イベントの写真とSNS発信で気をつけること|肖像権と著作権

イベントの写真をSNSやホームページに載せるときは、写っている人の「肖像権」、写真や写っている作品の「著作権」、そして「個人情報」の3つを確かめます。来場者の顔がわかる写真は、本人の同意を得てから載せるのが基本で、子どもの場合は保護者の同意を得ます。ポスターなどが背景に小さく写り込む程度なら、著作権法で利用が認められる場合がありますが、作品を目立たせる使い方には、原則として権利者の許諾が要ります。また、お客様やスタッフに投稿をお願いする企画では、ステルスマーケティングの決まりにも気をつけます。この記事では、イベントの広報を担当する方に向けて、権利の基本、撮影から投稿までの流れ、写り込みの考え方、投稿をお願いするときの注意点、よくある失敗とチェックリストをまとめます。

スマートフォンでイベントを撮る手元

イベントの写真に関わる権利は? 肖像権・著作権・個人情報

イベントの写真には、いくつもの権利や決まりが重なります。まず全体を整理します。

権利・決まり 守るもの イベントの写真で関わる場面
肖像権 写っている人が、無断で撮られたり公表されたりしない利益 来場者やスタッフの顔がわかる写真を載せる
パブリシティ権 有名人の名前や肖像が持つ、お客様を引きつける力 ゲストに招いた人の写真を広告に使う
著作権 写真、絵、音楽、キャラクターなどの作品 撮った写真の使い道、背景のポスター、流れている音楽
個人情報の決まり 特定の個人を識別できる情報 顔写真、名札、受付の名簿と写真の結びつき

肖像権:法律に明文はなく、判例で形づくられてきた権利

総務省は、肖像権を、他人に無断で写真を撮られたり、撮られた写真を無断で公表・利用されたりしないよう主張できる権利と説明しています。芸能人に限らず、だれにでも認められる権利です。

法務省の検討会の報告書は、肖像などをみだりに利用されない権利やパブリシティ権について、法律に明文の規定がなく、判例によって形づくられてきた権利だと整理しています。同じ報告書が紹介する最高裁判所の判決では、承諾なく撮影することが違法になるかどうかは、撮られた人の社会的地位や活動の内容、撮影の場所・目的・方法・必要性などを総合して、社会生活上受け入れるべき限度を超えるかどうかで判断するとされています。

つまり、「ここまでなら問題ない」という線が、法律の条文で決まっているわけではありません。イベントの広報では、迷ったら同意を得る、同意が得られない写真は使わない、という運用にしておくと判断しやすくなります。

パブリシティ権:ゲストの写真を広告に使うとき

有名人の名前や肖像には、商品の販売を促す力(顧客吸引力)があります。法務省の報告書が紹介する最高裁判所の判決は、肖像そのものを鑑賞の対象となる商品にする、商品に付けて差別化を図る、商品の広告に使うなど、もっぱらその力を利用する目的で無断で使う場合に、パブリシティ権の侵害になるとしています。ゲストを招くイベントでは、写真を撮ってよい範囲と、SNSや広告に使ってよい範囲を、出演の契約で決めておきます。

著作権:写真にも、写っている作品にも権利がある

著作権法は、写真を著作物の一つに挙げています(第10条)。著作権は、登録などの手続きをしなくても、作品をつくった人に生まれます(第17条)。そのため、イベントの写真には、原則として撮った人の著作権があります。社員が会社の指示にもとづいて仕事として撮り、会社の名義で公表する写真は、契約や勤務規則に別の定めがなければ、会社が著作者になります(第15条)。外部のカメラマンに撮影を頼む場合は、使ってよい媒体や期間、加工してよいかを契約で決めておきます。

写真の中に写るポスター、絵、キャラクター、流れている音楽なども、それぞれが著作物です。写り込みの考え方は、後の見出しで説明します。

個人情報:顔がわかる写真は個人情報として扱う

個人情報保護法は、生存する個人に関する情報のうち、氏名などの記述や、図画・電磁的記録に記録された事項などによって特定の個人を識別できるものを、個人情報としています(第2条)。顔がはっきり写り、だれかがわかる写真は、個人情報に当たると考えて扱います。名札や受付の名簿と写真を結びつけると、個人を特定しやすくなる点にも気をつけます。

食事の席をスマートフォンで撮る様子

撮影から投稿までは、どう進める?

