催事の在庫の持ち方と補充のコツ|持ち込む量と置き場所の決め方

催事の在庫は、「売上目標から品目ごとの持ち込み量を出す」「売場・ブース裏・予備の置き場の3か所に分けて持つ」「補充の合図と担当を決めておく」の3つで考えると管理しやすくなります。催事は期間が限られ、置き場所も狭いため、店舗と同じ感覚で多めに持ち込むと、置き場に困り、売れ残りを持ち帰る手間も増えます。少なすぎると、売れる時間帯に品切れを起こして売る機会を逃します。この記事では、催事を担当する方に向けて、持ち込む量の決め方、置き場所と補充の流れ、注意点、よくある失敗とチェックリストをまとめます。

倉庫に積み上げた段ボール箱

催事の在庫は、店舗の在庫と何が違う?

催事の在庫管理も、基本は店舗と同じです。どこに何がいくつあるかを分かるようにし、入ってきた数と出ていった数を記録します。そのうえで、催事ならではの条件があります。

比べる点 店舗 催事
期間 続けて営業する 期間が限られている
置き場所 バックヤードや倉庫を使える ブースの中と、施設の決まりで使える場所に限られる
追加の取り寄せ 決まった流れで入荷する 会社や倉庫から運ぶ時間と人が要る
売れ残り 次の日以降も同じ売場で売れる 終了後に持ち帰るか、別の場所に移す
搬入と搬出 決まった経路と時間がある 施設の搬入の時間と経路の決まりに合わせる

店舗の在庫管理の基本は店の在庫管理の基本で紹介しています。ここでは催事に絞って考えます。

在庫は多すぎても少なすぎても困る

中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21は、在庫を持つことには、品切れを防ぐ、急に需要が増えても対応できる、といったメリットがある一方で、持ちすぎると、値下げや廃棄による収益の悪化、品質の劣化や流行遅れによる価値の低下、保管の場所と手間、資金繰りの圧迫といった悪い影響もあると説明しています。催事では、これに「持ち込みと持ち帰りの運搬の手間」が加わります。

番号付きの箱が並ぶ収納棚

持ち込む量はどう決める?手順と考え方

持ち込む量は、次の順で決めます。

  1. 催事の売上目標を決める
  2. 売上目標を、品目ごとの販売数の見込みに分ける
  3. 前回の催事や店舗の販売記録から、品目ごとの売れ方を確かめる
  4. 見込みの販売数に、品切れを防ぐための上乗せを決める
  5. 追加の取り寄せにかかる時間を確かめ、初日に持ち込む量と、途中で追加する量に分ける
  6. 置き場所に入る量か、施設の搬入の決まりに合うかを確かめる
  7. 終了後の売れ残りの扱い(持ち帰る、別の店舗へ移すなど)を決める

売上目標の立て方は、催事の売上目標の立て方と振り返り方で紹介しています。

売上目標を品目ごとの数に直す

売上目標は金額で立てることが多いため、在庫の量を決めるには、品目ごとの個数に直します。前回の催事や店舗の記録から、品目ごとに売上全体のどれくらいを占めたか(構成比)を出し、売上目標に掛けて品目ごとの売上の見込みにします。それを品目の単価で割ると、販売数の見込みになります。日数がある催事では、さらに日ごとに分けます。週末と平日など、曜日で売れ方が違う場合は、前回の記録をもとに日ごとの配分を変えます。

品目を役割で分ける

すべての品目を同じ考え方で持ち込むと、量の判断が難しくなります。品目の役割を分けると、上乗せの量を決めやすくなります。

分け方 どんな品目か 持ち込み方の考え方
主力 催事で一番売りたい品目、売れる見込みが高い品目 品切れすると売上への影響が大きい。上乗せを多めにし、途中で追加できるようにする
定番 安定して売れる品目 前回の記録をもとに、見込みに近い量を持つ
試し 新商品や、反応を見たい品目 少なめに持ち、売れ方を記録する。次回の判断の材料にする
見本 陳列や体験に使う品目 販売用とは別に数え、汚れや傷みに備える

追加の取り寄せにかかる時間を確かめる

途中で追加できるかどうかで、初日に持ち込む量が変わります。会社や倉庫から運ぶのにかかる時間、施設の搬入の時間帯、運ぶ人と車を確かめます。追加が難しい催事では、初日の持ち込みを多めにし、そのぶんの置き場所を確保します。追加が当日中にできるなら、初日は少なめにして置き場所を空けておけます。

前回の記録がないときは

初めての催事で記録がない場合は、似た催事や店舗の販売記録を参考にします。期間が複数日あるなら、1日目の売れ方を見て、2日目以降の追加の量を決める方法もあります。そのために、1日目の終わりに品目ごとの販売数と残りの数を数えておきます。

箱を運んで棚の間を歩く作業員

置き場所と補充の流れはどう決める?

