営業代行と自社営業の違い|向く場面と向かない場面

営業代行と自社営業のいちばんの違いは、営業を行う人と仕組みを、社内に持つか、外から借りるかです。営業代行は比較的早く始められ、契約の範囲で人数や期間を変えやすい一方で、営業の経験やお客様との関係が社内に残りにくくなります。自社営業は、立ち上げに時間と費用がかかりますが、経験が社内にたまり、方針を直接伝えられます。どちらか一方に決める必要はなく、営業の段階や期間で分けて組み合わせる形もあります。この記事では、2つの違いを表で比べ、向く場面と向かない場面、決める手順、気をつけたい点、よくある失敗をまとめます。

グラフの資料を手に話し合うチーム

営業代行と自社営業は、何が違いますか?

自社営業は、自社で雇った社員が行う営業です。営業代行は、外部の会社や個人と業務委託契約を結び、営業の一部または全部を任せる形です。同じ「営業」でも、契約、指示の出し方、費用、経験の残り方が違います。

契約と指示の出し方の違い

社員とは雇用契約を結び、会社が仕事の進め方を直接指示します。営業代行は業務委託なので、現場のスタッフへの仕事の進め方の指示や勤務時間の管理は、受託した会社が自ら行うのが原則です。厚生労働省は、請負(委任と準委任を含む)として適正かどうかを、契約の名前ではなく実態で判断するとしています。その判断の基準は、昭和61年労働省告示第37号で示されています。発注した会社が代行のスタッフに直接、細かな指示を出すと、いわゆる「偽装請負」とみなされるおそれがあります。

費用のかかり方の違い

社員を雇うと、給与のほか、採用や教育の費用、社会保険料の会社負担がかかります。たとえば厚生年金保険の保険料は、会社と従業員が半分ずつ負担します。仕事に使う道具や、営業を管理する人の時間も要ります。営業代行では、契約で決めた報酬と、報酬とは別に決めた費用を払います。料金の形には、活動に払う固定報酬と、成果に払う成果報酬などがあります。詳しくは営業代行の料金の決まり方で紹介しています。

営業代行の契約には、どんな形がありますか?

業務委託契約は、民法では内容によって「請負」や「準委任」などにあたります。請負は仕事の完成を約束する契約(民法第632条)、準委任は法律行為でない事務を任せる契約です(第656条)。決めた時間に電話での案内や売場での販売を行う営業代行は、準委任に近い形です。どちらにあたるかで報酬を払う時期や途中で終えるときの扱いが変わります。契約書で確かめる点は販売代行の契約の確認項目で紹介しています。

経験と情報が、どこに残るか

自社営業では、断られた理由、よく聞かれる質問、伝わりやすい説明の順番などが、社員の経験として社内に残ります。営業代行では、こうした経験はまず代行する側にたまります。報告や記録の形で受け取る決まりをつくらないと、契約が終わったときに社内に何も残らないことがあります。

ホワイトボードに付箋を貼って話し合う人たち

営業代行が向く場面と、向かない場面は?

営業代行が向く場面

  • 新しい商品の発売に合わせて、短い期間に多くのお客様へ説明したいとき
  • 期間を区切ったキャンペーンや催事で、売場に立つ人を増やしたいとき
  • まだ営業したことのない地域や客層で、反応を確かめたいとき
  • 社員を、既存のお客様への対応や、成約に近い商談に集中させたいとき
  • 採用が追いつかない間、営業の人手を補いたいとき
  • 営業の進め方や台本づくりの知見を、外から取り入れたいとき

営業代行が向かない場面

  • 商材の説明に、社内でしか分からない専門の知識や判断が多く要るとき
  • お客様と長い時間をかけて深い関係を築くことが、売上の中心になっているとき
  • 価格や契約の条件を、その場で決める権限が要るとき
  • 社内で営業の経験を積み、人を育てることを優先したいとき
  • 任せる目的や、良し悪しを判断する物差しを決められないとき

自社営業が力を発揮する場面

反対に、次のような場面では、社員が営業することの良さが出やすくなります。

  • お客様の声を、商品の改良や新しい提案にすぐ生かしたいとき
  • 価格や条件の相談に、その場で答えたいとき
  • 取引先と長く付き合い、追加の注文や紹介につなげたいとき
  • 営業の経験を、次の商品や後輩の社員に引き継ぎたいとき

