催事・イベントでのクレーム対応|苦情の初期対応の手順

催事やイベントで苦情(クレーム)を受けたときは、まずお客様の安全を確かめ、話を最後まで聞き、不快な思いをさせたことに限って謝り、事実を確かめてから責任者に引き継ぐのが初期対応の基本です。原因がわからないうちに非を認めたり、その場しのぎの約束をしたりすると、話がこじれやすくなります。一方で、社会通念を超える要求や暴言には一人で対応せず、組織として対応します。この記事では、初期対応の手順、苦情の種類ごとの動き方、伝え方の例、カスタマーハラスメントとの線引き、記録の残し方、よくある失敗とチェックリストをまとめます。

店員と話す年配の夫婦

クレームの初期対応とは?なぜ最初の対応が大事?

苦情は、商品や接客、運営を見直す手がかりです。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」も、お客様からの意見や苦情は改善につながる大事な情報で、それ自体を一律に問題とみなすべきではないとしています。

同じマニュアルは、もともとは普通の苦情だったものが、最初の対応のしかたによってカスタマーハラスメントに発展することもあると指摘しています。そのため、最初に受けた人は、誠意をもって対応しながら状況を正確につかみ、事実を確かめる、という順で丁寧に進めることが勧められています。

初期対応の目的は、その場ですべてを解決することではありません。お客様の安全を守り、何があったかを正しくつかみ、責任者が判断できる状態にして引き継ぐことです。最初に受けた人が一人で結論を出そうとしないことが、こじれを防ぐ第一歩になります。

催事ならではの難しさ

  • ブースが通路に面していて、ほかのお客様の目がある
  • 会場の運営者、商品のメーカー、販売を受け持つ会社など、関係する人が多い
  • 期間が短く、後日の連絡先や担当があいまいになりやすい
  • 応援のスタッフが多く、対応のしかたがそろいにくい
  • 試食、体験、子ども連れなど、安全に関わる場面がある

だからこそ、催事が始まる前に「誰が受けるか」「誰に引き継ぐか」「どこに記録するか」を決めておくことが、初期対応の準備になります。

タブレットを手にお客様と話す店員

初期対応はどう進める?7つの手順

  1. 安全を確かめる:けがや体調の不良の訴えがあれば、話を聞くより先に救護を優先します。会場の担当者や救護の窓口に知らせ、必要なら119番に通報します。
  2. 場所を整える:通路の真ん中で話を続けず、ほかのお客様の邪魔にならない場所に案内します。厚生労働省のマニュアルも、対面の苦情では、店頭で続けずに時間・人・場所を変えて対応することを検討するよう挙げています。
  3. 最後まで聞く:途中で話を遮ったり、反論したりせず、ひと通り事情をうかがいます。メモを取り、要点を復唱して確かめます。
  4. 対象をはっきりさせて謝る:「ご不便をおかけして申し訳ございません」のように、不快な思いをさせたことに対して謝ります。状況がわからないうちに、会社として非を認める言い方はしません。
  5. 事実を確かめる:いつ、どこで、何が起きたか、どの商品か、どのスタッフが対応したかを、時間の順に整理します。
  6. 責任者に引き継ぐ:お客様の要望と確かめた事実を、時間の順に責任者へ伝え、対応の方針を決めてもらいます。待っていただくときは、その旨を丁寧に伝えます。
  7. 約束と記録を残す:その場で答えられないことは、確認して連絡する期限を伝えます。対応の内容は、その日のうちに記録します。

厚生労働省のマニュアルでは、対応できることとできないことをはっきりさせ、相手に過大な期待を持たせないこと、その場しのぎの回答をしないこと、すぐに答えられない内容は事実を確かめてから返事をすることも挙げています。検討に時間がかかる場合は、いったんお引き取りいただき、後日、会社としての方針を伝える方法も示されています。

催事のあとに電話で受けたとき

催事が終わったあと、会社に電話で苦情が届くこともあります。厚生労働省のマニュアルでは、電話での対応について次の点を挙げています。

  • 通話の内容を録音できるようにしておく
  • 最初に受けた人が責任を持ち、問い合わせを次々に回さない
  • 顔が見えない分、丁寧な言葉で、ゆっくり説明する
  • 周りと相談するときは、相談の内容が漏れないよう保留の機能を使う

