商談のヒアリングシートの作り方|聞く項目と使い方

商談のヒアリングシートは、商談で聞くことを前もって並べておく用紙や入力画面です。作るときの要点は、「商談の目的から逆算して項目を選ぶ」「項目をまとまりに分けて、答えやすい順に並べる」「お客様の言葉と担当者の考えを分けて書ける欄にする」の3つです。この記事では、法人向けの営業や店頭販売の担当者に向けて、ヒアリングシートの役割、作る手順、聞く項目の例、紙と表計算と顧客管理の仕組みの比べ方、個人情報の扱い、よくある失敗、使う前のチェックリストまでを順にまとめます。法令は、一般的な内容に絞って紹介します。

メモを取りながら話を聞く女性

ヒアリングシートとは?何のために使うのですか?

ヒアリングシートは、商談や相談の場で、お客様の状況や困りごと、希望、条件を聞き取るための記録用紙です。紙に印刷したもののほか、表計算ソフトのファイル、入力フォーム、顧客管理の仕組みの入力画面として作ることもあります。

ヒアリングシートを使う主な目的は、次の4つです。

  • 聞き漏れを防ぐ:提案に必要なことを、1回の商談で聞き終えやすくなる
  • 商談の質をそろえる:担当者の経験の差があっても、同じ順番と観点で話を聞ける
  • 提案の材料にする:聞いた内容を、提案書や見積りにそのまま生かせる
  • 社内で共有する:担当者が休んだり替わったりしても、話の続きから始められる

厚生労働省の職業能力評価基準(営業の職種)では、営業の基本として、アプローチ、プレゼンテーション、クロージングといった商談の技術や、顧客訪問の報告書を遅れずに作ることが挙げられています。ヒアリングは、このうちアプローチと提案のあいだにあたり、提案の中身を決める段階です。

アンケートや申込書とは、どう違いますか?

アンケートや申込書は、お客様が自分で書くことを前提にした用紙です。ヒアリングシートは、主に担当者が会話をしながら書き込むものです。会話の中で質問を変えたり、答えを深めたりできる点が違います。ただし、商談の前にお客様に一部を書いてもらう形もあります。その場合は、お客様に書いてもらう欄と、担当者が書く欄を分けておくと使いやすくなります。

クリップボードに書き込む手元

ヒアリングシートは、どんな手順で作りますか?

ヒアリングシートは、次の6つの手順で作ると、項目の選び漏れが少なくなります。

  1. 使う場面を決める:初回の商談か2回目以降か、法人か個人か、対面かオンラインかを決める
  2. 提案に必要な情報を書き出す:提案書や見積りを作るときに、何が分かっていないと困るかを先に並べる
  3. 項目をまとまりに分ける:基本情報、現状、課題、目指す姿、条件、次の約束などに分ける
  4. 質問の言葉にする:項目名のままでなく、実際に口にする聞き方を書いておく
  5. 欄の形を決める:選択肢で答えてもらう欄、自由に書く欄、数字を書く欄を使い分ける
  6. 試しに使って直す:社内で練習したり、数件の商談で使ったりして、聞きにくい項目や使わない項目を直す

聞く項目の基本のまとまり

扱う商品やサービスによって細かな項目は変わりますが、法人向けの商談では、おおむね次のまとまりが土台になります。

まとまり 聞く内容 質問の例
基本情報 会社名、部署、担当者、連絡先、業種、規模 「ご担当の部署と、主な業務を教えていただけますか」
現状 今の進め方、使っている道具やサービス、関わっている人数 「今はどのような方法で進めていますか」
課題 困っていること、困っている理由、困りごとが起きる場面 「今の方法で、手間がかかっている所はありますか」
目指す姿 解決したあとにどうなっていたいか、重く見ている点 「うまくいったら、どんな状態になっているのが理想ですか」
予算 予算の有無と目安、費用の考え方 「ご予算の目安があれば、その範囲でご提案します」
決め方 最終的に決める人、社内の手順、関わる部署 「導入を決めるまでに、どなたのご確認が必要ですか」
時期 始めたい時期、決めたい時期、その理由 「いつごろまでに始められるとよいですか」
比べている先 ほかに検討している方法、自社で対応する案 「ほかにも検討されている方法はありますか」
次の約束 次に会う日、こちらが用意するもの、相手に確かめてもらうこと 「次回までに、提案の案をお持ちしてもよろしいですか」

店頭で個人のお客様の相談を受けるときは、会社名や決め方の項目の代わりに、使う人、使う場面、今使っているもの、重く見ている点(価格、使いやすさ、手間など)を中心にします。

質問は、どんな順番に並べるとよいですか?