在庫は3か所に分けて持つ

置き場所 置くもの 気をつけること
売場(陳列) すぐに売る分 見やすさを保てる量だけ並べる。詰めすぎると選びにくくなる
ブース裏のストック その日の補充に使う分 お客様から見えないようにし、品目ごとに置く場所を決める
予備の置き場(施設が貸す保管場所など) 翌日以降の分、主力の予備 取りに行く時間と人を決めておく。使えるかどうかは施設の決まりを確かめる

J-Net21の回答では、在庫管理の基本は整理・整頓で、どの品目がどこにあるかを誰にでも分かるように決めておくことが大切だとしています。ブース裏の箱にも品目名を書き、同じ品目は同じ場所に置きます。置き場所を図にしておくと、交代で入ったスタッフも迷わずに補充できます。

補充の合図を決める

補充は、「売場の数がここまで減ったら補充する」という合図を品目ごとに決めておくと、忙しい時間帯でも迷わずに動けます。合図の決め方の例です。

  • 陳列の棚や箱に、補充を始める位置の印を付ける
  • ブース裏の最後の1箱を開けたら、予備の置き場から運ぶ
  • 主力の品目は、決まった時間ごとに残りを数える

補充の担当を時間帯ごとに決めておくと、全員が接客中で誰も補充に行けない状態を防げます。人数とシフトの考え方は催事スタッフの人数の考え方とシフトの組み方で紹介しています。

補充は混む前に済ませる

混む時間帯の最中に補充をすると、接客の手が止まり、通路にも箱が出ます。前回の記録などから混む時間帯が分かっている場合は、その前に売場とブース裏を満たしておきます。開店前と、交代の時間にも補充をすると、売場を整えた状態で引き継げます。

搬入と搬出の段取りを決める

在庫の出し入れは、施設の搬入の時間と経路に合わせます。搬入口の場所、台車を使えるか、荷物用のエレベーターの使い方、車を止められる場所と時間を事前に確かめます。箱には品目名と数を書いておくと、搬入したときにそのまま置き場所へ運べます。搬出のときは、残りの数を数えてから箱に詰め、どの箱に何がいくつ入っているかを記録します。出店から撤収までの全体の流れは、ショッピングモール催事の出店から撤収までの流れで紹介しています。

先に入れたものから先に出す

賞味期限や製造日がある商品は、先に入れたもの(期限の近いもの)から先に売場に出します。補充のときに新しい物を手前に置くと、古い物が奥に残ります。残っている物を手前に寄せてから、新しい物を後ろに入れます。

台車を使って棚を整える作業員

在庫を扱うときの注意点は?

通路や避難口に在庫を置かない

消防法第8条の2の4は、百貨店などの建物の管理について権原を持つ人に、廊下や階段、避難口など避難に必要な場所に、避難の妨げになる物が置かれないように管理することを求めています。ブースの外の通路や非常口の前に段ボールを置かないようにします。ブースの区画からはみ出して物を置いてよいかどうかも、施設の決まりで確かめます。

食品は期限と温度を確かめる

食品表示基準では、消費期限を「定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限」、賞味期限を「期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限」としています。どちらも、定められた方法で保存することが前提です。冷蔵が必要な商品は、ブース裏でも冷蔵できる量だけを持ち、厚生労働省が目安とする「冷蔵庫は10℃以下」を保てるようにします。

熱に弱い商品の置き場所に気をつける

ブース裏が照明や機器の近くにあると、温度が上がることがあります。食品のほか、チョコレートや化粧品など熱に弱い商品は、熱を出す機器や日の当たる場所から離して置きます。

紛失を防ぐ置き方にする

ブース裏の在庫は、通路から手の届かない場所に置き、スタッフが見ていられる位置にまとめます。高い商品や小さな商品は、陳列する数を絞り、残りはブース裏で保管します。閉店後に在庫を置いたままにする場合は、施設の決まりに沿って覆いをかけるなどの対応をします。

数を数えて記録を残す

開店前と閉店後に、品目ごとの数を数えて記録します。J-Net21は、実地棚卸しの目的として、在庫の正確な数量をつかむことと、帳簿上の数量を実際の数量に合わせることを挙げています。催事でも、売れた数(売上の記録)と減った数(数えた結果)が合わないときは、数え間違い、陳列中の破損、見本への流用などがないかを確かめます。記録の書き方は販売の日報と報告書の書き方も参考にしてください。

箱や資材が置かれた広い保管場所

在庫と補充でよくある失敗は?