  1. 撮影と掲載の方針を決める:何のために撮るのか(SNS、ホームページ、チラシ、社内の報告)、だれが撮るのか、写真をどこに保存し、いつまで使うのかを決めます。
  2. 施設の撮影ルールを確かめる:ショッピングモールなどでは、館内の撮影に許可が要ったり、ほかの店や来館者が写る範囲に決まりがあったりします。施設の担当者に事前に確かめます。
  3. 会場で撮影を知らせる:撮影していることと、写真の使い道を、掲示や受付で伝えます。写りたくない人が申し出る方法も示します。
  4. 同意を得る:顔がわかる写真を載せる場合は、本人の同意を得ます。子どもの場合は保護者の同意を得ます。総務省は、保護者が子どもの写真を投稿するときも、子どもの意思や気持ちを尊重し、承諾を得るよう呼びかけています。
  5. 投稿の前に確かめる:同意のない人の顔、名札、学校名の入った服、車のナンバー、スマートフォンの画面など、個人がわかる物が写っていないかを確かめます。必要なら、ぼかすか別の写真を選びます。
  6. 投稿した後の窓口を決める:削除を求められたときに、だれが受けて、どう対応するかを決めておきます。

個人情報保護法は、個人情報を取得したときは、あらかじめ利用目的を公表している場合を除いて、速やかに利用目的を本人に通知するか公表するよう定めています(第21条)。会場の掲示や告知で撮影の目的を示しておくと、この点にも対応しやすくなります。例外の扱いなど、詳しくは個人情報保護委員会の資料や専門家にご確認ください。

同意のとり方の比べ方

方法 向く場面 気をつけること
口頭で確かめる 少人数の撮影、その場での記念撮影 後から確かめられるよう、だれに確かめたかを記録する
同意書に署名してもらう チラシや広告など、長く使う写真 使う媒体と期間、取り下げの方法を書いておく
受付で目印を渡す 参加者が多い体験やワークショップ 写りたくない人の目印(シールなど)を決め、撮る人全員で共有する
掲示で知らせる 会場全体の様子を撮る 掲示だけで同意を得たとみなさず、顔がわかる写真は個別に確かめる
スマートフォンを掲げる観客

写り込みは、どこまで認められる?

イベントの写真には、意図しない物が写り込みます。著作権法第30条の2は、写真の撮影や録画、配信などをするときに、撮りたい物に付随して写り込んだ著作物を、一定の条件のもとで利用できると定めています。文化庁によると、この決まりは令和2年10月1日から対象が広がり、スクリーンショットやインターネットでの生配信なども含まれるようになりました。

主な条件は、次のとおりです。

  • 写り込んだ作品が、写真や動画全体の中で軽微な部分であること。占める割合や、写り方の細かさなどで判断します。
  • 利益を得る目的があるか、撮りたい物から切り離すのがどれだけ難しいか、作品がどんな役割を果たしているかなどに照らして、正当な範囲内であること。
  • 作品の種類や用途、使い方から見て、著作権者の利益を不当に害さないこと。
場面 考え方 対応の例
会場の背景に、ポスターが小さく写る 軽微な写り込みとして認められる場合がある 大きく写っていないか、主役になっていないかを確かめる
キャラクターの絵やぬいぐるみを、写真の中心に大きく写す 写り込みの範囲を超え、作品そのものを使っていると考えられる 権利者の許諾を得るか、写らない構図にする
会場で流れていた音楽が、動画にたまたま入る 撮りたい物に付随した軽微な録り込みとして、認められる場合がある 音楽を目立たせる編集をしない
動画に、後から市販の曲を付ける 写り込みではない 曲の利用条件や、投稿先のサービスの決まりを確かめる
屋外に常に置かれた彫刻や、建物を背景に撮る 著作権法第46条で、一部の場合を除き利用できる 彫刻の複製を売るなど、除かれる使い方に当たらないか確かめる
来場者などほかの人が撮った写真を載せる 原則として、撮った人に著作権がある 撮った人の許可を得て、写っている人の同意も確かめる

総務省は、他人が撮った写真を無断でダウンロードして別のSNSに投稿することを、トラブルの例として挙げています。どの場面でも、判断に迷うときは、使わないか、権利者に確かめるのが安全です。詳しくは文化庁の資料や専門家にご確認ください。

料理をスマートフォンで撮る様子

お客様やスタッフに投稿をお願いするときの注意点は?

来場者に写真の投稿をお願いする企画や、スタッフによる発信では、ステルスマーケティングの決まりに気をつけます。消費者庁によると、令和5年10月1日から、広告であるのに一般の消費者が広告だとわからない表示(ステルスマーケティング)は、景品表示法の違反になりました。規制の対象は、商品やサービスを売る事業者(広告主)で、依頼を受けて投稿した人は原則として対象外です。

