小さな店の売場づくりの基本|見やすく選びやすい陳列のコツ

小さな店の売場づくりの基本は、置く商品を絞って分かりやすく分け、お客様の目と手が届きやすい高さに主力の商品を置き、使う場面が同じ商品を近くにまとめることです。商品を詰め込みすぎず、「見やすく、手に取りやすく、戻しやすい」陳列を目指します。通路や非常口の前に物を置かないことも欠かせません。この記事では、売場づくりの考え方、進める手順、陳列の方法の使い分け、注意点とよくある失敗、チェックリストをまとめます。

色鮮やかな棚に並べた商品

売場づくりとは?小さな店では何を考えますか?

売場づくりは、どの商品を、どこに、どれだけ、どう見せるかを決めることです。中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21は、陳列について、どの商品を、どのタイミングで、どの場所に、どれくらいの量で、どのように見せるかを、自分の店の状況に合わせて考えるよう説明しています。陳列は、大きな費用をかけずに販売を後押しできる方法だともしています。

見せ方で商品のよさを伝え、選びやすくする考え方を、ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)と呼ぶこともあります。言葉は難しく聞こえますが、基本は「お客様が迷わずに選べるか」を一つずつ確かめることです。

小さな店ならではの特徴

  • 売場の広さが限られ、置ける商品の数に限りがある
  • 入口から店の奥まで、見渡しやすい
  • 店の人とお客様の距離が近く、相談を受けやすい
  • 少しの変化でも、売場の印象が変わりやすい

限られた広さでは、置く商品を選ぶこと自体が売場づくりの一部です。何でも少しずつ置くより、「この店ならこれがある」と分かる品ぞろえの方が、お客様に伝わりやすくなります。

扱う商品で、売場の考え方は変わる

J-Net21は、小売店の店づくりを、扱う商品の種類ごとに分けて説明しています。

  • 最寄り品の店(食品や日用品など、近くでよく買う物):入口から出口まで一筆書きのように一方通行で導くレイアウト、量を見せる陳列、明るい照明で清潔さを伝える
  • 買回り品の店(衣料など、比べて選ぶ物):店内を回って長くいてもらえる配置、立体的な陳列や飾って見せる陳列、商品に合った雰囲気をつくる間接照明
  • 専門品の店(こだわって選ぶ物):回りやすい配置と、ゆっくり話せる場所、対面での販売、高級感を引き立てる照明

自分の店がどれに近いかを考えると、目指す売場の形が決めやすくなります。

花を並べる花屋の店員

売場づくりは、どんな手順で進めますか?

次の順で進めると、考えることが整理しやすくなります。

1. お客様と、店の役割を決める

誰が、どんなときに来る店なのかを決めます。仕事帰りに短い時間で買う人が多いのか、休日にゆっくり選ぶ人が多いのかで、売場の作り方は変わります。

2. 商品をグループに分ける

商品を、用途や種類、使う場面で分けます。お客様が「この辺りにありそう」と思う分け方にすると、探しやすくなります。グループごとに、案内の表示をつけます。

3. レイアウトと動線を決める

入口からどう歩いてもらうかを考えて、グループの置き場所を決めます。J-Net21は、次のような考え方を紹介しています。

  • 目玉の商品や手ごろな価格の商品を店頭に置き、入るきっかけをつくる
  • おすすめの商品は1か所に固めず、通路の角などに点在させて、店内を回ってもらう
  • 高い価格の商品は、落ち着いて選べる店の奥に置く

あわせて、店の外から中が見えるか、何の店かが分かるかも確かめます。入口の前に物が多いと、初めてのお客様は入りにくくなります。レジの位置は、店の奥まで見渡せて、会計を待つ人が通路をふさがない所を選びます。

4. 照明で、見せたい所を明るくする

暗い棚や、切れたままの照明があると、商品が見えにくく、売場全体の印象も下がります。売場の明るさをそろえたうえで、見せたい商品に光が当たるようにします。J-Net21も、扱う商品によって明るい照明で清潔さを伝える、間接照明で雰囲気をつくるといった使い分けを説明しています。

5. 棚の高さごとに、置く商品を決める

棚の中で、目に入りやすく手に取りやすい高さを「ゴールデンゾーン」と呼びます。J-Net21は、一般的な棚では、お客様の胸から肩の高さがこれにあたると説明しています。

高さを数字で示した目安は、J-Net21の中でも記事によって少し違い、次の2通りがあります。

  • 床からおよそ70〜140センチメートル。男性か女性か、若い人か年配の人かで、位置は少しずつ変わる
  • 女性のお客様でおよそ0.6〜1.5メートル。男性はこれより高く、子どもは低くなる

