新しい商品を販売する前の商品知識の覚え方|覚える順番と練習

新しい商品を販売する前の商品知識は、お客様によく聞かれることから先に覚え、資料を読むだけでなく、実物に触れ、自分の言葉で説明する練習をすると身につきやすくなります。覚える中身は、特長、使い方、価格と条件、注意点、購入後の窓口などに分けると整理できます。分からないことをその場で言い切らず、確かめてから答えることも、商品知識の大事な一部です。この記事では、新しい商品の販売を任された方と、売場の人に教える立場の方に向けて、覚える範囲と順番、覚える手順、情報の集め方の比べ方、説明するときの注意点、よくある失敗とチェックリストをまとめます。

木材の見本を客に見せる販売員

販売で必要な商品知識とは?何を覚えればよいですか?

販売で必要な商品知識は、お客様が買うかどうかを決めるために知りたいことに答えられる知識です。商品の仕組みを詳しく知っていることより、お客様の質問に正確に答えられることが大事です。覚える中身は、次のように分けられます。

分類 中身 お客様に聞かれやすい質問の例
特長 何ができるか、どんな良さがあるか 「これは何が便利なのですか」
仕様 大きさ、重さ、素材、色、容量、対応する機器など 「ほかの色はありますか」「うちの機種で使えますか」
使い方・手入れ 使い始めるまでの手順、毎日の使い方、手入れや保管の仕方 「洗えますか」「設定は難しいですか」
価格・条件 価格、支払いの方法、契約の期間、解約や返品の条件 「月々いくらですか」「途中でやめられますか」
注意点 使えない場面、使うのを控える人、安全のための注意 「子どもが使っても大丈夫ですか」
合う人・合わない人 どんな人や使い方に向くか、向かないか 「私の使い方に合いますか」
同じ店のほかの商品との違い 前の型や、上位・下位の商品との違い 「前のものと何が違うのですか」
購入後の窓口 修理や問い合わせの受付、交換の条件 「壊れたらどこに連絡すればいいですか」

厚生労働省の職業能力評価基準(アパレル分野の販売)では、接客の能力の一つとして、商品の情報を常に集め、いつでもお客様の質問に的確に答えられるよう心がけることが挙げられています。必要な知識には、自社の商品の色、柄、素材、洗濯などの取り扱いの表示(絵表示)などが挙げられ、着心地やデザインによるサイズの違いをあらかじめ把握しておくことも、行動の基準に含まれています。扱う商品が変わっても、「お客様の質問に答えられるか」を軸に覚える範囲を決めるという考え方は同じです。

消費者契約法では、事業者は勧誘のときに、商品の性質に応じて、お客様の年齢や知識、経験などを考えたうえで、契約の内容について必要な情報を提供するよう努めることが定められています。商品知識は、お客様に必要な情報を正しく伝えるための土台です。

家具店で鏡台を見ながら話す客と店員

商品知識は、どんな順番で覚えればよいですか?

新しい商品の知識を、最初から全部覚える必要はありません。売場に出るまでの時間に合わせて、次の順で覚えます。

  1. 一言の説明:「誰の、どんな困りごとを、どう解決する商品か」を一言で言えるようにします。
  2. よく聞かれる質問:商品の持ち主の資料や、似た商品を売った経験から、聞かれそうな質問を選び、答えを覚えます。
  3. 間違えると困ること:価格、条件、注意点など、間違えて伝えるとお客様に不利益が出ることを、正確に覚えます。
  4. 合う人と合わない人:勧める相手と、勧めないほうがよい相手を言えるようにします。
  5. 仕様の細かいところ:細かい数字は、すべてを覚えるより、資料のどこを見れば分かるかを覚えます。

どこまで覚えればよいですか?

知識は、「何も見ずに答える」「資料を見て答える」「担当者に確かめて答える」の3つの深さに分けて覚えると、限られた時間でも準備が進みます。

深さ 向いている知識 準備すること
何も見ずに答える 一言の説明、よく聞かれる質問、主な価格と条件、大事な注意点 声に出して説明できるまで練習する
資料を見て答える 細かい仕様、組み合わせごとの料金、対応する機器の一覧など 資料の置き場所と、どのページに何があるかを覚える
担当者に確かめて答える めったに聞かれない質問、個別の事情で答えが変わること 誰に、どの方法で聞けばよいかを決めておく

深さを決めておくと、「全部を覚えなければ」と焦らずにすみます。分からない質問を受けたときの答え方も決まります。

店の棚に並んだ小びんの商品

商品知識を身につけるには、どんな手順で進めますか?

