ポップアップストアの開き方|期間限定の店づくりの流れ

ポップアップストアを開くときは、まず「何のために開くか」を決めます。次に、その目的に合う場所と期間を選び、契約と届出を済ませます。店づくりと告知に進むのは、そのあとです。期間が短い店ほど、準備の順番と、終わったあとの振り返りで結果が変わります。この記事では、初めて期間限定の店を開く方に向けて、開くまでの流れ、場所の選び方、契約と手続きで確かめること、店づくりと運営の要点、よくある失敗とチェックリストをまとめます。

小屋のような小さな売店

ポップアップストアとは?どんな目的で開く?

ポップアップストアは、決まった期間だけ開く店です。商業施設の催事スペースや空いている区画、通りに面した短期貸しの店舗など、ふだんは別の用途に使われている場所を借りて開く形が多く見られます。催事・物産展・マルシェとの違いは、コラム「催事・物産展・ポップアップストア・マルシェの違い」で比べています。

中小企業基盤整備機構が運営する J-Net21 では、展示会への出展を「一時的にお店を構える」ことと説明しています。ポップアップストアも、ふだん会えないお客様がいる場所へ、短い期間だけ店を出しに行く方法と考えると、目的を立てやすくなります。

主な目的

  • 新商品や、ネットで売っている商品を、実物で試してもらう
  • 出店した地域で、ブランドや会社の名前を知ってもらう
  • お客様の反応を見て、品ぞろえや価格を考える材料にする
  • 季節の商品や限定品を、短い期間に集中して売る
  • 常設の店を出す前に、その地域での手ごたえを確かめる

目的によって、選ぶ場所も、確かめる数字も変わります。たとえば「名前を知ってもらう」が目的なら、売上よりも、立ち寄った人数、会員登録の数、SNS の反応が大事な数字になります。目的は1つか2つに絞り、社内の関係者と共有しておきます。

レジカウンターのある明るい店内

開くまでの流れは?準備から撤収までの9つの段階

準備は、次の順で進めると漏れが出にくくなります。

  1. 目的と目標を決める:何のために開くか、何を数字で確かめるかを決めます。
  2. 場所と期間を探す:候補の場所の客層、人の流れ、借りられる期間を比べます。
  3. 条件を確かめて契約する:営業時間、内装の決まり、搬入と搬出、売上の受け渡し方などを書面で確かめます。
  4. 届出や許可を確かめる:扱う商品や使う設備によって、保健所・税務署・消防署などへの手続きが要ることがあります。
  5. 店づくりを決める:レイアウト、什器、照明、看板、決済の方法を決めます。
  6. 商品とスタッフをそろえる:在庫の量と補充の方法、スタッフのシフトと説明の内容を決めます。
  7. 告知する:SNS、ウェブサイト、いまのお客様への案内、施設の館内案内などで知らせます。
  8. 営業する:毎日の売上と反応を記録し、陳列や声かけを少しずつ直します。
  9. 撤収して振り返る:場所を元に戻して返し、数字とお客様の声をまとめて次に生かします。

段階ごとに決めることと、確かめる相手を表にすると次のようになります。

段階 主に決めること 確かめる相手
企画 目的、目標、予算、扱う商品 社内の関係者
場所選び 場所、期間、営業時間 施設や物件の担当者
契約 費用の条件、内装の決まり、搬入と搬出、原状回復 施設や物件の担当者
手続き 食品・酒類・火気などの届出や許可 保健所、税務署、消防署
店づくり レイアウト、什器、看板、決済 施工・印刷・決済の各会社
営業 在庫、シフト、記録の方法 社内のスタッフ
撤収 片付け、原状回復、振り返り 施設や物件の担当者、社内

全体の流れを1枚にまとめ、段階ごとの締め切りを書き込んでおくと、関係者が多くても進み具合を共有しやすくなります。手続きや内装の制作には時間がかかるものがあるため、締め切りは開く日から逆算して決めます。

アーチ型の入口の小さな店

どんな場所を選べばよい?4つの形を比べる

場所は、来る人の層と人の流れが目的に合うかどうかで選びます。代表的な形を比べると、次のようになります。

形 特徴 自由にできる範囲 向く目的
商業施設の催事スペース・通路の区画 施設に来た人の流れに乗れる。施設の決まりに合わせる 内装・音・営業時間は施設の決まりの中で 名前を知ってもらう、試してもらう
短期貸しの店舗(空き店舗など) 独立した店として見せられる。人を呼ぶのは自分で行う 内装や見せ方の自由が比較的大きい ブランドの考え方を伝える、ファンを集める
ほかの店の一角を借りる その店のお客様に会える。広さは限られる 置ける量や見せ方は相手の店と相談 客層の近い店と組んで、試してもらう
イベントやマルシェへの出店 開催日に人が集まる。期間は短いことが多い テントや机など、主催者の決まりの中で 反応を見る、地域の人と知り合う

