店舗の在庫管理の基本|適正在庫・発注・棚卸しの考え方

店舗の在庫管理の基本は、何がいくつあるかを正しくつかみ、売れ方に合わせて発注し、決まった時期に棚卸しで実物と記録を確かめることです。在庫が少なすぎると品切れで売り逃しが起き、多すぎると売れ残りやお金の負担が増えます。その間のちょうどよい量を保つことが、在庫管理の目的です。この記事では、在庫管理の考え方、基本の流れ、棚卸しの進め方、発注の方式と管理の道具の比べ方、注意点とよくある失敗、チェックリストをまとめます。

棚の商品を確かめる店主

在庫管理とは?なぜ大切なのですか?

在庫管理は、店にある商品の数と金額を把握し、ちょうどよい量に保つための仕事です。中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21は、在庫管理では、品切れを防ぐことと、在庫を持ちすぎないことの釣り合いが大切だと説明しています。

また、販売と仕入れの管理について、「5つの適正」として、適正な商品を、適正な場所に、適正な時期に、適正な数量で、適正な価格で用意することを挙げています。在庫管理は、このうち「時期」と「数量」を支える仕組みです。

在庫が多すぎると、何が起きますか?

J-Net21は、在庫にかかる費用として、次のようなものを挙げています。

  • 仕入れの代金(売れ残ると、お金が商品のまま動かなくなる)
  • 保管の費用(倉庫や売場の場所をとる)
  • 破損や目減りによる損
  • 借りたお金の利息
  • 商品や倉庫の保険料
  • 運んだり移したりする手間
  • 返品にかかる手間と運賃

在庫は、売れるまではお金が形を変えて店に置かれている状態です。持ちすぎると、ほかに使えたはずのお金が減ります。

在庫が少なすぎると、何が起きますか?

目当ての商品がないと、お客様はその場で買えず、売り逃しになります。品切れが続くと、お客様がほかの店を選ぶきっかけにもなります。お客様に選ばれる店の考え方は、お客様に選ばれる店の接客と売場で説明しています。

数で見る管理と、金額で見る管理

J-Net21は、在庫の管理の方法として、商品の数で管理する「ユニットコントロール」と、金額で管理する「ダラーコントロール」を挙げています。売場では「あと何個あるか」を数で見て、店全体では「在庫にいくら使っているか」を金額で見る、というように使い分けると分かりやすくなります。

段ボールの前で記録をつける人

在庫管理は、どんな流れで進めますか?

在庫管理は、商品が入ってから売れるまでの流れを、記録でつなぐことです。次の順で仕組みをつくります。

1. 商品を登録し、数え方をそろえる

商品ごとに、品名、型、色、サイズなどを分けて登録します。同じ商品でも、色やサイズが違えば別の商品として数えます。1個ずつ数えるのか、箱で数えるのかもそろえておきます。

2. 入ってきた商品を検品する

商品が届いたら、注文した品名と数が合っているか、傷や汚れがないかを確かめてから、在庫に加えます。J-Net21も、仕入れの実務として、入るときの検品と、適切な保管を挙げています。

3. 置き場所を決める

売場と倉庫(バックヤード)のどこに何を置くかを決め、棚に表示をつけます。置き場所が決まっていると、数えるときも補充するときも迷いません。売場での並べ方は、小さな店の売場づくりの基本で説明しています。

4. 売れた数と動きを記録する

売れた数のほか、返品、破損、店の中での移動も記録します。記録が抜けると、帳簿の数と実物の数がずれていきます。

5. 発注の決まりをつくって発注する

商品の売れ方に合わせて、いつ、どれだけ発注するかの決まりをつくります。方式の違いは、後の表で説明します。発注してから商品が届くまでの日数(リードタイム)も、商品ごとに確かめておきます。

仕入れの仕方も、在庫の量に関わります。J-Net21は、仕入れの方法として、大量仕入れ、随時仕入れ、共同仕入れなどを挙げています。まとめて仕入れると1個あたりの値段を下げやすい一方で、在庫と置き場所が増えます。必要なときに少しずつ仕入れると在庫は少なくて済みますが、発注の手間が増えます。商品の売れ方と置き場所に合わせて選びましょう。

6. 棚卸しで確かめる

決まった時期に実物を数え、記録と合っているかを確かめます。進め方は次の章で説明します。

7. 売れ方を見て、量を見直す

売れ行きのよい商品と、動きの少ない商品を分けて見直します。J-Net21は、売上の構成比で商品をランク分けする「ABC分析」を使い、売上のランクより在庫のランクが高い商品を、持ちすぎの候補として見つける方法を紹介しています。季節はずれの商品、古い型の商品、ほかの商品に押されて売れなくなった商品などは、セールなどで処分すると、商品のまま動かないお金を少しでも取り戻し、この先の在庫の費用も減らせるとしています。