資料を読むだけでは、売場で話せるようにはなりません。読む、触れる、話す、確かめるを組み合わせて、次の手順で進めます。

  1. 全体をつかむ:商品の持ち主の資料や研修で、何のための商品か、誰に向けた商品かをつかみます。
  2. 表示と説明書を読む:商品の表示、取扱説明書、料金表などを読みます。お客様が見るものと同じものを読むと、質問を受けたときに一緒に確かめられます。
  3. 実物に触れる:持つ、開ける、使ってみる、手入れしてみるなど、お客様がすることを自分でやってみます。感じたことはメモしますが、自分の感想と、資料にある事実は分けておきます。
  4. 質問と答えの表を作る:聞かれそうな質問と答えを表にします。答えには、どの資料に書いてあるかを添えます。
  5. 自分の言葉で説明する:結論、理由、注意点の順に、声に出して説明します。資料の文をそのまま読むより、お客様に話す言葉に置きかえます。
  6. 思い出す練習をする:資料を閉じて、覚えたことを書き出したり、質問に答えたりします。日をあけて、もう一度繰り返します。
  7. 人と練習する:同僚にお客様役をしてもらい、説明と質問への答えを練習します。進め方は、コラム「接客ロールプレイングのやり方」で紹介しています。
  8. 現場で確かめて足す:売場で聞かれて答えられなかった質問を記録し、答えを調べて表に足します。

覚えやすくするには、どんな工夫がありますか?

  • 比べて覚える:前の型や、同じ店のほかの商品との違いを表にすると、特長がはっきりします。
  • 使う場面で覚える:「朝の忙しいときに」「旅行先で」のように、お客様が使う場面と結びつけると、説明にも使えます。
  • 数字はまとめて書く:価格や大きさなどの数字は、1枚のメモにまとめ、売場で確かめられる場所に置きます。
  • 人に教える:覚えたことを同僚に説明すると、自分が分かっていないところに気づけます。

集めた質問と答えは、売場の全員で共有すると、説明の内容がそろいます。まとめ方は、コラム「お客様からよく聞かれる質問への答え方とFAQの作り方」で紹介しています。

店内でタブレットを見る2人の客

商品の情報は、どこから集めればよいですか?

商品の情報は、いくつかのところから集められます。情報によって確かさが違うため、説明の根拠に使えるものと、参考にとどめるものを分けます。

情報のもと 分かること 使うときの注意
商品の持ち主(メーカーなど)の資料や研修 特長、仕様、価格と条件、売るときの決まり 説明の基本にする。資料の版や日付を確かめる
商品の表示・取扱説明書 使い方、手入れ、安全のための注意 お客様と一緒に見ながら説明できる
商品の持ち主の公式サイト 最新の情報、よくある質問、問い合わせ先 更新の日付を確かめる。売場の資料と食い違いがないかを見る
実物・見本 手触り、重さ、使い心地 自分の感想は感想として伝え、事実と混ぜない
先輩や担当者 よく聞かれる質問、伝わりやすい言い方 公式の資料と食い違いがないかを確かめる
お客様の声 お客様が気にする点、思いがけない使い方 一人の感想として扱い、全員にあてはまるとは言わない
個人のブログや口コミ 使う人の見方 説明の根拠にはしない

価格や条件、対応する機器などは、時期によって変わることがあります。売場に古い資料を残しておくと、誤った説明の原因になります。新しい資料が届いたら、古い資料を片付け、変わった点を売場の全員に伝えます。

スーツケースを選ぶ客と店員

商品を説明するとき、何に気をつけますか?

口頭の説明も「表示」にあたる

景品表示法の決まりでは、お客様を引きつけるための表示に、チラシやPOPだけでなく、口頭による説明も含まれています。景品表示法は、品質などを実際よりも著しく良いと思わせる表示(優良誤認表示)や、価格などの取引の条件を実際よりも著しく有利だと思わせる表示(有利誤認表示)を禁じています。品質などの表示については、消費者庁が根拠を示す資料の提出を求め、出せない場合は不当な表示とみなすなどの仕組みもあります。効き目や性能をうたうときは、商品の持ち主の資料にある範囲で伝えます。

