法人を訪問する営業のマナー|アポから辞去・お礼まで
法人を訪問する営業のマナーは、相手の会社の時間と場所をお借りしていることを、行動で示すことに尽きます。具体的には、事前に約束を取って日があけば確認の連絡を入れる、約束の時刻に遅れずに着く、建物に入る前にコートを脱ぐ、受付で社名と名前と約束の相手をはっきり伝える、勧められてから座る、用件を簡潔に話して長居をしない、帰ったらお礼を伝える、という流れです。この記事では、訪問の全体像、訪問の前の準備、当日の動き方、場面ごとの比べる表、気をつけたいことと失敗の例、チェックリストの順にまとめます。

訪問営業のマナーとは?どこからどこまでを考えればよいですか?
訪問営業のマナーというと、受付や応接室でのふるまいを思い浮かべる方が多いかもしれません。実際には、約束を取る電話から、訪問のあとのお礼までが一続きです。厚生労働省のキャリアコンサルタント向けの資料でも、「訪問するとき」のマナーとして、アポイントの取り方、訪問先への到着、受付や応接室での対応、名刺交換が挙げられています。
訪問の全体の流れ
- 約束を取る:日時、用件、人数、所要時間を決めます。
- 前日までに準備する:資料、名刺、道順、身だしなみを整え、日があいた場合は確認の連絡を入れます。
- 到着して受付をする:ゆとりをもって着き、受付で名乗ります。
- 応接室で待ち、あいさつと名刺交換をする:勧められてから座り、相手が来たら立ってあいさつします。
- 商談をする:時間のお礼を伝え、用向きを話してから本題に入ります。
- 辞去する:予定の時間内に切り上げ、お礼を伝えて帰ります。
- お礼と記録:お礼の連絡を送り、決まったことを記録します。
個人のお宅を訪ねる場合との違い
この記事は、会社やお店などの法人を訪ねる場合を扱います。個人のお宅を訪ねて契約の勧誘をする場合は、特定商取引法の「訪問販売」の決まりがかかります。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、勧誘の前に事業者の名称、勧誘の目的であること、商品などの種類を告げること(同法第3条)、契約を結ばない意思を示した人に、そのまま勧誘を続けたり改めて勧誘したりしないこと(同法第3条の2)などが定められています。会社やお店との取引でも、主に家庭用や個人用に使う契約では決まりがかかることがあり、電話でアポイントを取るときの基本でも触れています。詳しくは所管の窓口や専門家にご確認ください。

訪問の前に、何を準備すればよいですか?
約束の取り方
鹿児島労働局のハローワークの資料では、電話や手紙で事前に訪問の了解を得ること、訪問の日時は相手に合わせるのが原則であることを挙げています。いきなりの訪問は相手の迷惑になりかねないとしています。早朝や深夜、昼食どきの訪問は避け、用件が相手の勤務時間内に終わるように、退社時刻の直前も避けるよう勧めています。
約束を取るときは、日時のほか、用件、訪問する人数、おおよその所要時間も伝えます。同じ資料では、訪問を受ける側がこれらを正確に確かめるよう説明しています。訪ねる側から先に伝えておくと、相手は会議室の予約や、同席する人の調整がしやすくなります。電話での約束の取り方は電話でアポイントを取るときの基本で紹介しています。
前日までの確認
約束から訪問まで期間が長くなった場合は、当日か前日に確認の電話を入れておくよう、同じ資料は勧めています。確認の連絡では、日時と場所、参加する人の名前、持って行く資料を伝えると、相手も準備がしやすくなります。
持ち物と身だしなみ
- 名刺:汚れや折れのないものを、名刺入れに多めに入れておきます。
- 資料:相手の人数分に予備を加えて用意し、説明の順にそろえておきます。
- 筆記用具とメモ:聞いたことをその場で書き留められるようにします。
- 道順と入館の方法:地図、最寄りの駅や駐車場、受付の場所を確かめます。
- 身だしなみ:服装、髪、靴の汚れを、出発の前に確かめます。
鹿児島労働局の資料でも、書類や資料の準備に加え、出発の前に名刺、服装、頭髪、靴などを確かめ、地図も確認するよう挙げています。
移動と到着の時間
初めての場所へ行くときは、渋滞や駐車場を探す時間も考えて、ゆとりをもって出発します。同じ資料では「5分前必着」を原則とし、万一遅れそうなときは事前に連絡するよう説明しています。早く着いたときは、近くで時間を調整し、約束の時刻に合わせて受付に向かうと、相手の予定を乱さずにすみます。