候補を比べるときは、次の点を確かめます。

  • 来る人の年代や目的が、売りたい商品と合っているか
  • 平日と休日、朝と夕方で、人の流れがどう変わるか
  • 搬入口や駐車場、商品を置いておく場所があるか
  • 電源、照明、水まわりなど、使える設備は何か
  • 近くに似た商品を売る店があるか

候補の場所には、開きたい曜日と時間帯に実際に行き、通る人の様子を見ておくと安心です。資料の数字だけではわからない、人が立ち止まる場所や、通り過ぎる速さがわかります。商業施設での出店の流れは、コラム「ショッピングモール催事の出店から撤収までの流れ」にまとめています。

棚に鞄や雑貨を並べた店内

契約と手続きで確かめることは?

契約の条件

期間限定の出店では、場所ごとに契約の形や条件が違います。料金の決まり方(定額か、売上に応じた額か、その組み合わせか)、売上の受け渡し方、内装の決まりなどは、口頭で済ませず書面で確かめます。

  • 期間と営業時間、休みの日
  • 費用の決まり方と支払いの時期
  • レジや決済は施設のものを使うか、自分で用意するか
  • 内装、看板、音、においについての決まり
  • 搬入と搬出の時間、使える通路と台車
  • 商品の予備やスタッフの荷物を置く場所
  • 損害が起きたときの責任の範囲と、保険への加入を求められるか
  • 終わったあとに元に戻す範囲(原状回復)

扱う物や設備によって要る手続き

扱う商品や使う設備によっては、役所への届出や許可が要ります。主なものは次のとおりです。

場面 確かめること 主な窓口
食品を扱う 製造、調理、加工を伴う販売などは、営業許可が要る業種が多い。温度の管理が要る包装食品の販売などは届出が要る。常温で保存できる包装食品だけの販売は届出の対象外 会場を受け持つ保健所
酒類を売る 博覧会場などで臨時に販売場を設けて小売をするときの、期限付酒類小売業免許 臨時の販売場がある所の税務署
火を使う器具を使う 多くの人が集まる催しで露店などを開くときの届出、消火器の用意 会場を受け持つ消防署
布の装飾や展示用の板を使う 百貨店など多くの人が出入りする施設では、カーテンや展示用の合板などに防炎物品を使う決まり 施設の担当者、消防署
個人で新しく事業を始める 個人事業の開業の届出 納税地の税務署

食品の営業は、2021年6月1日から、営業許可の業種の見直しと営業届出の制度によって整理されています(厚生労働省)。催事や短い期間の出店での扱いは自治体ごとに決まりがあるため、扱う食品が決まった段階で、会場を受け持つ保健所に相談します。

酒類について、国税庁は、博覧会場などで臨時に販売場を設けて小売をする場合、原則として販売場を開く日の2週間前までに申請が要るとしています。すでに酒類の製造者や販売業者である事業者が一定の要件を満たす場合は、10日前までに届け出ることで、免許を受けたものとして扱うとしています。販売を始めるまでに酒類販売管理者を選ぶことと、販売の期間が終わったあとに販売数量などを報告することも求められています(2026年11月時点)。

火を使う露店などの届出は、総務省消防庁が示した火災予防条例(例)をもとに、市町村ごとの条例で決められています。届出が要るかどうかや期限は市町村によって違うため、会場を受け持つ消防署に確かめます。

お客様に向けて価格を表示するときは、消費税を含めた総額で表示する決まりがあります(国税庁)。「期間限定」「ここだけ」といった言葉を使うときは、実際の条件と合っているかも確かめます。表示の注意点は、コラム「催事の価格表示で気をつけること」にまとめています。法令の扱いは場所や商品によって違うため、詳しくは所管の窓口や専門家にご確認ください。

店内でサングラスを選ぶ手元

店づくりと運営は、何から決める?

レイアウトと什器

期間が短くても、通路から中が見えて、入りやすい店にします。入口の近くに目を引く商品を置き、奥に向かって選びやすく並べるのが基本です。レイアウトの考え方は「催事ブースのレイアウトの基本」、什器の選び方は「催事で使う什器の種類と選び方」をご覧ください。

内装は、組み立てと片付けにかかる時間も考えて選びます。床や壁に貼る物、釘やねじを使う物は、施設の許可が要ることが多いため、図面の段階で施設の担当者に見せておきます。

決済と在庫

支払いの方法は、現金のほかにどのキャッシュレス決済を受けるかを決め、端末の申し込みと通信の確認を早めに済ませます(「催事でキャッシュレス決済を使う準備」)。在庫は、売場に置く量、裏に置く量、補充を届けてもらう方法に分けて考えます(「催事の在庫の持ち方と補充のコツ」)。