ちょうどよい在庫の目安

J-Net21は、1年の平均でちょうどよい在庫の額の目安を、「1年の売上の見込み÷1年の予定の商品回転率」で考える式を紹介しています。商品回転率は、一定の期間に在庫が何回入れ替わったかを表す数字です。あくまで平均の目安なので、商品ごとに季節や売れ方を考えて決めるよう説明しています。

また、発注してから届くまでの間に、思ったより早く売れる場合に備えて持つ在庫を「安全在庫」と呼び、その量を決めておくよう説明しています。売れ筋の商品ほど、安全在庫の考え方が役に立ちます。

クリップボードで在庫を数える店員

棚卸しは、いつ・どうやって行いますか?

棚卸しは、店にある商品の数を実際に数え、記録と照らし合わせる作業です。J-Net21は、棚卸しの目的として、帳簿と実物を照らし合わせること、持ちすぎている商品をつかむこと、決算の準備をすることなどを挙げています。

決算のための棚卸し

国税庁の個人事業者向けの手引き(決算のしかた・青色申告編)は、決算の前に棚卸しをする理由を、次の式で説明しています。

売上原価=年初の棚卸高+1年間の仕入高-年末の棚卸高

1年の必要経費になる売上原価は、仕入れた額そのままではなく、残っている在庫を差し引いて計算します。そのため、年末の在庫の額を調べる必要があります。手引きの主な内容は次のとおりです。

  • 棚卸しは、原則として年末(12月31日)に行う。できない場合は、その前後のできるだけ近い日に行い、12月31日の時点の額を計算する
  • 商品の種類、品質、型などの別に、数量を実際に調べる
  • 評価の方法を税務署に届け出ていれば、先入先出法、総平均法、売価還元法、低価法など、届け出た方法で計算する
  • 届け出ていない場合は、年末にいちばん近い時期に仕入れた単価に、年末の数量を掛けて計算する(最終仕入原価法)
  • 破損した商品や、売れ残って古くなった商品は、12月31日時点で処分できる額で評価してもよい
  • 棚卸表には、種類や品質、型の違うものごとに、数量と金額を書く

この手引きは、2025年10月1日現在の法令に基づいて作られています。手引きでは、青色申告の場合、棚卸表などの決算の書類は7年間保存するよう示されています(2026年11月時点)。会社(法人)の場合や、詳しい扱いは、税務署や税理士にご確認ください。

ふだんの棚卸しの進め方

  1. 日と範囲、担当を決める
  2. 前もって売場と倉庫を整理し、同じ商品を1か所にまとめる
  3. 数える人と書く人を分けるか、二人で確かめ合う
  4. 数え終えた場所に印をつけ、数え漏れと二重に数えることを防ぐ
  5. 記録の数と比べ、ずれが大きい商品は数え直す
  6. ずれの原因を調べ、次の記録や発注に生かす

決算のときだけでなく、売れ筋の商品や高い商品だけを決まった間隔で数えると、ずれに早く気づけます。

スキャナーで在庫を読み取る人

発注の方式と管理の道具は、どう選びますか?

発注の方式を比べる

J-Net21は、発注の方式として次の3つを挙げ、それぞれに向いている商品を示しています。

方式 進め方 向いている商品 気をつけたい点
定量発注 在庫が決めた量まで減ったら、決めた量を発注する 売れ筋など、出入りの多い商品 発注する目安の量を、売れ方に合わせて見直す
定期発注 決めた日ごとに、次の発注日までに要る量を決めて発注する 量があまり出ない買回り品や、在庫の費用が小さい商品 次の発注日まで品切れしない量を見込む。売れ方の変化を見る
都度発注 必要なときに、必要な量だけ発注する 売れ行きが読みにくい高い商品など、在庫を持ちたくない商品 届くまでの日数を、お客様に伝える

J-Net21は、定期発注は在庫の管理にあまり手間がかからない方式だとしています。どの方式でも、発注してから届くまでの日数を確かめておきましょう。

管理の道具を比べる

在庫を記録する道具には、次のようなものがあります。特定の製品ではなく、道具の種類ごとの一般的な違いです。

道具 よいところ 気をつけたい点 向いている店
紙の台帳 すぐに始められる。費用が少ない 書き写しの手間と間違いが出やすい。集計しにくい 商品の数が少ない店
表計算ソフト 集計や並べ替えができる 入力を忘れると数がずれる。ファイルの管理が要る 商品の数がそれほど多くない店
POSレジ 売れた数が、会計のときに記録される 入荷や返品も入力しないとずれる。入れる費用がかかる 毎日の会計の数が多い店
在庫管理のシステム 発注や、いくつもの店の在庫をまとめて見られる 費用と、使い方を覚える手間がかかる 商品の数や店の数が多い店

どの道具を使っても、入力の決まりを守らなければ、記録と実物はずれます。道具を選ぶ前に、誰が、いつ、何を記録するかを決めましょう。

在庫の記録を確かめる二人

在庫管理で気をつけたいこと・よくある失敗は?