  • 主力の品目が初日の早い時間に売り切れる:追加にかかる時間を確かめていないと、その日の残りの時間を品切れのまま過ごすことになります。
  • 全品目を同じように多めに持ち込む:置き場所があふれ、ブース裏で探し物が増えます。売れ残りの持ち帰りも重くなります。
  • ブース裏のどこに何があるか分からない:補充に時間がかかり、新しいスタッフは探せません。箱に品目名を書き、置き場所を図にしておきます。
  • 混む時間帯に補充をする:接客が止まり、通路に箱が出ます。
  • 追加の連絡が遅れる:残りが少なくなってから会社や倉庫に連絡すると、運ぶ準備が間に合いません。追加を頼む目安の数も、補充の合図と一緒に決めておきます。
  • ブース裏の段ボールが通路から見える:売場が雑然として見えます。布やパネルで隠し、お客様の目に入らないようにします。
  • 見本と販売用を分けていない:見本を販売用の数に入れると、最後に数が合わなくなります。
  • 閉店後に数を数えない:翌日の追加の量が決められず、次回の催事の記録としても使えません。
  • 売れ残りを最終日に値下げだけで減らそうとする:J-Net21は、値下げだけに頼った在庫の処分は「安売りの店」という印象を与えるおそれがあるとしています。値下げをするときの価格の表示は、催事の価格表示で気をつけることも確かめてください。
箱の前で荷物を確かめる作業員

催事の在庫と補充のチェックリスト

  • 売上目標から、品目ごとの販売数の見込みを出した
  • 品目を主力・定番・試し・見本に分けた
  • 追加の取り寄せにかかる時間と、運ぶ人と車を確かめた
  • 初日に持ち込む量と、途中で追加する量を分けた
  • 施設の搬入と搬出の時間と経路、予備の置き場所を確かめた
  • 売場・ブース裏・予備の置き場ごとに、置く品目と量を決めた
  • 箱に品目名を書き、ブース裏の置き場所を図にした
  • 品目ごとに補充の合図と、補充の担当を決めた
  • 期限のある商品は、先に入れたものから出す決まりを伝えた
  • 冷蔵が必要な商品の保管方法を決めた
  • 通路や非常口の前に在庫を置かない配置にした
  • 開店前と閉店後に数を数える方法と、記録の場所を決めた
  • 終了後の売れ残りの扱いを決めた

よくある質問

在庫は、見込みの販売数よりどれくらい多く持てばよいですか?

決まった割合はなく、品目の役割と追加のしやすさで変わります。途中で追加できない主力の品目は多めに、追加しやすい品目や試しの品目は少なめにします。催事が終わったら、品目ごとの残りの数を記録し、次回の上乗せの量を見直します。

期間中に在庫が足りなくなったら、どうすればよいですか?

まず、予備の置き場と会社・倉庫に残りがあるかを確かめ、運べる時間を確認します。追加が間に合わない場合は、取り寄せや予約を受けるかを決め、お客様には届く時期を正確に伝えます。約束した内容は記録し、スタッフの間で申し送ります。

売れ残った在庫は、どうすればよいですか?

持ち帰る、別の店舗や次の催事に回すなど、終了後の扱いを事前に決めておきます。期限のある食品は、次に売る時期までに期限が来ないかを確かめます。J-Net21は、入荷してからの期間に合わせて、在庫を処分する基準を段階的に決めておく方法を紹介しています。

補充で出た段ボールや空き箱は、どうすればよいですか?

ごみの出し方は施設ごとに決まりがあるため、出店前に、段ボールを出せる場所と時間を確かめます。ブース裏に空き箱をためると、在庫の置き場所が狭くなり、通路にはみ出す原因にもなります。撤収で使う分だけをたたんで残し、ほかは決まりに沿ってこまめに片付けます。

在庫の数は、いつ数えればよいですか?

開店前と閉店後に数えると、その日に売れた数と残りの数が分かります。期間が長い催事では、主力の品目だけ営業中にも決まった時間に数えると、補充や追加の判断が早くなります。

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