組み合わせる形もあります

営業代行と自社営業は、分けて組み合わせることもできます。たとえば次のような分け方があります。

  • 段階で分ける:営業先のリストづくりと会う約束の取り付けは代行に任せ、商談と契約は社員が行う
  • 期間で分ける:立ち上げの時期は代行に任せ、進め方が固まったら社内に移す
  • 場所で分ける:催事や店頭での販売は代行に任せ、法人への営業は社員が行う

どちらにするかを決める手順

  1. 目的と期間を決める:何のために、いつまで営業を強めたいのかを書き出します。
  2. 営業の流れを分ける:営業先を探す、会う約束を取る、商談する、契約する、フォローする、の段階ごとに考えます。
  3. 社内に残したいものを決める:お客様との関係、営業の経験、価格を決める判断など、手放したくないものを挙げます。
  4. 商材の説明の難しさを見る:研修でどこまで伝えられるかを考えます。新しい商品の知識を短い期間で身につける方法は新しい商品を売る前の商品知識の覚え方で紹介しています。
  5. 費用を同じ条件で比べる:同じ期間、同じ範囲で、総額を比べます。
  6. 試して見直す:一部の段階や短い期間で試し、結果を見て範囲を広げるか、社内に移すかを決めます。
画面のグラフを見ながら説明を聞く人たち

営業代行と自社営業を、表で比べると?

比べる点 営業代行 自社営業
始めるまでの早さ 契約と準備が済めば始められる 採用と教育に時間がかかる
費用のかかり方 契約で決めた報酬と費用 給与、社会保険料の会社負担、採用と教育の費用
人数や期間の変えやすさ 契約の範囲で変えやすい すぐには変えにくい
経験の蓄積 報告で受け取らないと残りにくい 社内に残る
お客様との関係 代行する側との関係になりやすい 自社との関係として続く
指示の出し方 受託した会社の責任者を通して伝える 直接伝えられる
品質の管理 研修、台本、報告で確かめる 社内の教育と評価で整える
情報の管理 委託先の管理を確かめ、監督する 社内の決まりで管理する
向く期間 短い期間、立ち上げの時期 長く続ける営業

場面ごとに見ると、どちらが合いますか?

よくある場面ごとの考え方の目安です。実際には、商材と社内の体制によって変わります。

場面 考え方の目安 理由
新しい商品の発売に合わせた短い期間の販売 営業代行 短い期間に人数をそろえやすい
期間を区切った催事や店頭でのキャンペーン 営業代行 売場に立つ人を期間に合わせて増やせる
まだ営業したことのない地域や客層の試行 営業代行か組み合わせ 社員を動かす前に反応を確かめられる
長く付き合う取引先への提案 自社営業 お客様との関係と経験が社内に残る
説明に専門の知識が多く要る商材 自社営業か組み合わせ 社内でしか答えられない質問が多い
営業の人を社内で育てたい時期 自社営業か組み合わせ 社員が経験を積む機会を確保できる

費用は、どう比べればよいですか?

費用は、月々の支払いの額だけで比べると、見誤りやすくなります。同じ期間と同じ範囲で、次のものを足して比べましょう。

  • 自社営業:給与、社会保険料の会社負担、採用の費用、教育の時間、道具や交通費、営業を管理する人の時間
  • 営業代行:報酬、報酬とは別にかかる費用、社内の窓口になる人の時間、終わったあとの引き継ぎの手間

あわせて、得られるものの違いも見ます。営業代行では人数や期間を変えやすく、自社営業では経験が社内に残ります。数字に表れにくい違いも、判断の材料に含めましょう。

ホワイトボードの前で相談する2人

営業代行を使うときに、気をつけたいことは?

指示は、相手の責任者を通して伝える

代行のスタッフに、自社の社員と同じように直接指示を出すことは避けます。要望は、受託した会社の現場の責任者に伝え、責任者からスタッフに伝えてもらいます。どこまでが情報の提供で、どこからが指示になるかに迷うときは、所管の労働局や専門家にご確認ください。

お客様の情報は、委託先の管理を確かめてから渡す

個人の名前や連絡先が入った名簿を渡して業務に使ってもらうと、一般に個人データの取扱いを委託することになります。個人情報保護法では、委託する側に、委託先への必要かつ適切な監督が求められます(第25条)。保管の場所、見られる人の範囲、終わったあとの返却や消去の方法を決めてから渡しましょう。

勧誘のルールをそろえる

代行のスタッフの話し方は、売り手の会社の印象として受け取られます。個人のお客様の自宅を訪ねたり電話をかけたりして勧誘する販売などには、特定商取引法の決まりがあります。勧誘の前に事業者の名前や勧誘の目的を告げること、断った人に勧誘を続けないことなどを、研修と台本に入れてもらいます。

