販売チームの育て方|販売員を育成する方法と計画

販売チームを育てるには、「目指す姿を段階で示す」「一人ひとりの今の力を把握する」「OJT・研修・自習を組み合わせた計画を立てる」「振り返りの場を定期的に持つ」の4つが土台になります。教える人によって内容が変わらないよう、教えることを書き出しておくことも欠かせません。この記事では、店頭や催事で販売をする店長、リーダー、販促担当の方に向けて、販売員の育成の方法を、言葉の意味、育てる手順、育成の方法の比べ方、研修の時間の扱いなどの注意点、よくある失敗、育成計画のチェックリストの順にまとめます。

フリップチャートの前で研修を受ける人たち

販売員の育成とは?OJT・OFF-JT・自己啓発は何が違うのですか?

販売員の育成は、商品の知識、接客の技術、売場の運営、手続きなど、販売の仕事に必要な力を、計画を立てて身につけてもらう取り組みです。育成の方法は、大きく OJT・OFF-JT・自己啓発の3つに分けられます。厚生労働省の能力開発基本調査では、計画的な OJT も含めて、次のように説明されています。

  • OJT:日常の業務に就きながら行われる教育訓練
  • 計画的な OJT:OJT のうち、計画書を作るなどして、教える人、教わる人、期間、内容を具体的に決め、段階的に続けて行うもの
  • OFF-JT:業務の指示に基づいて、通常の仕事をいったん離れて行う教育訓練(研修)。社内で集まって行う研修や、社外の研修機関の研修などがある
  • 自己啓発:働く人が、仕事に関する力を自分から伸ばすための活動

売場での育成は、先輩が隣で教える OJT が中心になりがちです。ただ、計画のない OJT は、教える人や忙しさによって中身が変わりやすくなります。教える内容と順番を決めた「計画的な OJT」にすることが、チームとして育てる第一歩です。

育成に悩む職場は多い

厚生労働省の令和7年度の能力開発基本調査(2026年7月公表)では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所は80.1%でした。問題の中身では、「指導する人材が不足している」(59.5%)が最も多く、「人材を育成しても辞めてしまう」(51.6%)、「人材育成を行う時間がない」(45.5%)が続いています。また、計画的な OJT を正社員に行った事業所は60.6%、正社員以外に行った事業所は25.1%で、雇用の形によって育成の機会に差があることも分かります。

指導役が足りない、時間がないという悩みは、販売の現場でもよく聞かれます。次の節では、限られた人と時間で育成を進める手順を紹介します。

フリップチャートを使って話し合うチーム

販売チームは、どんな手順で育てればよいですか?

  1. 目指す姿を段階で決める:新人、一人で接客できる人、売場をまとめる人など、段階ごとにできてほしいことを書き出す
  2. 一人ひとりの今を把握する:段階ごとの項目に沿って、本人と指導役がそれぞれ評価し、差を確かめる
  3. 育成の計画を立てる:誰が、誰に、いつまでに、何を教えるかを決める
  4. 教える:説明する、やって見せる、やってもらう、振り返る、の順に進める
  5. 振り返る:良かった点と、次に直す点を具体的に伝える
  6. 次の段階に進める:できるようになったことを記録し、任せる範囲を広げる。育った人には、次の指導役を任せる

目指す姿は、どう決めればよいですか?

目指す姿を決めるときは、厚生労働省の職業能力評価基準が参考になります。たとえば百貨店業の「販売」の職種では、販売の力をおおむね次の4つのレベルに分けています(内容は要約)。

レベル 目安(要約)
レベル1 基本的な販売の知識と技術をもち、日々の接客を確実にこなし、お客様の要望に応えられる
レベル2 幅広い販売の知識と技術をもち、自分で問題を解きながら接客を進め、お客様の満足につなげられる
レベル3 幅広く専門的な知識と技術をもち、お客様の期待に応える接客を進め、高い満足を実現できる
レベル4 体系的で網羅的な知識と技術をもち、お客様に喜びや感動を与える接客を進め、後に続く人の目標になれる

このままでは自社の売場に合わないこともあるため、「レベル1ならレジと包装が一人でできる」「レベル2なら商品の違いを比べて説明できる」のように、自社の言葉で具体的な行動に書き直して使います。職業能力評価基準は、業種ごとに厚生労働省のホームページで公開されています。

一人ひとりの今は、どう把握しますか?

段階ごとの項目を表にまとめた「スキル表」を作ると、全員の力を一覧で見られます。項目の例は、次のとおりです。

  • 商品の知識(特徴、違い、よく聞かれる質問への答え)
  • 接客(あいさつ、声かけ、話の聞き方、説明、見送り)
  • レジや手続き(会計、返品、取り置き、申込みの書類)
  • 売場づくり(陳列、補充、価格の表示、清掃)
  • 報告と連絡(日報、引き継ぎ、困りごとの相談)

本人の評価と指導役の評価を並べると、本人が気づいていない得意なことや、思い込んでいる苦手なことが見えてきます。

指導役は、どんな教え方をするとよいですか?