質問は、答えやすいものから、考えて答えるものへと並べます。基本は「事実」「困りごと」「理想」「条件」「次の約束」の順です。

  1. 今の状況など、事実をたずねる質問から始める
  2. 困っていることや、その理由をたずねる
  3. 解決したあとの姿をたずねる
  4. 予算、決め方、時期などの条件をたずねる
  5. 次に何をするかを、その場で決める

予算や決め方は、初めに聞くと身構えられやすい項目です。困りごとや理想を聞き、相手の役に立ちたいことが伝わってから聞くと、答えてもらいやすくなります。質問の種類(自由に答えてもらう質問、選んで答えてもらう質問、確かめる質問)は、コラム「店頭販売の声かけと接客の基本」で紹介しています。

欄のつくり方

  • 選択肢の欄:業種、規模、時期など、答えが分かれやすい項目は選択肢にしておくと、あとで集計しやすい
  • 自由に書く欄:困りごとや理想は、選択肢にせず、広めの欄にする
  • お客様の言葉の欄:大事な発言は、言い換えずにそのまま書く欄を設ける
  • 担当者の気づきの欄:担当者が感じたことや推測は、お客様の言葉と分けて書く
  • 次の行動の欄:誰が、何を、いつまでにするかを書く欄を、シートの最後に置く
  • 必須と任意の印:その回に聞き終えたい項目と、話の流れで聞けばよい項目に印を付けて分ける
ノートパソコンとメモ帳での打ち合わせ

紙・表計算・顧客管理の仕組み、どれで作るとよいですか?

ヒアリングシートの形式には、主に次の4つがあります。商談の件数、共有したい人の数、持ち歩くかどうかで選びます。

形式 向いている場面 良い点 気をつけたい点
紙(印刷した用紙) 対面の商談、店頭の相談、件数が少ないとき すぐに作れる。会話を止めずに書ける。図や矢印も書き込める あとで入力し直す手間がある。紛失や置き忘れ、保管と廃棄の管理が要る
表計算ソフトや文書のファイル 少人数で共有したいとき、項目をよく直すとき 項目を直しやすい。一覧にして並べ替えられる ファイルが増えて最新版が分からなくなりやすい。置き場所と見られる人を決める必要がある
入力フォーム 商談の前にお客様に書いてもらうとき、オンラインの商談 答えがそのまま一覧になる。書き間違いが減る 入力の画面に利用目的を示す必要がある。項目が多いと途中でやめられやすい
顧客管理の仕組み(CRM)の入力画面 担当者が多いとき、商談が何回も続くとき 過去のやり取りや取引の履歴と一緒に見られる。進み具合を管理しやすい 導入と運用の手間がかかる。入力のルールを決めないと、書き方がばらばらになる

はじめは紙や表計算で作り、項目が固まってから顧客管理の仕組みに移す進め方もあります。どの形式でも、商談のあとに情報をどこへまとめるかを先に決めておくことが大切です。顧客管理で記録する項目については、コラム「顧客管理の基本|CRMで何を記録するか」で紹介しています。

法人向けと個人向けで、何が変わりますか?

観点 法人向けの商談 個人向けの相談(店頭など)
話す相手 担当者。決める人は別にいることが多い 本人。家族と相談して決めることもある
聞く中心 業務の課題、社内の手順、予算、時期 使う場面、困りごと、好み、予算の目安
決まるまでの期間 何回か商談を重ねることが多い その場で決まることも、持ち帰ることもある
シートの量 項目が多くなりやすい。回ごとに分けて聞く 短くまとめる。お客様を待たせない
特に気をつけること 相手の会社の内部の情報の扱い お客様個人の情報の扱いと、必要以上に聞かないこと
机を挟んで話をする2人

ヒアリングシートを使うときの注意点は?

個人情報の扱い

法人向けの商談でも、担当者の氏名や、氏名と結びついた連絡先は個人情報です。個人情報保護法では、個人情報を、生きている個人に関する情報で、氏名などによって特定の個人を見分けられるものとしています。ヒアリングシートに関わる主な決まりは次のとおりです(2026年11月時点)。

  • 個人情報を扱うときは、何に使うか(利用目的)をできる限りはっきり決める(第17条)
  • 本人から、書面や入力フォームなどで直接個人情報を受け取るときは、あらかじめ利用目的をはっきり示す(第21条第2項)
  • それ以外の方法で受け取ったときは、利用目的を前もって公表している場合を除き、すみやかに本人に知らせるか公表する(第21条第1項)
  • 集めた個人データが漏れたり、なくなったりしないよう、必要で適切な管理をする(第23条)

集めた情報を記録して使い続けるときの決まりは、コラム「顧客管理の基本|CRMで何を記録するか」でくわしく紹介しています。実際の場面では、次のような点に気をつけます。

  • 商談の前にお客様に書いてもらう用紙やフォームには、利用目的を書いておく
  • 印刷したシートは、持ち歩く枚数を必要な分にとどめ、置き忘れに気をつける
  • ファイルの置き場所と、見られる人を決めておく
  • 使い終わったシートの保管期間と、捨て方を決めておく
  • 提案に関係のない、個人的なことは聞かない

相手の会社の情報の扱い

商談では、相手の会社の売上、取引先、今後の計画など、外に出していない情報を聞くことがあります。秘密を守る約束(秘密保持の契約など)を結んでいる場合は、その内容に従います。不正競争防止法では、秘密として管理されていて、事業に役立つ技術上や営業上の情報で、世の中に知られていないものを「営業秘密」としています(第2条第6項)。聞いた情報は商談の目的の外で使わず、社内でも必要な人だけで共有します。

聞き方で気をつけること

  • シートを上から読み上げない。会話の流れに合わせて、聞く順番を入れ替える
  • 次々と質問を重ねない。答えを受け止めてから、次の質問に進む
  • メモを取ることを、最初にひと言伝えておく
  • 録音や録画をするときは、相手の了解を得る
  • 分からないことを聞かれたら、推測で答えず、調べてから答える

どの法令にあたるか、何が求められるかは、扱う情報や商談の形によって変わります。詳しくは所管の窓口や専門家にご確認ください。

クリップボードの書類を確かめる人

ヒアリングでよくある失敗は?