消費者庁の「ステルスマーケティングに関するQ&A」では、イベントの広報に関係する例として、次のような考え方が示されています。

場面 消費者庁の考え方
決まったハッシュタグを付けて感想を投稿した人から、抽選でプレゼントする(感想の中身は指定せず、投稿の内容が抽選の結果に影響しない) 通常は、事業者の表示に当たらないと考えられる(Q8)
「毎日食べたいおいしさ」のような具体的な感想を、ハッシュタグで指定して投稿してもらう 事業者が投稿の内容を決めているといえるため、事業者の表示に当たると考えられる(Q8)
通りがかった不特定の人に試供品を配り、内容は指示せずに「よろしければSNSに感想を」と伝える 通常は、事業者が投稿の内容の決定に関わっているとはいえないと考えられる(Q4)
販売を促す立場にある従業員(販売や開発の担当など)が、自社の商品の販売を促すために投稿する 事業者の表示に当たると考えられる。従業員の投稿というだけで、直ちに当たるわけではない(Q3)

事業者の表示に当たる投稿では、広告であることがわかるようにします。Q&Aでは、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」と書く方法や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章で示す方法が挙げられています(Q11)。一方で、従業員が「○○社の社員です」と所属を書くだけでは、広告であることがはっきりしているとはいえない場合がある、とされています(Q12)。

お客様が撮る写真に、ほかの来場者が写ることもあります。写真スポットは、背景に人が入りにくい向きに置くと、トラブルを減らせます。投稿と引き換えにプレゼントを渡す場合は、景品の決まりも関わることがあります。景品の上限の考え方は、コラム「季節ごとの販促イベントのアイデア」でまとめています。詳しくは消費者庁の資料や所管の窓口、専門家にご確認ください。

屋外のイベントで撮影するカメラマン

よくある失敗と、投稿前のチェックリスト

よくある失敗

  • 同意を得ずに顔のわかる写真を載せる:後から削除を求められ、ほかの投稿まで見直すことになります。
  • 子どもの名札や学校名が写っている:顔をぼかしても、持ち物から本人がわかることがあります。子ども連れ向けの催しの注意点は、コラム「子ども連れ向けイベントの工夫と安全の配慮」をご覧ください。
  • スタッフが個人のスマートフォンで撮った写真を、そのまま会社のSNSに使う:だれが撮ったか、どこに保存されているかがわからなくなり、削除の求めにも対応しにくくなります。
  • 外部のカメラマンの写真を、契約にない用途に使う:SNS用に頼んだ写真を広告やチラシに使うと、契約の範囲を超えることがあります。
  • キャラクターやポスターが主役になっている:写り込みの範囲を超え、許諾が要る使い方になるおそれがあります。
  • 投稿キャンペーンで感想を指定し、広告であることを示さない:ステルスマーケティングの決まりに触れるおそれがあります。

投稿前のチェックリスト

  • 写真の使い道と保存先、使う期間を決めている
  • 施設の撮影ルールを確かめた
  • 会場の掲示や受付で、撮影と使い道を知らせた
  • 顔がわかる人の同意を得た(子どもは保護者の同意)
  • 同意のない人の顔、名札、車のナンバー、画面などが写っていない
  • ポスターやキャラクターが、写真の主役になっていない
  • 動画に付けた音楽の利用条件を確かめた
  • ほかの人が撮った写真は、撮った人の許可を得た
  • ゲストの写真は、出演の契約で決めた範囲で使っている
  • 依頼した投稿やスタッフの投稿に、広告であることを示した
  • 削除の求めを受ける窓口と担当を決めた

よくある質問

後ろ姿や遠くに小さく写った人なら、同意なしで載せてもよいですか?

顔がわからなくても、服装や場所、一緒にいる人から本人とわかる場合があります。肖像権の侵害に当たるかどうかは、撮影の場所や目的、方法などを総合して判断されるため、一律の線はありません。迷う写真は、ぼかすか、別の写真を選ぶと安心です。

来場者がSNSに載せた写真を、お店のアカウントで紹介してもよいですか?

写真の著作権は、原則として撮った人にあります。紹介する前に、投稿した人に使ってよいかを確かめます。写真に写っているほかの人の同意も、あわせて確かめます。

写真の削除を求められたら、どうすればよいですか?

まず該当する写真を確かめ、速やかに削除するか、写っている部分を隠します。SNSだけでなく、ホームページやチラシのデータなど、同じ写真を使っている所もあわせて見直します。対応した日と内容は記録しておきます。苦情への最初の対応は、コラム「催事での苦情の初期対応」でも紹介しています。

スタッフ個人のSNSで、イベントを紹介してもらってもよいですか?

販売を促す立場にあるスタッフが、販売を促すために行う投稿は、事業者の表示に当たると考えられています(消費者庁のQ&A)。会社が投稿を頼む場合も、事業者の表示に当たることがあります。紹介してもらう場合は、広告であることがわかる書き方にし、写っている人の同意など、会社のアカウントと同じ決まりを守ってもらいます。

イベントの広報を含めた企画・運営のご相談は、株式会社スカイウォークスの催事・イベントの企画・運営のページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからお寄せください。

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