期限のある商品は、先に入った物から先に出す

食品など期限のある商品は、先に入った物から先に売る「先入れ先出し」を心がけます。農林水産省によると、消費期限は安全に食べられる期限で、お弁当など傷みやすい食品に表示されます。賞味期限はおいしく食べられる期限で、スナック菓子や缶詰など傷みにくい食品に表示されます。どちらも、開けずに、書かれた保存方法を守った場合の期限です。保管するときも、表示どおりの方法を守りましょう。

なお、決算で使う評価の方法の「先入先出法」は在庫の額の計算の方法で、売場で古い物から出すこととは別のものです。

倉庫や売場で、通路や非常口をふさがない

在庫が増えると、置き場に困って通路に積みがちです。総務省消防庁は、ふだんから避難通路や避難階段、非常口の前に物を置かないよう呼びかけ、置くと消防法違反になると説明しています。置き場が足りないときは、在庫の量そのものを見直す合図です。

記録と実物のずれを放っておかない

ずれの原因には、売上や入荷の入力漏れ、返品や破損の処理漏れ、数え間違い、盗難などがあります。小さなずれでも、原因を調べて仕組みを直すと、次から減らせます。

盗難や紛失を減らすには、小さくて高い商品をレジの近くや鍵のかかる棚に置く、倉庫に出入りする人と時間を決める、商品を店の外に持ち出すときの記録を残す、といった工夫があります。

よくある失敗

  • 勘で発注して、売れ筋が品切れし、動かない商品が残る
  • 色やサイズを分けずに数え、何が足りないのか分からない
  • 入荷や返品の記録が抜けて、帳簿と実物が合わない
  • 売れ残った季節の商品を、そのまま次の季節まで抱える
  • 倉庫に置いたまま忘れ、売場に出ていない商品がある
  • 安く仕入れられるからと、まとめて仕入れすぎる
  • 決算のときしか数えず、ずれに気づくのが遅れる

催事など、短い期間の在庫の持ち方は、催事の在庫の持ち方と補充のコツで説明しています。

伝票と箱とノートパソコン

在庫管理のチェックリスト

仕組みをつくるときと、見直すときに、次の点を確かめましょう。

  • 商品を、品名、型、色、サイズなどに分けて登録している
  • 数える単位(1個、1箱など)をそろえている
  • 入ってきた商品を、検品してから在庫に加えている
  • 売場と倉庫の置き場所を決め、表示している
  • 売上、入荷、返品、破損、移動を記録している
  • 商品ごとの発注の方式と、届くまでの日数を決めている
  • 売れ筋の商品の安全在庫を決めている
  • 売れ行きで商品をランク分けし、持ちすぎを見つけている
  • 季節はずれや古い型の商品を、早めに処分している
  • 期限のある商品を、先に入った物から出している
  • 決算のための棚卸しの時期と、評価の方法を確かめている
  • 棚卸しで出たずれの原因を調べている
  • 通路や非常口の前に、在庫を置いていない

よくある質問

小さな店でも、在庫管理のシステムは要りますか?

商品の数が少なければ、紙の台帳や表計算ソフトでも管理できます。会計の数や商品の数が増えて、記録の手間やずれが大きくなってきたら、POSレジやシステムを考えるきっかけになります。

在庫は、どのくらいの量を持てばよいですか?

決まった量はなく、売れ方と、発注してから届くまでの日数で変わります。J-Net21は、1年の売上の見込みを予定の商品回転率で割って、ちょうどよい在庫の額を考える式を紹介しています。売れ筋の商品は、届くまでに売り切れないよう、安全在庫も決めておきましょう。

棚卸しは、年に何回すればよいですか?

個人事業の決算のためには、原則として年末に行います。それとは別に、売れ筋の商品や高い商品だけを決まった間隔で数えるなど、店の事情に合わせて回数を決めるとよいでしょう。

売れ残った在庫は、どうすればよいですか?

J-Net21は、季節はずれや古い型の商品などの売れにくい在庫を、セールなどで処分すると、お金を取り戻し、この先の費用も減らせると説明しています。売れ残った理由を調べ、次の仕入れの量に生かしましょう。

「先入れ先出し」と「先入先出法」は、同じものですか?

売場の「先入れ先出し」は、先に入った商品から先に売る並べ方や出し方のことです。決算で使う「先入先出法」は、在庫の額を計算する方法の一つです。言葉は似ていますが、目的が違います。

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