ヒアリングシートを作っても、使い方によっては商談がうまく進みません。よくある失敗と、その直し方は次のとおりです。

  • 項目が多すぎて、全部を聞こうとする:必須の項目を絞り、残りは次の商談で聞く。1回で聞き終えなくてもよいと決めておく
  • シートの順番どおりに聞いて、会話が途切れる:シートは聞き漏れを確かめるための道具と考え、話の流れを優先する
  • お客様の言葉を、担当者の言葉に書き換える:大事な発言はそのまま書く。言い換えると、提案の段階で意味がずれることがある
  • 予算と決める人を聞かずに提案する:提案のあとで「予算が合わない」「決める人が違う」と止まることがある。条件の項目は、聞きにくくても後回しにしすぎない
  • 次の約束を決めずに終わる:最後に「次に何をするか」をその場で決める。決まらないときも、連絡する日を決める
  • 書いたシートが担当者の手元に残る:商談のあと、決めた場所にまとめる。共有されないと、担当が替わったときに同じことを聞き直すことになる
  • シートを作ったまま直さない:使わない項目や、毎回聞きにくい項目は、定期的に見直す

聞いた内容をもとに提案を組み立てる方法は、コラム「営業トークの組み立て方|結論から伝える話し方」で紹介しています。

資料を見ながらメモを取る3人

作ったシートを確かめるチェックリスト

ヒアリングシートを使い始める前に、次の項目を確かめておきましょう。

確認 項目
□ 使う場面(初回か2回目以降か、法人か個人か)が決まっている
□ 提案書や見積りに必要な情報が、すべて項目に入っている
□ 項目が、基本情報、現状、課題、目指す姿、条件、次の約束などのまとまりに分かれている
□ 必須の項目と任意の項目が、見て分かるようになっている
□ 項目ごとに、実際に使う質問の言葉が書いてある
□ お客様の言葉と、担当者の気づきを分けて書ける
□ 最後に、次の行動(誰が、何を、いつまでに)を書く欄がある
□ お客様に書いてもらう用紙やフォームに、利用目的が書いてある
□ 商談のあと、シートをどこにまとめるかが決まっている
□ 保管の期間、見られる人、捨て方が決まっている
□ 社内で一度、練習に使ってみた

商談のあとにすること

  1. その日のうちに、聞いた内容を読み返し、書き漏れを足す
  2. 決めた場所(共有のファイルや顧客管理の仕組み)に記録する
  3. お礼の連絡をし、次の約束を確かめる
  4. 提案の準備を始め、足りない情報は次の商談で聞く項目として書き出す
  5. シートの使いにくかった点をメモし、見直しに生かす

商談の結果を報告にまとめる方法は、コラム「販売の日報と報告書の書き方」で紹介しています。

よくある質問

ヒアリングシートは、商談の前にお客様に渡してもよいですか?

渡してもかまいません。前もって書いてもらうと、当日は困りごとや理想など、会話で深めたいことに時間を使えます。ただし、項目が多いと負担になるため、事前に書いてもらうのは基本情報や現状など、すぐに答えられる項目にとどめます。個人情報を書いてもらう場合は、用紙やフォームに利用目的をはっきり示しておきます。

1回の商談で、どれくらいの項目を聞けばよいですか?

決まった数はありません。商談の時間と目的に合わせて、その回に聞く必須の項目を絞ります。初回は現状と課題を中心にし、予算や決め方は2回目以降に確かめる、といったように、回ごとに聞くことを分けてもかまいません。

予算を聞きにくいときは、どう聞けばよいですか?

お客様のためになる聞き方にすると、答えてもらいやすくなります。たとえば「ご予算の目安が分かれば、その範囲で一番合う案をお持ちします」と伝えます。金額が決まっていない場合は、「今の方法にかかっている費用と比べてどうか」など、考え方を聞くのも一つの方法です。

ほかの会社のひな形を、そのまま使ってもよいですか?

ひな形は、項目を考える手がかりになります。ただし、商品やお客様が違えば、必要な項目も変わります。自社の提案書や見積りに必要な情報から逆算して、項目を足したり削ったりして使いましょう。ひな形の文章をそのまま写すのではなく、自社の言葉で質問を書き直すと、商談で使いやすくなります。

商談の進め方や営業の体制について相談したいときは、営業代行のページで当社の取り組みを紹介しており、ご相談はお問い合わせフォームから受け付けています。

同じカテゴリの他の記事

催事・イベントの企画・運営、営業代行、店舗運営についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