どちらの数字も、お客様の背の高さで変わる目安です。一つの数字に合わせるより、主なお客様の胸から肩の高さを、実際の棚の前で確かめて決めましょう。なお、J-Net21は、1.8メートル以上の高い所や0.3メートル以下の低い所は、見えても手に取りにくいため、見本を飾る場所や在庫を置く場所に使うよう説明しています。

J-Net21は、ゴールデンゾーンには売れ行きのよい商品や、粗利益率の高い商品を置くよう説明しています。上の段には小さい物、下の段には大きい物や重い物を置くと、取り出しやすく、見た目も落ち着きます。

6. 並べ方と量を決める

同じグループの商品を上から下へ並べる「縦陳列」にすると、お客様は横に動かずに、グループの中の商品を比べられます。J-Net21は、縦陳列ではグループごとに少なくとも0.9メートルの幅をとるよう説明しています。売れ行きのよい商品は、正面から見える列の数(フェイス)を増やし、動きの少ない商品は減らします。

量は、詰め込みすぎに注意します。J-Net21で紹介されている衣料の店の例では、商品をぎゅうぎゅうに詰めたことで、形がひと目で分からない、取り出しにくい、安っぽく見えるといった問題が起きていました。この店は、棚の上の3分の1を空ける、商品の間に空きをつくる、ラックのハンガーの数を3割減らす、といった決まりをつくり、以前より商品の動きがよくなったと紹介されています。

売れて減った所は、奥の商品を手前に出してそろえる「前出し」をします。棚の手前がそろっていると、量が少なくても整って見え、お客様が手に取りやすくなります。

7. POPと価格の表示をつける

POPは、商品のよさや使い方を短い言葉で伝える札です。J-Net21は、POPを陳列棚(ゴンドラ)ごとに1〜2枚置き、印象に残る言葉を添える工夫を紹介しています。数が多すぎると、どれも目に入りにくくなります。のぼりやPOPの選び方は、のぼり旗・POP・ノベルティの選び方と置き方で説明しています。

価格は、消費税を含めた総額で表示します(消費税法第63条)。表示の決まりは、催事の価格表示で気をつけることにまとめています。

8. 開店した後に見直す

売場は、作って終わりではありません。売れ行き、お客様の動き、よく聞かれる質問を見て、置き場所や量を直します。J-Net21は、定期的に模様替えをして、飽きのこない店づくりを心がけるよう説明しています。季節や行事に合わせて売場を変えることも、来店のきっかけになります。

棚に一列に並べた商品

陳列の方法は、どう使い分けますか?

主な陳列の方法を表にまとめました。小さな店では、いくつかを組み合わせて使います。

陳列の方法 どんな並べ方か 向いている場面 小さな店で気をつけたい点
縦陳列 同じグループの商品を、上から下へ並べる グループの中で比べて選んでもらう グループごとの幅をとる
横陳列 同じ商品を、横に長く並べる 量を見せる。店の奥へ誘う ゴールデンゾーンから外れた段の商品が売れにくい
量感陳列 商品を多く積み、量を見せる 安さや活気を伝える 置き場所が限られる。通路をふさがない
展示陳列 少ない数を、飾るように見せる 商品の魅力を伝える。特定の商品を目立たせる 在庫を置く場所を別に決めておく
関連陳列 使う場面が同じ商品を、近くに置く ついでの買い物。買い忘れを防ぐ 組み合わせを季節ごとに見直す
レジ前の陳列 会計の近くに、手ごろな商品を置く ついでの買い物 わずらわしく感じるお客様もいる。会計の場所を狭くしない
島陳列 通路の中に台を置いて並べる 目を引く 通路が狭いと、通りにくくなる

関連陳列の例として、J-Net21は、野菜とドレッシング、ノートとボールペンを近くに置く例を挙げています。使う場面を思い浮かべてもらうことで、買い忘れに気づいてもらいやすくなります。

ショーケースのある店のカウンター

小さな店の売場で気をつけたいことは?