催事の記録用紙を会社にも残しておくと、電話を受けた人が、当日の状況をすぐに確かめられます。

花屋で店員と相談するお客様

伝え方の例は?言いたい言葉と避けたい言葉

同じ内容でも、言い方ひとつで受け取られ方が変わります。手順ごとの言い方の例を比べると、次のとおりです。

場面 伝え方の例 避けたい言い方
聞く 「どのようなことがあったか、お聞かせいただけますか」 「でも」「それは違います」と話を遮る
謝る 「ご不便をおかけして申し訳ございません」 確かめる前に「すべてこちらの責任です」と言う
確かめる 「確認のため、お買い上げの日時を教えていただけますか」 「本当にここで買いましたか」と疑う
引き継ぐ 「責任者に確認いたします。少々お待ちいただけますか」 「私にはわかりません」で終える
約束する 「確認して、明日の○時までにご連絡いたします」 「たぶん大丈夫です」とあいまいに答える
できないことを伝える 「申し訳ございませんが、その対応はいたしかねます」 期待を持たせる返事をして、あとで断る

専門用語や社内の言葉は使わず、相手が感情的になっていても、落ち着いた丁寧な話し方を続けます。声かけや接客の基本は、コラム「店頭販売の声かけと接客の基本」もご覧ください。

飲食店のカウンターで話すお客様

苦情の種類ごとに、最初に何をする?

催事でよくある苦情と、最初にすること、引き継ぐ先をまとめると次のようになります。

苦情の種類 最初にすること 主な引き継ぎ先
商品の不具合 商品と購入の記録を確かめ、決めてある交換や返品の扱いに沿って案内する 責任者、メーカー
説明や表示と違った どの説明や表示かを確かめ、表示に誤りがあればすぐに直す 責任者
待ち時間や混雑 状況を説明し、待つ時間の目安を伝える 現場の責任者
スタッフの言葉や態度 話を聞いて謝り、当のスタッフを外して責任者が対応する 責任者
試食や体験のあとの体調の不良 体調を気づかい、救護を優先する。食べた物と時刻を記録する 会場の担当者、責任者
けがや持ち物の破損 救護と周りの安全を確かめ、起きた場所の様子を記録する 会場の担当者、責任者
音、におい、通路のふさぎ 状況を確かめ、すぐ直せることは直す 会場の担当者

交換や返品、返金の扱いは、催事の前に責任者と決めておき、現場では決めた範囲で案内します。価格や表示に関わる苦情を防ぐ方法は、コラム「催事の価格表示で気をつけること」に、試食の衛生は「試食・試飲の進め方と衛生の注意点」にまとめています。

子ども連れのお客様からの申し出で、子どものけがや迷子に関わるものは、会場の救護や迷子の窓口と連絡を取りながら進めます。安全への備えは「子ども連れ向けイベントの工夫と安全の配慮」に、高齢のお客様への接し方は「高齢のお客様への接客で気をつけること」にまとめています。

販売した製品で事故が起きたと知らされたら

消費生活用製品安全法では、製品を売る小売販売事業者は、重大製品事故が起きたことを知ったときは、その製品の製造事業者または輸入事業者に知らせるよう努めることとされています(第34条第3項)。消費者庁の資料では、重大製品事故に当たるものとして、死亡事故、治療に30日以上かかるけがや病気、後遺障害が残る事故、火災(消防が火災と認めたもの)、一酸化炭素中毒を挙げています。重大かどうかわからない場合も、責任者に伝え、メーカーと連絡を取ります。

売場でお客様と話し合う店員

苦情とカスタマーハラスメントの線引きは?

厚生労働省の指針では、職場におけるカスタマーハラスメントを、①お客様などの言動で、②業務の性質などに照らして社会通念上許される範囲を超えたものにより、③働く人の就業環境が害されるもの、の3つをすべて満たすものとしています。改正された労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、事業主には、働く人をカスタマーハラスメントから守るための措置(方針を決めて伝えること、相談の体制を整えること、起きたあとに速やかに対応することなど)が義務づけられています。

ただし、お客様からの苦情のすべてが当てはまるわけではありません。社会通念上許される範囲で行われたものは、正当な申し入れです。障害のある方が、不当な差別的な扱いをしないよう求めることや、社会的な障壁を取り除くよう求める意思を示すこと自体も、カスタマーハラスメントには当たらないとされています。

見る点 正当な苦情の例 社会通念を超える例
要求の内容 不良品の交換、説明の誤りの訂正を求める 商品と関係のない要求、想定を大きく超える要求、不当な損害賠償の要求
言い方や手段 落ち着いて事情を伝える 暴言や侮辱、威圧的な言動、長時間の居座り、しつこい繰り返し