百貨店業の職業能力評価基準の「販売指導」には、教える立場の人に求められる行動として、次のような例が挙げられています(内容は要約)。

  • 教える相手の個性や強み、弱みを把握し、相手に合わせて教え方を変える
  • 接客を振り返り、良かった点は褒め、直したほうがよい点は助言する
  • マナー違反などの問題は、あいまいにせず、きちんと正す
  • 日ごろから話しかけ、相談しやすい関係をつくる
  • 自分で工夫する習慣がつくよう、時には答えをすぐに教えない
  • 言葉にしにくいコツは、自分の体験を交えて伝える
カウンターで客と話すカフェの店員

OJT・研修・自習は、どう組み合わせればよいですか?

育成の方法には、それぞれ向き不向きがあります。主な方法を比べると、次のとおりです。

方法 進め方 向いている内容 良い点 気をつけたい点
OJT(売場で教える) 営業中の売場で、指導役が隣について教える 接客の流れ、レジ、売場の決まり 実際のお客様や商品で覚えられる 教える人と忙しさで中身が変わりやすい。計画と記録が要る
OFF-JT(研修) 仕事をいったん離れ、集まって学ぶ 会社の決まり、法令、商品の全体像、接客の基本 全員に同じ内容を伝えられる 売場から人が抜ける。学んだことを売場で使う場がないと身につきにくい
ロールプレイング お客様役と販売員役に分かれて練習する 声かけ、説明、断られたときの受け答え お客様を待たせずに何度も練習できる 台本どおりの練習で終わると、実際の会話で使いにくい
自己啓発(自習) 資料、動画、資格の勉強などで、自分で学ぶ 商品の細かな知識、業界の知識 自分のペースで学べる 続けにくい。会社が指示して行わせる場合は、労働時間の扱いに注意する

段階ごとの組み合わせの例は次のとおりです。

段階 中心にする方法 例
入ったばかり 研修と、計画的な OJT 初日に決まりと安全を研修で伝え、売場では指導役について流れを覚える
一人で接客を始めたころ OJT とロールプレイング 接客のあとに短く振り返り、うまくいかなかった場面を練習する
慣れてきたころ 自己啓発と、任せる仕事を広げる 担当する商品を決めて詳しくなってもらう。売場づくりの一部を任せる
指導役になるころ 教える立場の研修と、教えた経験の振り返り 新人の指導を担当し、教え方を先輩や店長と一緒に振り返る

練習の進め方は、コラム「接客ロールプレイングのやり方」、商品知識の覚え方は「新しい商品を売る前の商品知識の覚え方」で紹介しています。

にぎやかに話し合う同僚たち

販売員を育てるときに、気をつけたいことは?

研修や勉強会の時間は、労働時間になることがあります

厚生労働省の資料(「研修・教育訓練」に関する労働時間の考え方)では、労働時間を、使用者の指揮命令のもとに置かれている時間と説明しています。そのうえで、研修や教育訓練の扱いを次のように示しています(2026年11月時点)。

  • 業務として義務づけられていない、自由に参加できる研修であれば、その時間は労働時間にあたらない
  • 参加しないと減給の対象になる、参加しないと仕事ができないなど、事実上参加を強いられている場合は、労働時間にあたる
  • 所定の時間内など、業務中に行う教育や訓練は、基本的に労働時間にあたる

同じ資料では、小売業の例として、形の上では自由参加でも、店の商品の説明が主な内容で、受けることが正社員になる条件とされ、参加できるようにシフトが調整されていた研修は、事実上の強制として労働時間にあたると考えられる事例が紹介されています。営業時間の前後に行う勉強会や、自宅での学習を指示する場合は、扱いを前もって確かめておきましょう。個別の扱いは、都道府県労働局や労働基準監督署に相談できます。

雇用の形で、育成の機会に差をつけすぎない

パートタイム・有期雇用労働法では、正社員に行う、仕事に必要な力を身につけるための教育訓練について、仕事の内容が正社員と同じパートタイムや有期雇用の人にも、すでにその力をもっている場合などを除いて行わなければならないとしています(第11条第1項)。そのほかの人についても、仕事の内容や意欲、能力などに応じて教育訓練を行うよう努めることとされています(第11条第2項)。短い時間で働く人が多い売場では、研修の時間帯や方法を工夫して、学べる機会をそろえましょう。