通路と非常口の前に、物を置かない

狭い店では、段ボールや補充用の商品を通路に置きたくなります。しかし、総務省消防庁は、ふだんから避難通路や避難階段、非常口の前に物を置かないよう呼びかけ、置くと消防法違反になると説明しています。消火器の前もふさがないようにしましょう。

落ちたり倒れたりしない並べ方にする

高い段に重い物や割れやすい物を置くと、取り出すときに落ちるおそれがあります。積み上げるのは崩れない高さまでにし、台やラックは倒れないように固定します。子ども連れのお客様が多い店では、子どもの手が届く高さに割れ物を置かない工夫もします。

誰にとっても見やすく、通りやすくする

値札やPOPの文字は、少し離れた所からも読める大きさにします。車いすやベビーカーの人、大きな荷物を持った人も通れるかを、通路を実際に歩いて確かめましょう。困りごとのあるお客様への配慮は、お客様に選ばれる店の接客と売場でも触れています。

期限のある商品は、期限の近い物を前へ

食品など期限のある商品は、期限の近い物を手前に、新しく入った物を奥に並べると、売れ残りを減らせます。在庫の管理の考え方は、店舗の在庫管理の基本で説明しています。

表示は、事実のとおりに

「おすすめ」「人気」といった言葉は、実際に売れている、店がすすめる理由があるといった事実に基づいて使います。消費者庁によると、景品表示法は、商品の品質などを実際のものより著しくよいと示す表示を禁じており、うっかり誤った表示をした場合も対象になります。POPの言葉は、根拠を説明できるものにしましょう。

花束をつくる花屋の店員

売場づくりでよくある失敗は?

小さな店でよく見られる失敗と、直し方をまとめました。

よくある失敗 起こること 直し方
商品を詰め込みすぎる 形が分からず、取り出しにくい。安っぽく見える 棚に空きをつくり、並べる量を減らす
何もかも目立たせる どれも目に入らない 目立たせる商品を絞る
POPや値札が古いまま 価格や内容の行き違いが起こる 見直す日を決めて、張り替える
店頭が物でふさがる 中が見えず、入りにくい 店頭は目玉の商品と通り道に限る
一度決めた売場を変えない お客様が見慣れて、新しい商品に気づかない 季節や売れ行きに合わせて模様替えをする
ほかの店のやり方をそのまままねる 自分の店のお客様に合わない お客様と店の状況に合わせて考える
棚が空いたままになる 品切れや売れ残りの印象を与える 補充の時間を決め、商品を前に出して並べ直す

J-Net21は、ほかの店の陳列をまねても成功するとは限らず、自分の店のお客様や状況に合わせることが大事だとしています。陳列の工夫に終わりはなく、お客様が選びやすく、魅力と清潔さを感じられる店を目指すよう説明しています。

タブレットを手に売場を確かめる店員

売場づくりのチェックリスト

売場を作るときと、見直すときに、次の点を確かめましょう。

  • どんなお客様が、どんなときに来る店かを決めている
  • 商品を用途や種類で分け、案内の表示をつけている
  • 店頭に、入るきっかけになる商品を置いている
  • おすすめの商品を、店内の何か所かに置いている
  • ゴールデンゾーンに、売れ行きのよい商品を置いている
  • 重い物や割れやすい物を、高い段に置いていない
  • 商品を詰め込みすぎず、手に取りやすく戻しやすい
  • 使う場面が同じ商品を、近くに置いている
  • POPの数を絞り、言葉の根拠を説明できる
  • 価格を税込みの総額で表示している
  • 通路、非常口、消火器の前に物を置いていない
  • 車いすやベビーカーでも通れるかを確かめた
  • 期限のある商品は、期限の近い物を手前にしている
  • 見直す日を決めて、売場を直している

よくある質問

狭い店でも、量を見せる陳列はできますか?

できます。同じ商品を1か所にまとめて並べたり、台の上にまとめて置いたりすると、少ない量でもまとまりが出ます。ただし、通路や非常口をふさがない範囲で行いましょう。

売場は、どのくらいの間隔で変えるとよいですか?

決まった答えはありません。季節の変わり目や行事、新しい商品が入ったとき、売れ行きが変わったときが、見直すきっかけになります。J-Net21も、定期的な模様替えで、飽きのこない店づくりを心がけるよう説明しています。

POPは、いくつくらい置けばよいですか?

J-Net21は、陳列棚ごとに1〜2枚を目安に、印象に残る言葉を添える工夫を紹介しています。多すぎるとどれも読まれにくくなるので、伝えたい商品に絞りましょう。

ゴールデンゾーンには、何を置けばよいですか?

J-Net21は、売れ行きのよい商品や、粗利益率の高い商品を置くよう説明しています。高さは、主なお客様の胸から肩の高さが目安です。背の高さで変わるので、主なお客様に合わせて考えます。

売場づくりには、お金がかかりますか?

J-Net21は、陳列を、大きな費用をかけずに販売を後押しできる方法としています。棚や台の置き方、並べ方、量、POPの言葉を見直すだけでも、売場の印象は変わります。新しい棚や照明を買うのは、今ある物で工夫をしてからでも遅くありません。

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