厚生労働省のマニュアルは、正当な申し入れをすぐにカスタマーハラスメントと決めつけることは避けなければならないとしています。一方で、明らかに威圧的な言動を受けたときは、すぐに責任者に相談して引き継ぎ、一人で対応しないこととしています。悪質さが疑われる場合は複数で対応し、録音や録画、対応の記録、時間の計測など、あとから第三者が確かめられる記録を残します。録音や録画をするときは、個人情報の保護に関する法律などを守ります。暴行、傷害、脅迫など犯罪に当たる言動は、警察に通報します。

エプロン姿で話し合うスタッフ

記録と引き継ぎはどうする?よくある失敗とチェックリスト

記録に残すこと

厚生労働省のマニュアルは、カスタマーハラスメントに至らなかったものも含めて、申し出の内容、対応の経緯、結果を正確に記録し、関係する部署と共有して、再発の防止に生かすことを挙げています。催事では、次の項目を1枚の用紙にまとめておくと書きやすくなります。

  • 日時と場所(ブースのどこで、何時ごろ)
  • お客様の申し出の内容(なるべく言葉どおりに)
  • 確かめた事実
  • 最初に受けた人と、引き継いだ人
  • お伝えしたことと、約束したこと
  • 次に連絡する期限と方法

お客様の名前や連絡先をうかがうときは、何のために使うかを伝えます。記録はお客様の個人情報を含むため、置き場所と見られる人を決めて扱います。

よくある失敗

失敗 防ぎ方
原因がわからないまま「こちらの間違いです」と言ってしまう 不快な思いをさせたことに限って謝り、非を認めるのは事実を確かめて判断したあとにする
その場しのぎの約束をして、あとで守れない できることとできないことを分け、すぐ答えられないことは期限を決めて連絡する
通路の真ん中で長く話し込む ほかのお客様の邪魔にならない場所に案内する
担当を次々に替えて、同じ話を何度もさせる 最初に受けた人が責任者まで付き添い、聞いた内容をまとめて伝える
記録がなく、引き継ぎのたびに話が変わる 記録用紙を用意し、その日のうちに書く
応援のスタッフが対応の決まりを知らない 初日の朝に、責任者、連絡の方法、交換や返品の扱いを共有する

催事の前のチェックリスト

  • 苦情を受けたときの責任者と、連絡の方法を決めた
  • 会場の担当者、救護、警備の連絡先を一覧にした
  • 交換、返品、返金の扱いを決めた
  • 商品のメーカーの連絡先を確かめた
  • 記録用紙と置き場所を決めた
  • よく聞かれる質問と答えをまとめた(「お客様からよく聞かれる質問への答え方とFAQの作り方」)
  • 一人で対応しない場面と、警備や警察に連絡する場面を決めた
  • 価格や表示に誤りがないかを点検した
  • 応援のスタッフにも、これらを伝えた

よくある質問

謝ると、非を認めたことになりませんか?

謝る対象をはっきりさせることで、会社として非を認める言い方を避けられます。厚生労働省のマニュアルでは、「この度は不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」のように、不快に思わせたことに対して謝る例を挙げています。非を認めて謝るのは、事実を確かめて判断したあとにし、そのときも過失の程度に応じた謝り方にすることが望ましいとしています。

その場で返金を求められたら、どうすればよいですか?

催事の前に決めた扱いの範囲なら、その決まりに沿って対応します。決まっていない場合や、範囲を超える要求の場合は、その場で約束せず、責任者に引き継ぎます。すぐに決められないときは、確認して連絡する期限を伝えます。

大きな声で怒られたときは、どうすればよいですか?

一人で対応せず、責任者を呼びます。会場の警備と連絡を取り、ほかのお客様の安全も確かめます。厚生労働省のマニュアルは、大声を出す行為は周りの迷惑になるため、やめるよう求め、複数で対応する例を挙げています。暴行や脅迫など犯罪に当たる言動があれば、警察に通報します。

受けた苦情は、スタッフの間でどう共有すればよいですか?

閉店後や翌朝の打ち合わせで、何があり、どう対応し、次にどう防ぐかを短く共有します。お客様やスタッフの名前は出さず、事例として話すと、責める場にならずに済みます。表示の直しや、説明の言葉の見直しなど、すぐ変えられることはその日のうちに変えます。

お客様から、ほかの相談先を聞かれたら?

消費者庁の「消費者ホットライン」188 では、身近な消費生活センターや消費生活相談の窓口を案内しています。苦情の内容に応じて、会場の運営者の窓口や、商品のメーカーの窓口を案内することもあります。

苦情への備えを含めた催事の運営のご相談は、株式会社スカイウォークスの催事・イベントの企画・運営のページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからお寄せください。

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