育成の計画と担当者を決めておく

職業能力開発促進法では、事業主は、働く人の力が段階的、体系的に伸びるよう計画を作ること(第11条)と、その計画づくりや相談を担う「職業能力開発推進者」を選ぶこと(第12条)に努めることとされています。小さな店でも、育成の計画を1枚にまとめ、育成を見る担当を決めておくと、忙しい時期にも育成が止まりにくくなります。

指導の言葉づかいに気をつける

労働施策総合推進法では、職場での立場の強さを背景にした言動で、業務に必要で相当な範囲を超え、働く人の就業環境を害するもの(パワーハラスメント)を防ぐため、事業主に相談の体制を整えるなどの措置を求めています(2026年11月時点)。厳しく教えることと、人格を否定することは違います。直してほしい行動を具体的に伝え、人前で長く叱らないことを、指導役の決まりにしておきましょう。

公的な支援もあります

計画に沿って職業訓練などを行った事業主に、訓練の経費などの一部を助成する「人材開発支援助成金」や、働く人が指定の講座を修了したときに費用の一部が支給される「教育訓練給付金」があります。条件や手続きは変わることがあるため、都道府県労働局やハローワークにお問い合わせください。

会議室で説明を聞く人たち

販売員の育成で、よくある失敗は?

  • 「見て覚えて」で終わる:見るだけでは、何が大事かが伝わりにくい。説明する、やって見せる、やってもらう、振り返る、の順で教える
  • 教える人によって内容が違う:教えることと順番を書き出し、指導役どうしでそろえる
  • 一度に詰め込む:初日に全部を教えようとすると、覚えきれない。段階ごとに、その時期に覚えることを絞る
  • できていない所だけを指摘する:良かった点を先に具体的に伝え、直す点は1つか2つに絞る
  • 指導役に時間を渡さない:指導役が自分の売上も同じだけ求められると、育成が後回しになる。教える時間をシフトに組み込む
  • 売上の数字だけで育ちを測る:売上は、商品や時期、売場の場所にも左右される。スキル表の項目で、できるようになったことを確かめる
  • 育成の記録が残らない:何をどこまで教えたかが分からないと、担当が替わったときに教え直しや教え漏れが起きる

育ちを確かめる目標の立て方は、コラム「店頭販売の目標と KPI の決め方」で紹介しています。

オフィスで打ち合わせをするチーム

育成計画のチェックリスト

確認 項目
□ 段階ごとに、できてほしいことが行動の言葉で書かれている
□ 全員の今の力を、スキル表で一覧にしている
□ 誰が、誰に、いつまでに、何を教えるかが決まっている
□ 教えることと順番が書き出され、指導役のあいだでそろっている
□ OJT、研修、ロールプレイング、自習の組み合わせが決まっている
□ 指導役が教える時間が、シフトに入っている
□ 研修や勉強会の時間の扱い(労働時間かどうか)を確かめている
□ 短い時間で働く人も、学べる機会がある
□ 振り返りの場が、定期的に設けられている
□ できるようになったことを記録し、任せる範囲を広げている
□ 指導の言葉づかいの決まりと、相談の窓口がある

育成とあわせて、働き続けたくなる職場づくりも大切です。コラム「販売スタッフのモチベーションを保つ工夫」もあわせてご覧ください。

よくある質問

新人が一人で接客できるようになるまで、どれくらいかかりますか?

扱う商品や売場の決まり、勤務の日数によって変わるため、決まった期間はありません。期間で区切るより、「レジが一人でできる」「よく聞かれる質問に答えられる」など、スキル表の項目ができたかどうかで段階を進めるほうが、本人にも分かりやすくなります。

指導役が足りないときは、どうすればよいですか?

一人の指導役がすべてを教えるのではなく、項目ごとに教える人を分ける方法があります。たとえばレジは経験のある人、商品の説明は担当の人、といった分け方です。全員に同じことを伝える内容は研修や資料にまとめ、売場での OJT は実際の接客に絞ると、指導役の負担を減らせます。

短い時間だけ働くスタッフも、同じ研修を受けたほうがよいですか?

仕事の内容が同じであれば、仕事に必要な研修は同じように受けてもらうことが基本です。法律でも、正社員に行う仕事に必要な教育訓練は、仕事の内容が同じパートタイムや有期雇用の人にも、原則として行うこととされています。研修を短く分けたり、勤務の時間帯に合わせて開いたりして、受けやすくしましょう。

販売の資格や検定は、育成に役立ちますか?

業界団体などが設けている販売の資格や検定は、学ぶ範囲が整理されているため、自己啓発の目標として使えます。ただし、資格を取ることがそのまま売場で使える力になるとは限りません。学んだことを売場で試し、振り返る場を組み合わせると、身につきやすくなります。

販売の現場づくりや人の育て方を外部と一緒に考えたいときは、営業代行のページで当社の取り組みを紹介しており、ご相談はお問い合わせフォームから受け付けています。

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