社内の受け皿をつくる

営業代行が会う約束や申込みを取っても、そのあとを社内で受け止められなければ成果になりません。商談を引き継ぐ担当者、問い合わせに答える担当者、契約の手続きをする担当者を決めておきます。

お客様の記録を、誰のものとして扱うかを決める

代行の会社が集めたお客様の連絡先や商談の記録を、契約が終わったあとにどう扱うかは、契約で決めておかないとあいまいになります。記録を自社に引き渡してもらうのか、代行の会社が消去するのか、引き渡すならどんな形でかを決めます。顧客の記録のつけ方は顧客管理の基本も参考になります。

苦情が出たときの流れを決める

お客様からの苦情や問い合わせが、代行の会社に届くこともあれば、自社に届くこともあります。どちらに届いても、もう一方へすぐに知らせ、誰が答えるかを決めておきます。対応の記録を共有すると、同じことが起きたときの備えになります。

グラフを映した会議室で話し合う人たち

営業代行と自社営業の判断で、よくある失敗は?

  • 月々の支払いの額だけで比べる:自社営業の採用や教育の費用、営業代行の別にかかる費用を入れないと、比べた結果がずれます。
  • すべてを任せて、社内に何も残らない:報告や記録の決まりがないと、契約が終わったときに経験もお客様の情報も手元に残りません。
  • 代行のスタッフに直接、細かく指示を出す:契約の形と実態が合わなくなり、法令の面で問題になるおそれがあります。
  • 受け皿の担当者を決めていない:取れた約束や問い合わせが放っておかれ、お客様の信頼を失います。
  • 社員に、代行を使う目的を伝えていない:社員が自分の仕事を取られると受け止め、引き継ぎや情報の共有に協力が得られないことがあります。役割の分け方と目的を、始める前に社内で共有します。
  • 短い期間の結果だけで決める:営業代行も自社営業も、立ち上げの時期は数字が出にくいものです。決めた期間と物差しで振り返ります。
ホワイトボードを使って話し合うチーム

営業代行か自社営業かを決める前のチェックリスト

  • 営業を強めたい目的と期間を書き出したか
  • 営業の段階ごとに、任せるか自社で行うかを決めたか
  • 社内に残したいもの(お客様との関係、経験、判断)を決めたか
  • 同じ期間と範囲で、両方の費用を比べたか
  • 代行に任せる場合、指示を伝える窓口と相手の責任者を決めたか
  • 報告と記録を受け取る項目と頻度を決めたか
  • お客様の情報の渡し方と、終わったあとの扱いを決めたか
  • 取れた約束や申込みを受け止める社内の担当者を決めたか
  • 試す期間と、見直す時期を決めたか

会社の選び方は営業代行の選び方に、契約書で確かめる項目は販売代行の契約の確認項目にまとめています。

よくある質問

営業代行に任せると、自社に営業の経験が残らないのではありませんか?

任せ方によります。報告に、断られた理由、お客様からよく出た質問、伝わりやすかった説明を入れてもらうと、経験を社内に移せます。定例の打ち合わせに社員が出る、記録やトークの台本を契約が終わったあとも使えるよう決めておく、といった工夫もあります。

営業代行と自社営業では、どちらの費用が安くなりますか?

一概には言えません。短い期間や、人数を増やしたり減らしたりする営業では営業代行のほうが費用をおさえられることがあり、長く続ける営業では自社営業のほうが割安になることもあります。同じ期間と範囲で、採用や教育の費用、別にかかる費用まで足して比べましょう。

小さな会社でも、営業代行を使えますか?

会社の大きさより、任せる範囲と期間が合うかが大事です。営業の流れの一部だけや、期間を区切って任せる形もあります。社内の窓口になる人の時間を確保できるかも、あわせて考えましょう。

営業代行から自社営業に切り替えるときは、何をすればよいですか?

お客様の記録、商談の進み具合、トークの台本や資料を引き継いでもらいます。契約の終わりの時期と予告の期間を確かめ、お客様への連絡の仕方も決めておきます。社員が育つまでの間、一部だけを代行に残す方法もあります。チームの育て方は販売チームの育て方も参考にしてください。

代行のスタッフと、自社の社員が一緒に動いてもよいですか?

同じ売場や同じ取引先で一緒に動くことは、それだけで問題になるものではありません。ただし、一緒に動くうちに社員が代行のスタッフへ直接指示を出す形になると、偽装請負と判断されるおそれがあります。指示は、受託した会社の責任者を通して伝えます。役割の分け方と、お客様にどう名乗るかを、始める前に決めておきましょう。

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