当日は、どんな順番で動けばよいですか?
建物に入る前
福島労働局のビジネスマナーの資料では、寒い時期でも、社屋に入る前にコートを脱ぐのがマナーとしています。携帯電話は音が鳴らない設定にし、身だしなみを最後に確かめてから入ります。
受付
受付では、まず社名と名前を名乗り、約束があること、相手の部署と名前を伝えます。たとえば「○○株式会社の△△と申します。本日10時に、営業部の□□様とお約束をいただいております」のように伝えます。鹿児島労働局の資料でも、受付では社名と氏名を名乗ってから、約束の有無と相手の部署や名前を、正確に礼儀正しく伝えるよう説明しています。入館証の記入や、受付の機械の操作が要る会社もあるので、案内に従いましょう。
部屋まで案内を受けるとき
鹿児島労働局の資料では、案内する側の心得として、廊下では来客の斜め少し前を歩き、歩く速さを来客に合わせること、エレベーターでは上位の人が先に乗り、先に降りるのが原則であることを挙げています。訪ねた側は、この流れに合わせて案内に従い、先を勧められたら会釈して進みます。案内してくれた方にも、お礼を一言伝えましょう。
応接室で待つとき
案内された部屋では、勧められてから座ります。東京都の外国人材採用ナビセンターのページでは、目上の人やお客様は出入り口から遠い「上座」に座り、いちばん目下の人は出入り口に近い席に座るのが基本と説明しています。訪ねた側はお客様として上座を勧められることが多いので、勧められた席に座ります。鹿児島労働局の資料では、待たされても歩き回らないこと、あいさつは立ってすることを挙げています。相手が部屋に入ってきたら、立ち上がってあいさつしましょう。
あいさつと名刺交換
あいさつでは、まず「本日はお時間をいただき、ありがとうございます」と時間のお礼を伝えます。名刺交換は、訪問した側から先に差し出します。訪ねた側も相手側も複数のときは、上位の人から順に交換します(福島労働局の資料)。渡し方と受け取り方の細かな手順は名刺交換のマナーの基本にまとめています。
商談
鹿児島労働局の資料では、お礼のあとに用向きを伝えてから本題に入り、話は要領よく簡潔にするよう勧めています。だらだらとした前置きは相手を不快にさせるとしています。話す順番の組み立て方は営業トークの組み立て方、聞き取りの準備は商談のヒアリングシートの作り方が参考になります。
同じ資料は、座り方や聞き方についても、次の点を挙げています。
- 足を組まず、そり返らずに、やや前に傾いた姿勢で座る
- 相手をじっと見つめすぎず、そらしすぎず、自然に視線を合わせる
- うなずきやあいづちを入れる
- 話をさえぎって質問しない
- 「はい・いいえ」で答えられる質問と、相手に考えてもらう質問を使い分ける
- 話が長くなったら、要点を整理して簡潔にまとめる
辞去
用件がすんだら長居をせず、予定の時間内に切り上げます。慣れた取引先でも長居は禁物で、話がまとまらなかったときも「ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」とさわやかに辞去するよう、鹿児島労働局の資料は勧めています。帰る前に、次に誰が何をいつまでにするかを相手と確かめておくと、あとの連絡がスムーズです。

場面ごとの「すること」と「避けたいこと」を表で比べると?
訪問の場面ごとに、することと避けたいことを並べます。迷ったときの見直しに使ってください。
| 場面 | すること | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 約束を取る | 日時は相手に合わせ、用件、人数、所要時間を伝える | 約束なしで訪ねる。早朝、昼食どき、退社時刻の直前を指定する |
| 前日まで | 日があいたら確認の連絡を入れ、資料と名刺をそろえる | 資料の部数が足りないまま出かける |
| 到着 | ゆとりをもって着き、約束の時刻に合わせて受付に向かう | 遅れそうなのに連絡をしない |
| 建物に入る | 入る前にコートを脱ぎ、携帯電話の音を消す | コートを着たまま受付に向かう |
| 受付 | 社名、名前、約束の有無、相手の部署と名前を伝える | 名乗る前に用件を話し始める |
| 応接室 | 勧められてから座り、相手が来たら立ってあいさつする | 勧められる前に座る。部屋の中を歩き回る |
| 名刺交換 | 訪問した側から、名乗りながら差し出す | 汚れた名刺や、ズボンのポケットから出した名刺を渡す |
| 商談 | 時間のお礼、用向き、本題の順に、簡潔に話す | 長い前置き。相手の話をさえぎる |
| 辞去 | 予定の時間内に切り上げ、次の一歩を確かめてお礼を言う | 用件がすんだあとの長居 |
お辞儀の使い分け
福島労働局の資料では、お辞儀を状況に応じて3種類に使い分けると説明しています。どのお辞儀でも、背すじを伸ばしたまま上体を腰から倒し、首だけを曲げないこと、自分の足元を見ないことが共通の注意点です。
| 種類 | 上体を倒す角度の目安 | 使う場面の例 |
|---|---|---|
| 会釈 | 15度 | 部屋に入るときと出るとき、案内をするときやお茶を出すときなど |
| 敬礼 | 30度 | お客様の送り迎え、感謝を伝えるとき |
| 最敬礼 | 45度 | 深い感謝やおわびの気持ちを伝えるとき |

