事」は、どちらも「さいじ」と読みます。意味は違い、祭事は「祭りの行事。神事」(デジタル大辞泉)を指します。パソコンやスマートフォンで「さいじじょう」と打つと、変換の候補に別の字が出ることがあります。チラシや案内の文を作るときは、「催事場」の字を確かめておくと安心です。

「物産」「名産」「特産」は、少しずつ意味が違う

物産展の「物産」は、辞書では「その土地から産出する品物。産物」(デジタル大辞泉)と説明されています。似た言葉の「名産」は「その土地の名高い産物」、「特産」は「特にその土地や地方で産出すること。また、その産物」です(いずれもデジタル大辞泉)。

「物産」はその土地で採れる物や作られる物を広く指し、「名産」は名が知られていること、「特産」はその土地ならではであることに目を向けた言葉だと言えます。案内の文で「名産品」と書くときは、本当に名の知られた品かどうかを考えて言葉を選ぶと、誇張に見えにくくなります。

各地の物を集めて見せる会は、江戸時代にもあった

国立国会図書館の資料の年表によると、1757年(宝暦7年)に、田村藍水が江戸の湯島で「日本最初の薬品会」を開きました。門下の平賀源内の提案によるものと伝えられています。薬品会は物産会とも呼ばれ、源内はこうした会を師の藍水と協力して開きました。

今の物産展とは、成り立ちも目的も同じではありません。それでも、各地の物を一つの場所に集めて見せるという点では、通じるところがあります。

国の事業にもなった「マルシェ」

農林水産省は2009年度(平成21年度)に、「仮設型直売システム普及事業(マルシェ・ジャポン・プロジェクト)」を行いました。大都市の中心部に、テントなどの仮設の設備で直売の場(マルシェ)を開き、生産者が都市の消費者に、自ら生産した農林水産物を対面で直接売る取り組みを支える事業です。国の支援はこの年度限りで終わりましたが、翌年度も事業者が自ら運営を続けたマルシェがあったと、同省の資料に記されています。

大きな案内のあるショッピングセンター

目的ごとに、どの形が向いている?

どの形を選ぶかは、言葉の違いより「誰に、何を伝えたいか」で考えると決めやすくなります。一般的な目安を表にまとめます。

目的 向いている形 理由
まだ知らない人に商品を知ってもらい、試してもらう モールなどの催事 買い物に来た多くの人が行き交う場所で、声をかけて説明できる
地域の名産をまとめて売り、産地を知ってもらう 物産展 地域の名前でくくるため、その土地に興味がある人が集まりやすい
ブランドの考え方を見せる、新商品や限定品を出す ポップアップストア 自分の店として、飾りつけや品ぞろえを決めやすい
作り手と買い手が直接話し、地域のにぎわいをつくる マルシェ 作った人が対面で説明しながら売る形が多い

ネット通販で売っている商品を、実際に手に取ってもらう場として、ポップアップストアを開く例もあります。単独の店を構えるほどの準備が難しいときは、モールの催事の区画から始める方法もあります。期間、費用、準備の量は形によって違うため、目的と予算を先に決めてから会場を探すと、比べやすくなります。

一つの形に決めず、順に組み合わせる考え方もあります。たとえば、催事でお客様の反応を確かめてから、反応のよかった地域でポップアップストアを開く、という進め方です。季節の行事に合わせて形を選ぶ考え方は、コラム「季節ごとの販促イベントのアイデア」で紹介しています。

ショッピングモールの催事に出店するときの準備の進め方は、コラム「ショッピングモール催事の出店から撤収までの流れ」で紹介しています。

ノートにメモを書いている手元

案内文や社内資料で、呼び方に迷ったときは?

同じ出店でも、関わる人によって呼び方が違うと、話が食い違うことがあります。次の点を決めておくと、やり取りが進めやすくなります。

  • 会場の呼び方に合わせる:申込書や会場との連絡では、会場が使っている呼び名にそろえます。
  • 「何を・どこで・いつまで」を添える:呼び名だけでなく、扱う商品、場所、期間を一緒に書くと、誤解が減ります。
  • 来る人に伝わる言い方を添える:チラシやSNSでは、「催事」という言葉だけでなく、「期間限定ショップ」「◯日まで」のように、何をいつまでできるのかが伝わる言い方を添えます。
  • 物産展は地域の名前を入れる:どこの名産が集まるのかが、名前だけで伝わります。
  • マルシェは出店者がわかるようにする:生産者が並ぶのか、手作りの品が中心なのかを書くと、来る人が楽しみ方を思い浮かべやすくなります。

告知の進め方は、コラム「催事の事前告知の方法」で紹介しています。

果物や野菜を並べた屋外の売場

準備と手続きは、形によってどう違う?