事実と違うことや、確かでないことを言い切らない

消費者契約法では、勧誘のときに重要な事柄について事実と違うことを告げた場合や、将来の値段のように確かでないことを確かであるかのように言い切った場合に、お客様がそれを事実と信じて契約したときは、その契約を取り消せることが定められています。お客様の利益になることだけを伝え、不利益になる事実をわざと、またはひどい不注意で伝えなかった場合も、取り消しの対象になることがあります。良い点と一緒に、条件や注意点も伝えます。詳しくは所管の窓口や専門家にご確認ください。

分からないことは、確かめてから答える

分からない質問を受けたときは、推測で答えず、「確かめてお答えします」と伝えて、資料や担当者に確かめます。その場で答えられないことより、誤った答えをすることのほうが、お客様に迷惑をかけます。確かめるのに時間がかかるときは、いつ、どの方法で答えるかを伝えます。

注意書きを自分の判断で省かない

取扱説明書や商品の表示にある安全のための注意や、使うのを控える人についての注意は、自分の判断で省いたり、言いかえて弱めたりしないようにします。体や健康に関わる商品では、効き目を言い切らず、資料に書かれた表現で伝えます。

ほかの会社の商品を悪く言わない

比べる質問を受けたときは、ほかの会社の商品を悪く言わず、扱う商品の特長と、お客様に合うかどうかを伝えます。ほかの会社の商品について不確かなことを話すと、誤った説明になるおそれがあります。

クッションを選ぶ客と店員

商品知識の覚え方の、よくある失敗とチェックリスト

よくある失敗

  • 全部を一度に覚えようとする:覚えることが多すぎて、大事なことが抜けます。聞かれる順に優先度をつけます。
  • 仕様の数字ばかり覚える:細かい数字は言えても、どんな人に合うかを説明できないことがあります。一言の説明と、合う人を先に覚えます。
  • 良い点しか覚えていない:条件や注意点を聞かれて答えられないと、お客様の信頼を失います。不利な点も覚えます。
  • 読むだけで声に出していない:分かったつもりでも、話そうとすると言葉が出ません。声に出して説明する練習をします。
  • 古い情報のまま話す:価格や条件が変わっているのに、前の資料で説明してしまいます。資料の日付を確かめます。
  • 自分の感想を事実のように話す:「すごく長持ちします」のように、根拠のない言い方になります。感想は感想として伝えます。
  • 答えられなかった質問を放っておく:同じ質問にまた答えられません。記録して答えを調べ、売場で共有します。

売場に出る前のチェックリスト

  • 商品を一言で説明できる
  • よく聞かれる質問に、資料を見ずに答えられる
  • 価格、支払いの方法、契約や返品の条件を正確に言える
  • 安全のための注意と、使うのを控える人を言える
  • どんな人に合い、どんな人に合わないかを言える
  • 前の型や、同じ店のほかの商品との違いを言える
  • 細かい仕様が、資料のどこにあるかを知っている
  • 修理や問い合わせの窓口を案内できる
  • 分からない質問を、誰にどの方法で確かめるかが決まっている
  • 売場の資料が最新の版になっている
  • 説明の言い回しが、商品の持ち主の資料の範囲に収まっている
  • 人を相手に、説明と質問への答えを練習した

よくある質問

覚える時間が短いときは、何から覚えればよいですか?

一言の説明、よく聞かれる質問への答え、価格と条件、大事な注意点の4つを先に覚えます。細かい仕様は、資料のどこを見ればよいかだけを覚え、売場では資料を見ながら答えます。答えられない質問は、確かめる先を決めておきます。

商品知識の勉強は、勤務の時間外にするものですか?

厚生労働省のガイドラインでは、参加が業務上義務づけられている研修や教育訓練の受講、使用者の指示により業務に必要な学習などを行っていた時間は、労働時間にあたるとされています。職場から求められて覚える商品知識の勉強は、勤務の時間として扱うのが基本です。教える立場の方は、覚える時間を勤務の予定に組み込んでおきます。

お客様のほうが商品に詳しいときは、どうすればよいですか?

知らないことを知っているふりをせず、お客様の話をよく聞きます。お客様の知りたいことが資料で確かめられるなら、一緒に確かめます。お客様が話した内容が資料と違うときは、資料に書かれていることを伝え、必要なら担当者に確かめます。お客様から聞いた使い方は、ほかのお客様への説明の参考にもなります。

覚えた内容を忘れないためには、どうすればよいですか?

日をあけて、資料を閉じて思い出す練習を繰り返します。売場で聞かれた質問を日報に書き、答えを表に足していくと、使う知識が自然に残ります。日報の書き方は、コラム「販売の日報と報告書の書き方」で紹介しています。

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