スタッフと告知

スタッフは、商品の説明、レジ、品出しの役割を決め、休憩の時間も含めてシフトを組みます(「催事スタッフの人数の考え方とシフトの組み方」)。告知は、開く前、開いている間、終わりが近づいたとき、の3つの時期に分けて考えると、伝える内容を整理しやすくなります(「催事の事前告知の方法」)。

営業中の記録

毎日の閉店後に、売上、客数、よく聞かれた質問、売り切れた商品を短く記録します。期間が短い店では、初日の反応を見て、次の日から陳列や声かけを直せるかどうかで結果が変わります。記録は、終わったあとの振り返りの材料にもなります。

撤収と振り返り

最終日は、閉店の時刻と搬出の時刻を確かめ、片付けの順番を決めておきます。売れ残った商品の数を数えてから梱包すると、在庫の確認と振り返りの準備が一度にできます。床や壁に貼った物を外し、借りたときの状態に戻ったかを、施設の担当者と一緒に確かめます。

振り返りは、終わってから日を空けずに行います。目的に対して何がわかったか、次に開くなら場所・期間・品ぞろえ・告知のどれを変えるかを、数字とお客様の声の両方から書き出します。

布地や型紙を並べた店の棚

注意点とよくある失敗は?開く前のチェックリスト

注意点

  • 届出や許可が開く日に間に合わないと、その商品は売れません。手続きは早めに確かめます。
  • 施設の決まり(音、におい、看板の大きさ、通路へのはみ出し)を守ります。
  • 通路、避難口、消火器の前をふさがないように商品や什器を置きます。
  • お客様の連絡先を集めるときは、何に使うかをあらかじめ示します(「催事のアンケートの取り方と個人情報の扱い」)。
  • 撤収に使える時間は施設の決まりで限られるため、片付けの手順と人数も準備の段階で決めます。

よくある失敗

失敗 起きやすい理由 防ぎ方
終わったあとに、良かったのか悪かったのか判断できない 目的と数字を決めずに始めた 契約の前に、目的と確かめる数字を決める
内装が施設の決まりに合わず、作り直しになった 図面や素材を施設に見せていなかった 図面と使う素材を、制作の前に施設へ確かめる
初日に売り切れ、残りの日の商品が足りない 補充の届け方を決めていなかった 補充の量と届ける日時を、開く前に決める
決済の端末がつながらない 通信の確認を当日にした 設置する場所で、前もって試す
搬出の時間内に片付けが終わらない 撤収の手順と担当を決めていなかった 撤収の担当と順番を決め、梱包材を残しておく

開く前のチェックリスト

  • 目的と、確かめる数字を決めた
  • 場所の客層と人の流れを、自分の目で確かめた
  • 費用、営業時間、内装、搬入と搬出、原状回復の条件を書面で確かめた
  • 食品・酒類・火気などの手続きが要るかを、窓口に確かめた
  • 価格を、消費税を含めた総額で表示した
  • レイアウト図と什器の一覧を、施設の担当者に見せた
  • 決済の端末を、設置する場所で試した
  • 在庫の補充の方法と、連絡先を決めた
  • シフト、休憩、商品の説明の内容をスタッフと共有した
  • 毎日の記録の方法と、振り返りの日を決めた

よくある質問

ポップアップストアの期間は、どのくらいがよいですか?

期間に決まりはありません。施設が募集する期間に合わせるか、目的に合わせて決めます。短い期間は準備や費用の負担が軽い一方で、告知が広がる前に終わることがあります。長い期間は口コミが広がる時間がとれる一方で、スタッフと在庫を長く確保する必要があります。

個人でもポップアップストアを開けますか?

場所の貸し手の条件を満たせば、個人でも開けます。新しく事業を始める場合は、税務署への開業の届出が要ります。扱う商品によっては、保健所などへの手続きも要ります。貸し手によっては、法人であることや出店の経験を条件にしていることもあるため、募集の条件を確かめます。

準備は、いつから始めればよいですか?

手続きの期限から逆算して決めます。たとえば酒類を臨時に売る場合の期限付酒類小売業免許は、原則として販売場を開く日の2週間前までの申請が要ります(2026年11月時点)。施設の審査や内装の制作にも時間がかかるため、開きたい時期が決まったら、まず場所の担当者に募集や審査の時期を確かめます。

売上が目標に届かなかったときは、どう振り返ればよいですか?

売上を、立ち寄った人数、買った人の割合、1人あたりの金額に分けて見ます。どこで目標とずれたかがわかると、場所の選び方の問題か、店づくりや声かけの問題かを分けて考えられます。振り返りの方法は、コラム「販促イベントの効果測定の方法」と「催事の売上目標の立て方と振り返り方」で説明しています。

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