形が違うと、申し込む先や用意する物も変わります。一般的な違いを表にまとめました。実際の条件は、会場や主催者の募集の要項で確かめます。

項目 催事 物産展 ポップアップストア マルシェ
申し込む先 会場の施設の窓口 物産展を企画する施設や団体 区画や空き店舗を貸す施設や持ち主 マルシェの主催者
主に用意する物 ブースの造作、什器、販促物 商品と陳列の道具 内装、什器、看板、会計の道具など店としての一式 テント、机、いす、値札など
会場 屋内が多い 屋内が多い 屋内が多い 屋外が多い

形にかかわらず、売る物や使う道具によっては、法令や条例の決まりがあります。

  • 食品を売る、試食を出す:売り方によって、保健所への許可や届出が要ることがあります。イベントでの臨時の出店にも決まりがあり、扱いは地域によって違います。
  • 火や熱を出す器具を使う:たとえば金沢市火災予防条例では、祭礼や展示会など多くの人が集まる催しで、こんろなど火を使う器具や、ホットプレートなど電気で熱を出す器具を使うときは、消火器を用意したうえで使うよう定めています(第18条など)。こうした器具を使う露店などを開くときは、あらかじめ消防長または消防署長へ届け出ることになっています(第45条。2026年11月時点)。
  • 屋外に看板やのぼり旗を出す:自治体の屋外広告物条例の対象になることがあります。

詳しくは、会場のある地域の保健所や消防署など、所管の窓口にご確認ください。販促物の決まりは、コラム「のぼり旗・POP・ノベルティの選び方と置き方」でも紹介しています。

日よけの下に野菜や鉢植えを並べた売場

形を選ぶときに、よくある失敗は?

形を選ぶ段階で起きやすい失敗と、防ぎ方をまとめます。

  • 呼び名の印象で選ぶ:「ポップアップストアの方が新しく見える」といった印象ではなく、目的と、来てほしい人から選びます。
  • 来る人の層を確かめない:会場によって、来る人の年代や目的が違います。下見をするか、会場の担当者に聞いておきます。
  • 準備の量を少なく見積もる:ポップアップストアは店としての一式が要ります。屋外のマルシェでは、テントや重りなどの備えも要ります。
  • 天気への備えがない:屋外の会場では、雨や風、暑さと寒さへの備えを考えます。備え方は「催事の天候と季節の影響への備え」で紹介しています。
  • 募集の要項を読まずに準備を進める:出店できる品や、出店者の条件が決まっていることがあります。

選ぶ前に、目的、来てほしい人、期間、予算、売る物の決まりの5つを書き出して見比べると、迷いにくくなります。

よくある質問

「催事」は何と読みますか?

「さいじ」と読みます。同じ読みの「祭事」は、祭りの行事や神事を指す別の言葉です。

モールの区画に期間限定で店を出すときは、ポップアップストアと呼んでよいですか?

はっきりした決まりはありません。一つのブランドが自分の店として短い期間だけ開く場合は、ポップアップストアと呼ばれることが多くあります。会場の側は同じ出店を「催事」と呼ぶこともあるため、会場とのやり取りでは会場の呼び方に合わせると混乱が少なくなります。

マルシェには、誰でも出店できますか?

出店の条件や手続きは、主催者ごとに決まっています。生産者や作り手に限る場合や、扱う品物の種類を決めている場合もあるため、募集の要項を確かめてから申し込みます。

物産展は、百貨店でしか開かれませんか?

百貨店の催事場で開かれるもののほか、ショッピングモールの広場など、ほかの施設で開かれるものもあります。会場の広さや客層によって、集める店の数や品ぞろえが変わります。

催事やマルシェで食品を売るときは、何を確かめればよいですか?

主催者や会場の決まりと、保健所への許可や届出が要るかどうかを確かめます。扱いは地域や売り方によって違うため、会場のある地域の保健所に早めに相談します。試食の進め方は「試食・試飲の進め方と衛生の注意点」で紹介しています。

催事・イベントの企画から運営までのご相談は、株式会社スカイウォークスの催事・イベントの企画・運営のページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからお寄せください。

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