訪問で気をつけたいことは?よくある失敗は?
言葉づかい
社外の人と話すときは、自社の人のことは上司であっても謙譲語で話します。福島労働局の資料では、「佐藤部長は、そのようにおっしゃっていました」ではなく、「部長の佐藤は、そのように申しておりました」とする例を挙げています。文化庁の「敬語の指針」では、「伺う」は自分の側から相手に向かう動作に使う謙譲語なので、「御社に伺います」のように自分の動作に使い、相手の動作には使わないと説明しています。
訪問先で見聞きしたこと
応接室や通路では、ほかの会社の資料や社内の掲示が目に入ることがあります。訪問先で見聞きしたことは、社外で話したり、許可なく写真に撮ったりしないようにします。入館証の着け方や、立ち入ってよい場所など、訪問先の決まりにも従います。
お礼の連絡には、何を書けばよいですか?
お礼の連絡は、時間をもらったことへの感謝だけで終わらせず、話した中身の確認にも使います。次の4点を短く書くと、相手が社内で共有しやすくなります。
- 時間をいただいたことへのお礼
- その日に話した要点
- 約束した宿題と、その期限
- 次に会う予定や、次の連絡の時期
よくある失敗
- 時間の読み違い:受付から会議室までの移動や、入館の手続きに時間がかかり、約束の時刻を過ぎてしまう。大きなビルでは、受付の場所と入館の方法を前日までに確かめておきます。
- 名刺を切らす:相手が思ったより多く、名刺が足りなくなる。名刺入れには多めに入れておきます。
- 相手の名前の読み違い:名刺を受け取ったときに読み方を確かめず、商談の途中で間違える。読めないときは、その場で尋ねます。
- 話が長い:説明に時間を使い、相手の質問や次の一歩を決める時間がなくなる。説明は要点に絞り、質問の時間を残します。
- 次の一歩を決めずに帰る:「検討します」で終わり、その後の連絡のきっかけがなくなる。帰る前に、誰が何をいつまでにするかを確かめます。
- お礼の連絡が遅れる:何日もたってからお礼を送り、話の中身を相手が忘れている。お礼は、できればその日のうちに送ります。

法人訪問のチェックリスト
前日まで
- 日時、場所、用件、人数、所要時間を相手と確かめた
- 約束から日があいた場合は、確認の連絡を入れた
- 資料を人数分と予備まで用意した
- 名刺を多めに名刺入れに入れた
- 道順、駐車場、受付の場所、入館の方法を調べた
当日の出発前と到着時
- 服装、髪、靴を確かめた
- ゆとりをもって出発した
- 遅れそうなときに連絡する相手の番号を控えた
- 建物に入る前にコートを脱ぎ、携帯電話の音を消した
- 受付で社名、名前、約束の有無、相手の部署と名前を伝えた
訪問中
- 勧められてから座った
- 相手が来たら立ってあいさつし、時間のお礼を伝えた
- 訪問した側から名刺を差し出した
- 用向きを伝えてから本題に入り、簡潔に話した
- 予定の時間内に切り上げ、次の一歩を確かめた
訪問のあと
- お礼の連絡を送った
- 約束した宿題と期限を記録した
- 話の中身を、日報や顧客の記録に残した
記録の残し方は販売の日報と報告書の書き方や顧客管理の基本で紹介しています。
よくある質問
約束の何分前に着けばよいですか?
鹿児島労働局のハローワークの資料では「5分前必着」を原則としています。ただし、大きなビルでは、受付から会議室まで時間がかかることがあります。建物の近くには余裕をもって着き、受付に向かう時刻を約束の時刻に合わせて調整すると安心です。早すぎる訪問は、相手の予定を乱すことがあります。
遅れそうなときは、どうすればよいですか?
遅れると分かった時点で、相手に電話で連絡します。おわびとともに到着の見込みの時刻を伝え、そのまま訪ねてよいか、日を改めるかを相手に決めてもらいます。連絡が遅れるほど、相手が予定を組み直しにくくなります。
コートは、いつ脱げばよいですか?
建物に入る前に脱ぐのがマナーとされています(福島労働局の資料)。脱いだコートはたたんで腕にかけて持ち、帰るときも建物を出てから着ると丁寧です。
相手が複数のときは、誰から名刺交換をしますか?
訪ねた側も相手側も複数のときは、上位の人から順に交換します(福島労働局の資料)。受け取った名刺の置き方や、上司と一緒のときの順番は名刺交換のマナーの基本で紹介しています。
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